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53.心強い味方

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「ディトナス侯爵令息、あなたの今の言葉はどういう意味なのでしょうか?」
「そ、それは……」

 オルディアお兄様は、ディトナス様の方にゆっくりと近づいていく。
 その隙に、エフェリアお姉様が私の傍まで素早く来てくれた。そのまま私は、お姉様に抱きしめられる。

「クラリア、大丈夫?」
「あ、はい。私は大丈夫です。こちらのダルークさんに、助けてもらいましたから」
「そうなの? あ、えっと、ありがとうございます。妹を守ってくれて」
「いえ、私は当然のことをしたまでですから」

 エフェリアお姉様は、私を守るように抱きしめながらダルークさんと言葉を交わしていた。
 どうやら、ディトナス様の相手はオルディアお兄様とロヴェリオ殿下に任せて、お姉様は私の傍にいることを選んだようだ。それは私にとっては、とても心強いものである。
 抱きしめられてから、私は自分の体がひどく強張っていたことにやっと気付いた。どうやら自分で思っていた以上に、この状況に恐怖を感じていたらしい。

「それで、あなたはどちら様ですか?」
「あ、はい。私は庭師のダルークです」
「庭師……ドルイトン侯爵家の使用人の方ですか?」
「ええ、まあ、そうですね」
「それは……大変ですよね。これからどうなるかはわかりませんが、あなたのことはヴェルード公爵家が守りますから、ご安心ください」

 エフェリアお姉様は、ダルークさんのことをかなり心配しているようだった。
 それは当然のことだろう。状況から考えれば、彼は嫡子の行動を使用人の身で諫めたということになる。
 それはもちろん悪いことではないが、ディトナス様は気質的にそれを許しはしないだろう。そう思ってエフェリアお姉様は、声をかけたのかもしれない。

「……いえ、ご心配には及びません。私の方にも色々とありますから」
「色々と?」

 しかしそれに対して、ダルークさんはゆっくりと首を振った。
 やはり彼は、単なる庭師という訳ではないようである。私は改めてそのことを認識していた。
 ただ今は、それについて話を聞いている場合ではない。もっと解決しなければならない問題が、目の前にあるのだ。

「クラリアに対して、あなたが何をしたのか詳しくはわからないが、どうやら大変なことをしたらしいということはわかります。ヴェルード公爵家に対する侮辱を、まずは謝罪していただきたい」
「しゃ、謝罪だと?」
「もちろん、それで許すということにはなりません。しかしながら、それがあるのとないのとでは心証も随分と変わるものですからね」

 オルディアお兄様は、あくまでも冷静な態度だった。
 怒ってはいるが、声を荒げはしない。その辺りは流石である。
 しかしそれとは対照的に、ディトナス様はすっかり冷静さを失っているようだ。どうやらオルディアお兄様の言葉も、彼にとってはその怒りを加速させるだけのものに過ぎなかったらしい。
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