妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?

木山楽斗

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5.大袈裟な罰

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「あの、アドルグ様……」
「安心しろ。お前を詰めたという二人を俺は許しはしない」
「え? あの……」

 アドルグ様は、私の肩に手を置いてきた。
 その動作からはなんというか、彼の優しさのようなものが伝わってくる。
 それに困惑して、私は思わずロヴェリオ殿下の方を見た。彼は苦笑いを浮かべている。ただ、私はまだいまいち状況が飲み込めていない。

「その二人はヴェルード公爵家を侮辱した。それは許されることではない」
「あ、それは……そうなのですか?」

 アドルグ様の言葉に、私はほんの少しだけ納得することができた。
 妾の子であろうとなかろうと、関係はないということかもしれない。彼女達がヴェルード公爵家の血を引く者を侮辱した。アドルグ様は、それを重要視しているのかもしれない。

「しかし、そんなことはこの際どうでもいいことだ。重要なのは、その二人が俺の妹に怖い思いをさせたということにある」
「え?」
「そのようなことをした者を俺は許しはしない。万死に値する。その二人は必ず絞首台まで俺が送るとしよう」
「あ、いや、それはやり過ぎでは……」

 納得していたはずの私は、続く言葉にまた混乱することになった。
 ただ口からは、否定の言葉がなんとか出た。よくわからないが、これくらいのことで絞首台に送るなんてことはどう考えてもやり過ぎだからだ。そこは止めておかなければならないと、自然と言葉が口から出てきた。

「アドルグ様、絞首台まで送ったらアドルグ様の方が悪者になってしまいますよ。もちろん、冗談だとは思いますが……」
「冗談ではない。ヴェルード公爵家の男子に二言はない」
「いや、二言であってくれよ……」

 アドルグ様の表情は真剣そのものだった。
 その表情を見ながら、私は言われたことを考える。先程アドルグ様は、確かに私のことを妹だと言った。
 それに私は衝撃を受けている。彼からそのように思われていたなんて、思ってもいなかったからだ。

「ロヴェリオ、お前はまだ幼い故にわかっていないのだろう。我々は舐められたら終わりなのだ。行いに対する報復はきちんとしておかなければならない」
「過激なんですって、それが……そりゃあもちろん、何もしないなんて訳にはいかないと思いますけど、あんまり過激なのは駄目ですからね。俺だって王族として反対します。権力の乱用じゃないですか」
「……可愛い年下のいとこのお前がそこまで言うというなら、俺もやぶさかではない」
「わかってくれましたか……」

 ロヴェリオ殿下は、そこでゆっくりとため息をついた。
 それは呆れている、ということだろうか。私としては驚きの方が大きいのだが、彼は結構慣れているように見える。
 アドルグ様は、普段からこんな感じなのだろうか。私としては、困惑しっぱなしである。
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