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51.庇ったのは

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「……大丈夫ですか?」
「あ、はい。あ、ありがとうございます」

 私を庇ってくれたのは、男の人だった。
 私よりも、エフェリアお姉様方よりも年上くらいの男性である。ただその服装はなんというか、貴族には見えない。かけられたジュースがなくても汚れているし、使用人の方かもしれない。
 しかしそんな人が、ディトナス様の行いに対して前に立って大丈夫なのだろうか。それはそれで、色々と問題になるような気がするのだが。

「ダルーク……庭師のお前が、一体何をしているんだ?」
「ディトナス様、お言葉ですが、あなたがやったことは問題ですよ。それを理解できない訳ではないでしょうに……」
「うるさい奴だな。僕に逆らうというのか」

 庭師のダルークさんは、ディトナス様に対して堂々と意見していた。
 それはおかしな話である。庭師がこんな風に言えるものなのだろうか。いくらなんでも、強気すぎると思ってしまう。
 しかしディトナス様も、怒ってはいるがそれを殊更問題視している風ではない。その様子に私は、少し違和感を覚えていた。

 とはいえ、今はそれについて考えている場合ではない。
 庇ってもらったとはいえ、ディトナス様のこの行動というものは問題であるだろう。凡そ、許されるような行為ではない。二人の令嬢の件から、私はそれをよく知っている。

「逆らおうなどと思ってはいません。しかし、このようなことを見過ごせる訳がないでしょう」
「はっ! 笑えるな。お前はいつも僕の邪魔をする」
「ディトナス様……」

 ディトナス様は、その表情を歪めてダルークさんのことを見ていた。
 なんというか、二人は浅からぬ関係にあるような気がする。今のやり取りは、まるで家族――兄弟であるかのようだった。

「……あんたらの言い合いなんて、聞きたくはねぇよ」
「……何?」
「あなたは……」

 そんな中で響いてきた声は、聞き覚えがあるものだった。
 私は、声がした方向を向く。するとそこには、一緒にここに来る予定だったロヴェリオ殿下がいた。
 彼の表情は強張っている。どうやらこの場に来て、一瞬で状況を理解したようだ。

「ロヴェリオ殿下……」
「ディトナス侯爵令息、クラリアに何をした?」
「何をって……」

 ロヴェリオ殿下に詰め寄られて、ディトナス侯爵令息は怯んでいた。
 先程までは私やダルークさんに対してかなり強気だったのだが、流石に王子である彼に対して、それは無理だったらしい。
 いやというよりも、ロヴェリオ殿下はすごい剣幕だ。これは単純に、その迫力に負けているのかもしれない。
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