刷り込みで竜の母親になった私は、国の運命を預かることになりました。繁栄も滅亡も、私の導き次第で決まるようです。

木山楽斗

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98.騎士団長との戦い⑩

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「はあっ!」
「ふん!」

 私とローディスは、お互いに相手に向かって行った。
 その直後、辺りに光が溢れ、雷鳴が響く。リルフが、サンダーを放ったのだ。
 だが、これはどちらにも当たらなかった。私達から大きく離れた場所に、雷が落ちたのだ。
 お互いにそれを横目に確認してから、私達は間合いに入った。ローディスの二本の剣を、私はその剣で受け止める。重たい攻撃に、私の体はどんどんと後退していく。

「ふん!」
「くっ……!」
「むっ……!」

 ローディスが片側の剣を引いた瞬間、私は一気に力を込めた。当然のことながら、この隙にローディスの攻撃をなんとかしなければ、私は切り裂かれてしまう。そのため、私は渾身の力を振り絞って、ローディスを押し返す。

「あっ……!」
「むうっ!」

 次の瞬間、辺りが再び光に包まれ、雷鳴が轟いた。今度は、かなり近い場所に雷が落ちた。流石に、私達もその衝撃に怯んでしまう。
 その怯みは、私に有利に働いた。ローディスの力が弱まった瞬間に、後退することができたのである。

「ぬうっ!」
「くっ……!」

 その直後、またも雷が落ちた。眩しい光が辺りを包み込み、轟音が響く。
 リルフのサンダーを放つ感覚は、どんどんと狭くなっている。位置も私達に近づいているし、だんだんと慣れてきたということなのだろう。
 これに関しては、私達が有利になっているといえる。リルフが、あの魔法に慣れるということは、ローディスに直接当てられる可能性が高くなるということだからだ。

「ぬうっ!」

 それを理解したのか、ローディスはこちらに向かって来た。私は、剣を構ええてそれを迎え撃つための体勢を整える。

「ふん!」
「くうっ……」

 ローディスの剣を、私は受け止めた。しかし、それはまだ一本目である。二撃目が来るため、その前になんとかしなければならない。

「うおおおっ!」
「何っ!?」

 そこで私は、地面を蹴って飛び上がった。これが、私の最終手段。前も使った頭突きである。

「ぬぐうっ……!」

 ローディスの二撃目が来る前に、私の頭突きが彼の顔に当たった。その勢いで、ローディスの体が大きくのけぞる。
 その隙に、私は彼の鎧の隙間に、あるものを差し込んだ。それは、先程辺りが光りに包まれた際に拾っておいた槍の一部である。
 そのまま、私はローディスから距離を取っていく。これで、後はかけるだけだ。

「ぬぐあっ!」

 その直後、辺りに光とともに轟音が鳴り響いた。そして、一人の男の悲鳴が木霊する。
 リルフのサンダーが、ローディスの体を貫いたのだ。
 勝負を分けたのは、やはりあの槍だろう。あの尖った先端が、リルフの雷を誘導してくれたのだ。

「くっ……見事、だ」

ローディスは、ゆっくりとその場に倒れた。そのまま、彼は立ち上がらない。

「か、勝った……」

 その姿を見て、私はゆっくりと呟いた。私達が勝ち、この戦いが終わったのだ。
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