刷り込みで竜の母親になった私は、国の運命を預かることになりました。繁栄も滅亡も、私の導き次第で決まるようです。

木山楽斗

文字の大きさ
上 下
83 / 100

83.騎士団襲来⑤

しおりを挟む
 ローディスは、アルバナスの町へと向かっていた。色々と仕事があったため、ウェルデインとともに訪れることができなかったが、それが終わったので、目的を果たすことにしたのである。
 アルバナスは、既に目前に迫っている。近くの町で一夜を明かし、早朝にすぐに出発したので、すぐに着くはずだ。
 フェリナとリルフが、未だに無事かはわからない。ウェルデインとナルジャーが倒しているかもしれないからだ。
 だが、それでもローディスは楽しみにしていた。再び、あの二人と対峙できることを。

「む……」

 町の近くまで来て、ローディスはあることに気づいた。一人の男が立っているのだ。まるで、ローディスの進路を阻むように。
 その男の服装が、騎士団のものであることも、ローディスは理解した。同時に、部下が迎えに来たという訳ではないこともだ。

「……誰かと思えば、お前はアルバナスの駐在騎士か。確か、アラーグといったか……」
「……」
「だが、何故お前がこんな所にいる? 確か、お前も終末を望む会の討伐に参加するようになっていたはずだが?」

 騎士団長であるローディスは、騎士団に所属している者の顔は覚えている。そのため、近づいて確認して相手が誰であるかは理解した。
 しかし、その男が何故立ち塞がっているかまでは、ローディスにも理解できていない。相手の意図が、彼にはまったくわからないのだ。

「あなたを止めに来たのです」
「俺を止めに来ただと?」
「フェリナとリルフは、俺が守る」
「……そういうことか」

 アラーグの一言で、ローディスは理解した。彼は、フェリナ側の人間なのだと。
 それなら、自分の前に立つ理由はよくわかる。自分の前に立たなければ、おかしいと思うくらいだ。

「この俺の前に立つということが、どういうことかはわかっているのか?」
「もちろん、わかっています」
「今、引き下がるなら、まだ許してやる。そう言っても、お前は引かないのだろうな……」
「ええ、引きません」

 ローディスは、アラーグが決意してきていることも理解していた。その目を見れば、それはすぐにわかることだったからだ。
 それは素晴らしいことであると、ローディスは思っている。できることなら、そんな男を叩き潰したくなかった。
 しかし、自らの前に立ち塞がる以上、そうしないことはできない。相手が騎士であるならば、それは猶更だ。

「もっとも、俺はもう引き下がれない所まで来ていると思いますよ」
「……何?」

 そこで、アラーグは後方を示してきた。その方向を見て、ローディスは驚愕する。
 そこにいたのは、副団長のウェルデインだった。明らかに、意識はない。状況から考えて、アラーグがそれを成し遂げたのだろう。

「馬鹿な……ウェルデインは、騎士団でも随一の実力者だ。お前が奴を倒したというのか?」
「やってみればわかりますよ」

 ウェルデインが負けたことが、ローディスは信じられなかった。だが、ここにアラーグが立っていて、ウェルデインが横たわっている以上、それが紛れもない事実であるとわからされていた。
 だからこそ、ローディスは気持ちを切り替える。今は、目の前にいる強大なる敵を倒すことに集中するべきなのだと。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

見習い動物看護師最強ビーストテイマーになる

盛平
ファンタジー
新米動物看護師の飯野あかりは、車にひかれそうになった猫を助けて死んでしまう。異世界に転生したあかりは、動物とお話ができる力を授かった。動物とお話ができる力で霊獣やドラゴンを助けてお友達になり、冒険の旅に出た。ハンサムだけど弱虫な勇者アスランと、カッコいいけどうさん臭い魔法使いグリフも仲間に加わり旅を続ける。小説家になろうさまにもあげています。

野生児少女の生存日記

花見酒
ファンタジー
とある村に住んでいた少女、とある鑑定式にて自身の適性が無属性だった事で危険な森に置き去りにされ、その森で生き延びた少女の物語

老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜

二階堂吉乃
ファンタジー
 瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。  白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。  後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。  人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話+間話8話。

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!

さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ 祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き! も……もう嫌だぁ! 半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける! 時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ! 大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。 色んなキャラ出しまくりぃ! カクヨムでも掲載チュッ ⚠︎この物語は全てフィクションです。 ⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!

家庭菜園物語

コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。 その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。 異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

ユニークスキルの名前が禍々しいという理由で国外追放になった侯爵家の嫡男は世界を破壊して創り直します

かにくくり
ファンタジー
エバートン侯爵家の嫡男として生まれたルシフェルトは王国の守護神から【破壊の後の創造】という禍々しい名前のスキルを授かったという理由で王国から危険視され国外追放を言い渡されてしまう。 追放された先は王国と魔界との境にある魔獣の谷。 恐ろしい魔獣が闊歩するこの地に足を踏み入れて無事に帰った者はおらず、事実上の危険分子の排除であった。 それでもルシフェルトはスキル【破壊の後の創造】を駆使して生き延び、その過程で救った魔族の親子に誘われて小さな集落で暮らす事になる。 やがて彼の持つ力に気付いた魔王やエルフ、そして王国の思惑が複雑に絡み大戦乱へと発展していく。 鬱陶しいのでみんなぶっ壊して創り直してやります。 ※小説家になろうにも投稿しています。

冤罪で山に追放された令嬢ですが、逞しく生きてます

里見知美
ファンタジー
王太子に呪いをかけたと断罪され、神の山と恐れられるセントポリオンに追放された公爵令嬢エリザベス。その姿は老婆のように皺だらけで、魔女のように醜い顔をしているという。 だが実は、誰にも言えない理由があり…。 ※もともとなろう様でも投稿していた作品ですが、手を加えちょっと長めの話になりました。作者としては抑えた内容になってるつもりですが、流血ありなので、ちょっとエグいかも。恋愛かファンタジーか迷ったんですがひとまず、ファンタジーにしてあります。 全28話で完結。

処理中です...