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3.高慢な妹

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「愚かな愚かなお姉様、ああ、あなたは一体どうしてこんな所にいるのでしょうか?」
「……」

 両親に愛されて育ってきた妹のイフェリアは、両親にそっくりな少女へと育っていった。
 彼女は、父親のように横暴であり、母親のようにわがままだった。二人の短所を受け継いだ妹は、意気揚々と私を罵倒する。

「あなたみたいな人が、この伯爵家に留まっているなんて、不快で仕方ないですわ。さっさと出て行ってくれればいいのに、非力なお姉様は一人で何もできないから、ここに留まることしかできないのでしょうねぇ」
「……」

 イフェリアの話に付き合うのは億劫だった。
 彼女は、両親と深く繋がっている。そんな彼女に逆らえば、両親から罰を与えられるのだ。
 だから私にとって、妹と会話をするメリットはない。だが、無視をしたらしたでイフェリアは怒るので、何かを返さなければならないのだ。

「……確かに私は、非力なのかもしれないわね」
「疑問形ですか? それなら、私は言い切って差し上げますよ。お姉様は、非力で愚鈍です」
「……そうね」

 イフェリアの言葉に、私はゆっくりと頷いた。
 それを見ながら、彼女は不服そうな表情をする。それもいつも通りのことだ。彼女は私がどういう反応をしても、納得してくれない。

「従順なお姉様は、つまらないですね? もっと何か私に言いたいことがあるんじゃないですか? 言いたいことを言ってくださいよ。今なら怒りませんから」
「……」

 要するにイフェリアは、私に反発したいのだろう。自分は私とは違うという意識が、彼女の根底にはある気がする。
 そう考える理由は、お父様とお母様がずっと言ってきたからだ。あの二人は、何かにつけて私とイフェリアを比較して、彼女を褒め称えていたのである。

「……別に、あなたに言いたいことなんてそれ程ないわよ」
「そうなんですか? でも、ため込んでいることがあるんじゃないですか?」
「ないと言っているでしょう」

 ここで不満を述べたら、イフェリアはそれを両親に伝えて、私に罰を与えるだろう。
 それを避けるために、私は質問をはぐらかす。そうするのが一番いいことだということは、今までの経験からわかっている。

「ああ、本当につまらない! お姉様は、私に従っていればいいというのに」
「……従っているわ。ただ本当に、あなたに言いたいことがある訳ではないということよ」
「別に罰を与えるのに嘘をついてはいけないという決まりはないんですよ? 結局あなたは、罰を受けるというのに……」
「……」

 忌々しそうに私を見つめるイフェリアを、私は無視する。
 あんなことを言っているが、彼女はこういう時には両親に何も言わない。
 きっとそれが、彼女なりのルールであるのだろう。私はとにかく、そんな彼女がルールに則るような言動を心掛けるしかないのである。
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