妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?

木山楽斗

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13.新たな目標

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「イフェネア様、その……」
「あら、そんな風にかしこまった呼び方をする必要はないのよ。私はあなたの姉であるのだから、ねえねとでも……」
「あ、いえ、ねえねは流石に無理です」

 イフェネア様は、私にイフェネアお姉様と呼ぶことを許してくれるようだった。
 そういうことなら、そう呼ばせてもらうことにしようか。アドルグお兄様やウェリダンお兄様のこともそう呼ばせてもらっている訳だし、イフェネアお姉様もそれに倣うとしよう。

「えっと、イフェネアお姉様の提案はありがたいものだと思います。仰る通り、私には社交界のあれこれがわかりませんから」
「ええ、そうでしょうね。それは別に恥じることではないわ。仕方ないことだもの」
「それを教えていただけるのは、嬉しいです。でも、同じ部屋で暮らすなんて良いのでしょうか? イフェネアお姉様にも、プライベートというものが必要なのではありませんか」

 イフェネアお姉様が私の味方であるということは、理解することができた。そんな彼女からの指導は、正直受けたいと思っている。
 ただ、それは当然イフェネアお姉様に負担をかけることになってしまう。二人で同じ部屋で暮らすと、プライベートの時間もなくなるし、本当に大丈夫なのだろうか。それが心配である。

「私のことを気遣ってくれて嬉しいわ。ありがとう、クラリア。でも、その点については大丈夫よ。私はむしろ誰かと過ごすことに幸せを感じられるタイプだから」
「そういうものなのですか?」
「ええ、今は毎日寂しいと思っているわ」

 かつては他の兄弟達と過ごしていたからだろうか、イフェネアお姉様は現状に寂しさを覚えているようである。
 そういうことなら、私が少しくらい一緒に過ごしても問題ないのだろうか。私もこの広い自室というものには、結構寂しさを感じていることだし、丁度良いのかもしれない。

「見られて嫌なことなんかは、ありませんか?」
「私は自分の生き方というものに自信を持っているわ。見られて恥じるようなものはないと、思っているの」
「……かっこいいですね」

 イフェネアお姉様の言葉に、私は思わず感嘆の言葉を口にした。
 見られて恥じるようなものはない。そう言い切ることができるというのは、なんともかっこいいことである。
 私もそうなりたいと、強く思った。やはりイフェネアお姉様から学ぶということは、私にとって重要なことになりそうだ。

「私もイフェネアお姉様のようになれるでしょうか?」
「私だって初めはクラリアのようだったのだから、もちろん可能よ。ただそのためには、あなた自身が努力する必要はあるけれど」

 イフェネアお姉様の言葉によって、私は気を引き締めることになった。
 今まで貴族になんてなれないと思っていたが、それは間違いだったのかもしれない。この状況になったのだから、覚悟を決めるべきなのだろう。
 イフェネアお姉様のような貴族になってみせる。私は新たな目標を見つけたのだった。
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