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57.侯爵家を訪ねて(アドルグside)

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「……今回のことに関して、謝罪したいと思っていました。わざわざ出向いていただいたことも含めて、本当に申し訳ありません」
「ふむ……」

 ゆっくりと頭を下げるドルイトン侯爵に対して、アドルグは冷たい視線を向けていた。
 まず彼が安心したのが、侯爵自身は今回の件を真摯に受け止めて、謝罪の言葉を口にしたことである。彼が反発していたら、事態はもっと厄介なことになっていたかもしれない。
 一方で、アドルグはディトナスの態度が気になっていた。彼は先程からずっと、気に食わないという表情をしているのだ。

「ディトナス、お前も謝罪しろ」
「……父上、僕はまだ納得していません」
「ディトナス!」

 ディトナスの言葉に、ドルイトン侯爵は鋭い怒号を発した。
 それに隣にいる妹のエフェリアが体を強張らせているのを感じながら、アドルグはため息をつく。ディトナスの態度というものは、彼にとってはまた厄介な問題だったのだ。

「お前は自分が何をしたのかわかっていないのか? 人に暴言を吐くなど、許されることではないのだぞ。こうして、ヴェルード公爵家の方々が訪ねて来たことが、どれだけ寛大なことであるかを理解しろ」
「父上……ならば、ヴェルード公爵がやったことは肯定されるべきことなのですか? 浮気相手との間に子供を作ったことは正しいことだというのですか!」
「それは……」

 ドルイトン侯爵は、ディトナスの言葉に怯んでいた。
 それを見ながら、アドルグは末妹であるクラリアが言っていたことを思い出していた。彼女はアドルグに、重要なことを伝えていたのである。

『確証がある訳ではありませんが、多分ドルイトン侯爵家にも私と同じ立場の人がいると思うんです。多分、庭師の――』

 クラリアは今回の件に関して、別の事情が絡んでいると予想していた。
 それは重要なことではあるが、アドルグはそのことに触れようとは思っていなかった。他家のそういった事情に関して、足を踏み入れるべきではないと彼は考えていたのである。
 しかしながら、ディトナスがごねるようならそれを指摘しなければならない。アドルグは成り行きを見守りながら、口を挟むべきか見極めていた。

「……あなたは勘違いしているようですね」
「何?」

 そんな中で言葉を発したのは、オルディアであった。
 それにアドルグは、少し驚いていた。彼とエフェリアには、お茶会の場であったことを証言してもらう以外の役割は求めていなかったからだ。
 しかしアドルグは、その場をオルディアに任せることを決めた。ヴェルード公爵家の一員としての弟の力量を、彼はこの場で見極めることにしたのだ。
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