妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?

木山楽斗

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70.中の様子は

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「……とりあえず、レフティス様の元に戻らないとだよね」
「え? あ、はい。そうですね……」

 エフェリアお姉様の不安について考えていた私は、自分の任務というものをすっかり忘れてしまっていた。お姉様自身に言われて、やっと思い出したくらいだ。
 とにかくエフェリアお姉様を、レフティス様の元に連れて行かなければならない。あそこにいるのがオルディアお兄様だと悟られたら大変なことになってしまう。

「えっと、中の様子は……」
「あ、どうなっているんだろうね」

 エフェリアお姉様との話に夢中になっていたため、オルディアお兄様とレフティス様がどうなっているかを見ていなかった。
 そこで私達は、部屋の様子を伺ってみる。オルディアお兄様と入れ替わるためには、タイミングというものを計る必要があるからだ。
 恐らく二人のどちらかが、何かしらの事情で席を外すはずである。私達がここから動くのは、そのタイミングが訪れてからということになるだろう。

「え?」
「あ、あれって……」

 そこで私とエフェリアお姉様は、固まることになってしまった。窓から見える光景に、驚いたからだ。
 レフティス様は、立ち上がっておりオルディアお兄様の方に近づいていた。彼はお兄様の肩に手を置き、顔を近づけているようだ。
 それが何をしているのかは、ここからでは正確にわからない。ただ、まるで口づけをしているかのようだ。

「エ、エフェリアお姉様、あ、あれって……」
「うん。まあ、そういうこと、なのかな……レフティス様、大胆」
「いや、大胆って、オルディアお兄様はあれを許したんですか?」
「どうだろう? 不意打ちだったのかな?」
「不意打ちって、そんなことしますかね?」
「うん? 確かによく考えてみると、大問題だよね」

 目の前の状況というものに、私達はひどく動揺していた。
 しかし、段々と冷静になってくる。あれは本当に、口づけをしているのだろうかと。

 そもそもの話、レフティス様はまだエフェリアお姉様と正式に婚約しているという訳でもない。だというのにあんなことをするなんて、失礼というか問題であるだろう。
 となると、あれは口づけをしているという訳ではないということになる。流石にレフティス様がそんなに馬鹿だとは考えにくいし、角度的にそう見えているだけだろう。

「でも、口づけじゃないとしたら、なんでしょうか?」
「……耳打ちかな?」
「なるほど、そう考えることはできますね。あれ?」

 私とエフェリアお姉様が話し合っていると、レフティス様が部屋から出て行った。
 部屋の中には、オルディアお兄様が取り残されている。その目を見開いている所を見ると、何か驚くべきことでも言われたのだろうか。
 そんなことを考えていると、オルディアお兄様が立ち上がって窓際に来た。そのままお兄様は、窓を開けて周囲を見渡して、私達を見つける。

「エフェリア……それにクラリアも」
「オルディアお兄様、どうかされたんですか?」
「なんか、すごく驚いているね」
「ばれた」
「え?」
「それって……」

 オルディアお兄様の短い言葉に、私はエフェリアお姉様と顔を見合わせた。
 お兄様が何を言わんとしているかは、すぐにわかった。どうやらレフティス様に、エフェリアお姉様がオルディアお兄様だったとばれてしまったようである。
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