妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?

木山楽斗

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21.わからないこと(アドルグside)

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「実の所、アドルグからは前々から相談を受けていたのだ」

 ヴェルード公爵夫妻は、国王の前に立っていた。
 それを見ながら、アドルグは考える。自分の両親が今、何を思っているのかを。

 クラリアという隠し子の存在、それはヴェルード公爵家にとって少なからずスキャンダルになることであった。
 それに関してクラリアに罪がある訳ではないと、アドルグは認識している。問題なのはヴェルード公爵イルリオの素行だ。妻がいる身でありながら、他の女性と関係を持ったその不貞行為に対して、アドルグは少なからず嫌悪感を覚えている。

 ただわからないことは、父と母の仲が良好であったにも関わらず、そのようなことが起こったという事実であった。
 単なる出来心ということもあるが、両親に対して尊敬の念を抱いていたアドルグにとって、状況は不可解なものである。

 今回の件に関して、母親であるヴェルード公爵夫人レセティアのスタンスがわからないというのもアドルグは気になっていた。
 ことがことであるだけに、もう少し意見が聞けて然るべきであるというのに、彼女は沈黙を貫くばかりなのである。

「クラリアの件に関しては、私も把握していないことが多い。この際だ。洗いざらい吐き出してもらおうか」
「兄上、ことはそう難しいことではありません。私が昔手を出したメイドとの間に子供がいたことをつい最近判明したというだけのことです」
「イルリオ、お前はレセティアと愛し合う関係にあったと、私は認識している。そんなお前が浮気をするとは思えなかった。何か事情があるのではないか?」
「お恥ずかしい話ですが、事情などというものはありはしません。単に私が不貞を働いたというだけのことです」
「私やアドルグにさえ、話せないようなことなのか」

 伯父の口振りに、アドルグは父が何かを隠しているということを理解した。
 しかしながら、考えてもわからない。事情があったにしても、メイドとの間に子供を作った理由がアドルグには思いつかなかった。
 故にアドルグは、クラリアが父の子ですらないとさえ考えた。事情があって匿っているという可能性さえも、彼は考慮したのだ。

「……イルリオ、もう隠すのはやめにしましょう」
「レセティア、しかし……」
「このまま隠していても、事態をややこしくするだけです。恥を忍んで話すしかありません……お義兄様、できればアドルグには聞かせたくないのですが」
「アドルグはヴェルード公爵家を何れ背負うことになる。聞かせぬ訳にもいかぬだろう」
「……そうですか」

 母親からの視線に、アドルグは居たたまれなくなっていた。
 とはいえ、彼もその場を離れるつもりはない。ヴェルード公爵家の次期当主として、ここにいることが自分の使命であると、彼は強く認識しているからだ。
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