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21.東の拠点で
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私は、ギルバードさんとともに東の拠点に来ていた。
そちらで働く人達は、私の来訪にそれなりに驚いているようだ。拠点の責任者が女性を連れて帰ったというのは、確かに結構驚くべきことかもしれない。
「いやまさか、ギルバートさんが女性を連れて帰って来るなんてびっくりしましたよ」
「女っ気がないと思っていましたが、もしかしていよいよ結婚ですか?」
「いや、違いますよ。結婚なんてまだ考えていません」
「まだというと、何れはってことですか?」
「だから違いますって」
東の拠点の人々は、ギルバートさんに対して好き勝手色々と言っていた。
本拠地である私が普段働いている拠点での扱いと大分違う。やはり、日頃から一緒に働いていることが大きいのだろうか。
「彼女は、本拠点の職員の一人です。知り合いに会うために、休暇を取ってこちらを訪れているんです」
「休暇、それなのにここに来させるんですか?」
「それはその、わかるでしょう?」
「え? ああ、いつものですか……」
ギルバートさんの言葉に、周囲の人達は呆れたような顔をした。
当然のことながら、彼の方向音痴は周知の事実であるようだ。それに対して、私は苦笑いを浮かべてしまう。
「あ、それで皆さん、僕はこれからこのアルシエラさんに町を案内しようと思うので」
「案内? ギルバートさんがですか?」
「そんなの無理に決まっているでしょう」
「え? あ、いや……」
ややこしいことにならないように、私の素性はこちらでは伏せておくことになった。
故に、ギルバートさんはどうしても説明不足になってしまう。
それによって、彼は集中砲火を受けていた。事情を知っている私からすると、なんとももどかしい所だ。
「こらこら、男子達」
「空気を読みなさいってば」
「え? ああ、そうか……」
「……ギルバートさん、すみません。こちらは大丈夫ですから、どうぞごゆっくりしてください」
「……ええ」
女性職員の声によって、その場はなんとか治まった。
しかしながら、ここにいる人達には大きな勘違いをされてしまった。それも中々、困ったことではある。
「ギルバートさん、色々とすみません。私のせいで……」
「いいえ、お気になさらず。そもそも、僕がついて行くというのが僕の提案なのですから」
「私は、それが心強いと思って受け入れたのですから、これは私のせいといえると思います」
「そんなことはありませんよ」
そこで私は、ギルバートさんとそのようなやり取りを交わした。
ギルバートさんは、私に同行を申し出てくれた。何かあった時に、誰かがいた方がいいと思ったそうだ。
私はそれを受け入れた。一人は不安だったので、その提案はありがたかったのだ。
こうして私は、ギルバートさんとともにランバット伯爵家に向かうことになったのだった。
そちらで働く人達は、私の来訪にそれなりに驚いているようだ。拠点の責任者が女性を連れて帰ったというのは、確かに結構驚くべきことかもしれない。
「いやまさか、ギルバートさんが女性を連れて帰って来るなんてびっくりしましたよ」
「女っ気がないと思っていましたが、もしかしていよいよ結婚ですか?」
「いや、違いますよ。結婚なんてまだ考えていません」
「まだというと、何れはってことですか?」
「だから違いますって」
東の拠点の人々は、ギルバートさんに対して好き勝手色々と言っていた。
本拠地である私が普段働いている拠点での扱いと大分違う。やはり、日頃から一緒に働いていることが大きいのだろうか。
「彼女は、本拠点の職員の一人です。知り合いに会うために、休暇を取ってこちらを訪れているんです」
「休暇、それなのにここに来させるんですか?」
「それはその、わかるでしょう?」
「え? ああ、いつものですか……」
ギルバートさんの言葉に、周囲の人達は呆れたような顔をした。
当然のことながら、彼の方向音痴は周知の事実であるようだ。それに対して、私は苦笑いを浮かべてしまう。
「あ、それで皆さん、僕はこれからこのアルシエラさんに町を案内しようと思うので」
「案内? ギルバートさんがですか?」
「そんなの無理に決まっているでしょう」
「え? あ、いや……」
ややこしいことにならないように、私の素性はこちらでは伏せておくことになった。
故に、ギルバートさんはどうしても説明不足になってしまう。
それによって、彼は集中砲火を受けていた。事情を知っている私からすると、なんとももどかしい所だ。
「こらこら、男子達」
「空気を読みなさいってば」
「え? ああ、そうか……」
「……ギルバートさん、すみません。こちらは大丈夫ですから、どうぞごゆっくりしてください」
「……ええ」
女性職員の声によって、その場はなんとか治まった。
しかしながら、ここにいる人達には大きな勘違いをされてしまった。それも中々、困ったことではある。
「ギルバートさん、色々とすみません。私のせいで……」
「いいえ、お気になさらず。そもそも、僕がついて行くというのが僕の提案なのですから」
「私は、それが心強いと思って受け入れたのですから、これは私のせいといえると思います」
「そんなことはありませんよ」
そこで私は、ギルバートさんとそのようなやり取りを交わした。
ギルバートさんは、私に同行を申し出てくれた。何かあった時に、誰かがいた方がいいと思ったそうだ。
私はそれを受け入れた。一人は不安だったので、その提案はありがたかったのだ。
こうして私は、ギルバートさんとともにランバット伯爵家に向かうことになったのだった。
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