妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?

木山楽斗

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56.冷静な結論

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「……まあ相手が侯爵家ともなると、ヴェルード公爵家を持ってしても、そう簡単にはいかないことでしょうからね。しかも相手は嫡子ともなると、流石にギロチンは難しいでしょう」

 アドルグお兄様の言葉で起こった沈黙の後に、最初に言葉を発したのはウェリダンお兄様であった。
 以前の二人の令嬢は、伯爵家と子爵家の令嬢であった。それでもすごい権力を持っていたはずだが、ヴェルード公爵家の敵ではなかったのだろう。
 しかし今回の場合は、別であるらしい。本気でやり合った場合、ヴェルード公爵家もただでは済まないのではないだろうか。

「といっても、クラリアに対して暴言を放ったということは問題にしなければならないことだわ。色々と事情はあるけれど、お父様はクラリアのことを認知して、ヴェルード公爵家の一員として認めているわ。そんなクラリアに暴言を吐いたということは、それがこのヴェルード公爵家に喧嘩を売っているに等しいことだもの」

 次に言葉を発したのは、イフェネアお姉様である。
 ディトナス様を許すということは、ヴェルード公爵家としてはない選択肢なのだろう。貴族として舐められないためにも、抗議は必要なものなのだ。

「そもそもの話ではあるが、心の中で何を思おうとも勝手だが、公の場で誰かを非難するということは問題だ。双方にどういった事情があったとしても、それを俺は許容するつもりはない。それを許容すれば、社交界というものの秩序はなくなる」
「アドルグ兄上は、ディトナス侯爵令息に対してどのような罰を与えるつもりですか? あるいはドルイトン侯爵家に賠償金でも求めますか?」
「今回の場合は、後者の方を選ぶべきであるだろうな。ドルイトン侯爵家には、他に子供もいない。ディトナスに侯爵としての資質があるかはわからないが、大きな罰を与えられる訳ではない」

 色々と過激なことを言っていたお兄様方だったが、結局はとても合理的な結論に着地していた。
 そういった所は、やはり流石である。これが公爵家の考え方というものなのだろうか。

「さてと、今回の件については俺が赴くとしよう。エフェリアとオルディア、お前達にも同行してもらう」
「え? 私?」
「僕もですか?」
「当時にその場にいたお前達がいた方が、話が早いというだけだ。話は俺が取りまとめる」
「まあ、別に僕は構いませんよ」
「あ、うん。私も大丈夫です」

 例によって、今回もアドルグお兄様が話をつけに行ってくれるらしい。
 それなら特に問題はないだろう。エフェリアお姉様とオルディアお兄様も一緒な訳だし、なんだかんだ寛大なアドルグお兄様は、良い着地点を見つけてくれるはずだ。
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