妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?

木山楽斗

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45.詰められる父

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「……まだ、そういう話が出ているというだけだ」
「私はそんなこと、全然聞いていなかったのだけれど?」
「いや、だから今から報告しようと思ったのではないか」

 レセティア様の言葉に、お父様は怯んでいるようだった。
 それは当然のことであるだろう。レセティア様は、すごい剣幕だ。あれは誰だって、そうなるものだろう。
 それにこの場には、他にもお父様を睨みつけている人達がいる。お兄様方も、今回の件を聞きつけて集まったのだ。

「父上、クラリアに対して婚約を申し込んできた者がいるということですか? まだ十歳のクラリアに求婚とは穏やかではありませんね」
「アドルグ、話はあくまでも家同士の婚約の話だ。ドルイトン侯爵家からそういった旨の話があり、ご子息の相手としてクラリアが良いと思ったらしい」
「クラリアを現当主が指名したということですか? それはなんだか奇妙ですね。こういう言い方はあまりしたくはありませんが、怪しく思ってしまいます」
「イフェネア、それは私もわかっている。その理由について、考えている所だ」

 アドルグお兄様やイフェネアお姉様の言う通り、私を婚約の対象として挙げているのは、よくわからないものである。
 何と言ったって、私は妾の子だ。こうして温かく迎え入れてもらえているが、それは紛れもない事実である。
 そんな立場の私との婚約なんて、利益があるものかは微妙な所だ。しかも、私の存在はつい最近公表されたばかりだというのに。

「ドルイトン侯爵というと、人格者として知られていると記憶しています。なんでも、慈善事業に精を出している方だとか」
「ウェリダン、流石だな。それはその通りだ」
「なんだ、良い人なんだ。それなら大丈夫なんじゃないですか、お父様」
「エフェリア、そういう訳にもいかない。裏がある可能性だってあるかもしれない」
「まあ、もちろん、表だけを見て信用はできないよね」
「オルディアの言う通りという訳だ」

 ドルイトン侯爵という人がどういう人かは、わからないようだ。
 ウェリダンお兄様の情報を信用すると、エフェリアお姉様が考えているように私に同情して話を持ち掛けているということになる。
 ただ、オルディアお兄様の言う通りかもしれない。貴族というものは裏で色々とやっていると、私も聞いたことは何度かある。

 ただ、結果としてヴェルード公爵家の人達はとても優しい人達であった。
 それなら案外、ドルイトン侯爵だって評判通りの人物なのかもしれない。お兄様方を見渡しながら、私はそのようなことを考えていた。
 そこで私は、ロヴェリオ殿下が目に入った。彼は、少し沈んだ顔をしているような気がする。それは私の気のせいだろうか。
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