公爵家の隠し子だと判明した私は、いびられる所か溺愛されています。

木山楽斗

文字の大きさ
上 下
104 / 141

謎の訪問者

しおりを挟む
 私は、客室にて人を待っていた。今日は、私に客人が来るからだ。
 ただ、実は私は今日来る人のことを知らない。客人があるとだけ伝えられて、誰が来るかは知らされていないのである。

「……一体、誰が来るんだろう?」

 私は、ずっと考えていた。今日は、一体誰が来るのだろうか。
 村長やケリー、村の人ならこんな説明はされないはずだ。ということは、私が直接会ったことがない人が来るということだろうか。
 しかし、家庭教師だとかそういう人なら、普通にそう言われるだろう。そう考えると、益々わからなくなってくる。

「……失礼します。お客様を連れて来ました」
「あ、はい。どうぞ、入ってください」

 そんなことを考えている内に、部屋の戸が叩かれた。
 どうやら、お客さんが来たようだ。私は、少々緊張しながら姿勢を整える。

「失礼いたします」
「え、えっと……」

 部屋の中に入って来た人物に、私は少し驚いていた。
 その人は、年老いた男性だったのだが、その顔に私は見覚えがあったからである。
 目の前の男性は、ダルギスに少し似ているのだ。つまり、彼の親戚ということだろうか。
 だが、彼の親戚が、どうして私に会いに来るのかがわからない。これは、どういうことなのだろうか。

「……ああ」
「え?」

 次の瞬間、目の前の男性はゆっくりと膝をついた。
 そして、その目からは涙が流れていく。客人は、私の顔を見て泣き始めてしまったのである。
 私は、訳がわからなくなっていた。本当に、この状況はどういうことなのだろうか。

「あの……大丈夫ですか?」
「あ……申し訳ありません」
「あ、いえ……」

 私が話しかけてみると、男性は謝ってきた。自分が取り乱してしまっていることは、自覚しているらしい。
 とりあえず、私は男性が落ち着くのを待つ。事情を話してもらわないことには、どうすることもできないからだ。

「取り乱してしまい、申し訳ありませんでした。私は、ゼペックと申します」
「ゼペックさん、ですか?」
「はい」

 男性の名前を聞いても、私はピンとこなかった。
 聞いたことがない名前である。ダルギスさんに似ているものの顔も見たことはないし、彼と私との繋がりが見えて来てない。
 そんな私の悩んでいる態度に、ゼペックさんは優しい笑みを浮かべている。よくわからないが、彼が私に温かい感情を向けてくれているようだ。

「座ってもよろしいでしょうか?」
「え? あ、はい。どうぞ」
「ありがとうございます」

 私に許可を取ってから、ゼペックさんは対面に着席した。
 そういえば、彼は先程から私にとても丁寧な態度をしている。公爵家の令嬢を相手にしていると考えればそれは普通のことかもしれないが、その敬意にも少し違和感がある。
しおりを挟む
感想 99

あなたにおすすめの小説

初耳なのですが…、本当ですか?

あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た! でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。

【完】嫁き遅れの伯爵令嬢は逃げられ公爵に熱愛される

えとう蜜夏☆コミカライズ中
恋愛
 リリエラは母を亡くし弟の養育や領地の執務の手伝いをしていて貴族令嬢としての適齢期をやや逃してしまっていた。ところが弟の成人と婚約を機に家を追い出されることになり、住み込みの働き口を探していたところ教会のシスターから公爵との契約婚を勧められた。  お相手は公爵家当主となったばかりで、さらに彼は婚約者に立て続けに逃げられるといういわくつきの物件だったのだ。  少し辛辣なところがあるもののお人好しでお節介なリリエラに公爵も心惹かれていて……。  22.4.7女性向けホットランキングに入っておりました。ありがとうございます 22.4.9.9位,4.10.5位,4.11.3位,4.12.2位  Unauthorized duplication is a violation of applicable laws.  ⓒえとう蜜夏(無断転載等はご遠慮ください)

職業『お飾りの妻』は自由に過ごしたい

LinK.
恋愛
勝手に決められた婚約者との初めての顔合わせ。 相手に契約だと言われ、もう後がないサマンサは愛のない形だけの契約結婚に同意した。 何事にも従順に従って生きてきたサマンサ。 相手の求める通りに動く彼女は、都合のいいお飾りの妻だった。 契約中は立派な妻を演じましょう。必要ない時は自由に過ごしても良いですよね?

【完結】王太子殿下が幼馴染を溺愛するので、あえて応援することにしました。

かとるり
恋愛
王太子のオースティンが愛するのは婚約者のティファニーではなく、幼馴染のリアンだった。 ティファニーは何度も傷つき、一つの結論に達する。 二人が結ばれるよう、あえて応援する、と。

身代わりの公爵家の花嫁は翌日から溺愛される。~初日を挽回し、溺愛させてくれ!~

湯川仁美
恋愛
姉の身代わりに公爵夫人になった。 「貴様と寝食を共にする気はない!俺に呼ばれるまでは、俺の前に姿を見せるな。声を聞かせるな」 夫と初対面の日、家族から男癖の悪い醜悪女と流され。 公爵である夫とから啖呵を切られたが。 翌日には誤解だと気づいた公爵は花嫁に好意を持ち、挽回活動を開始。 地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。 「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。 一度、言った言葉を撤回するのは難しい。 そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。 徐々に距離を詰めていきましょう。 全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。 第二章から口説きまくり。 第四章で完結です。 第五章に番外編を追加しました。

旦那様は大変忙しいお方なのです

あねもね
恋愛
レオナルド・サルヴェール侯爵と政略結婚することになった私、リゼット・クレージュ。 しかし、その当人が結婚式に現れません。 侍従長が言うことには「旦那様は大変忙しいお方なのです」 呆気にとられたものの、こらえつつ、いざ侯爵家で生活することになっても、お目にかかれない。 相変わらず侍従長のお言葉は「旦那様は大変忙しいお方なのです」のみ。 我慢の限界が――来ました。 そちらがその気ならこちらにも考えがあります。 さあ。腕が鳴りますよ! ※視点がころころ変わります。 ※※2021年10月1日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。

【完結】婚姻無効になったので新しい人生始めます~前世の記憶を思い出して家を出たら、愛も仕事も手に入れて幸せになりました~

Na20
恋愛
セレーナは嫁いで三年が経ってもいまだに旦那様と使用人達に受け入れられないでいた。 そんな時頭をぶつけたことで前世の記憶を思い出し、家を出ていくことを決意する。 「…そうだ、この結婚はなかったことにしよう」 ※ご都合主義、ふんわり設定です ※小説家になろう様にも掲載しています

寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。

にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。 父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。 恋に浮かれて、剣を捨た。 コールと結婚をして初夜を迎えた。 リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。 ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。 結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。 混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。 もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと…… お読みいただき、ありがとうございます。 エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。 それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。

処理中です...