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15.親しそうな会話

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 道に迷っていた男性を、私はラナキンス商会の拠点まで連れて来ていた。
 拠点の周りでは、見知った面々が作業をしている。

「あれ? アルシエラ様じゃありませんか?」
「本当だ。今日は休みだったんじゃありませんか?」

 私の来訪に、商会の皆は少し驚いているようだった。
 ただ、そんなに動揺しているようには見えない。恐らく稀であるが、ないことではないと思ったからだろう。

「ええそうなんですけど、実は道案内をしてきたんです。こちらの男性が、ラナキンス商会に用があるそうで……」
「道案内……?」
「男性……」

 私の言葉に、商会の面々は顔を見合わせていた。
 その後彼らの視線は、私の後ろにいる男性に集中する。
 そんな風に見るのは、どう考えても失礼だ。そう思った私は、男性に謝罪しなければならないと後ろを向いた。

「皆さん、お久し振りですね。お元気でしたか?」

 すると、男性はそのような言葉を商会の面々にそのような言葉を言い放った。
 それに私は、驚いてしまう。男性の口調は、どう考えたって取り引き相手とかの口調ではないからである。

「ギルバートさん、お戻りになられたのですか?」
「半年振りですか? いや、なんだかまた立派になられましたねぇ」
「そうでしょうか? 自分ではあまり変わっていないような気がするんですけどね」

 男性の言葉に対して、商会の面々も同じように親しそうな言葉を返していた。
 そのやり取りに、私は混乱する。彼は一体、何者であるのだろうか。

「ああ、アルシエラ様、すみません。勝手に話を進めてしまって……」
「え? ああ、いえ、それは大丈夫です。ただ、この方は一体……」
「彼は、ギルバート・エルセデスさんという方です。このラナキンス商会の重鎮の一人です」
「重鎮……」

 説明を受けた私は、改めてギルバートさんの顔を見た。
 まだ若いはずの彼は、どうやらかなり高い地位に就いているらしい。
 そういえば、彼は私に対して確かに上司のような接し方をしていた気がする。あの態度は、そういうことだったのだ。私は少し納得することができた。

「重鎮というのはやめてください。僕はただ、父の後を継ぐことになったというだけですから。まだまだ未熟な若輩者ですよ」
「いやいや、ギルバートさんには地位に見合った能力がありますよ」
「そうです。そうです。ガーランドさんも、その能力を評価して、ラナキンスさんに自分の後継者として推薦したんでしょうし……」

 よくわからないが、ギルバートさんは父親の後を継いでその地位を得たらしい。
 貴族もそうではあるが、やはり世襲制ということなのだろう。
 ただ彼の場合は、周りの人からも慕われている訳だし、その能力は確かなはずだ。優秀で謙虚な後継者に、ガーランドさんという人は恵まれたといった所だろうか。
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