刷り込みで竜の母親になった私は、国の運命を預かることになりました。繁栄も滅亡も、私の導き次第で決まるようです。

木山楽斗

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75.狙われる竜⑦

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 私とリルフは、ジャザーンに連れられて目地の外れまで来ていた。そこで待っていたのは、ローブと仮面を身に着けた集団である。
 要するに、ジャザーンは私達を仲間の元へと連れてきたということだ。宿屋の前では危害を加えるつもりがないと言っていたが、それはここで数の優位に立ちたかったからということなのかもしれない。

「さて、まあ、これだけの人数を揃えておいて信じてもらえないかもしれませんが、私は未だにあなた達を傷つけようとは思っていないのです」
「何?」
「話がしたいと言ったでしょう。あれは紛れもない真実なのです。どうか、私の話をお聞きください」

 ジャザーンの言葉は、本人も言っている通りまったく信頼できなかった。この状況で、危害を加えるつもりがないなんて、あるはずがない。
 もし武力を行使しないとしても、十中八九何かしてくるつもりなのは間違いないだろう。そうでなければ、こんな所までわざわざ連れてきたりはしないはずである。

「フェリナさん、あなたは王都に行かれたようですが……リルフさんの真実を聞かれましたか? 聞かれましたよね? そのために、あなた達は王都に行ったのですから」
「そうだとしたら……なんだっていうの?」
「リルフさんは、転生竜……この国の命運を握っている存在です。とても重大な存在です」
「……」

 ジャザーンは、私に対して大きな身振り手振りを交えながら言葉をかけてきた。その表情は、悪意に満ちている。彼は、何か嫌なことを考えているようだ。

「その転生竜が、どのような性質になるのか。それは、竜の母親にかかっているそうですね……つまりは、あなたが関係しているということになります」
「それがどうしたというの?」
「怖くはありませんか? あなたは国の運命を握っているんですよ? あなたの言動一つで、国が滅びるかもしれないのです。恐怖を感じてはいないのですか?」
「……恐怖を感じていない訳じゃない。でも、それがどうしたというんだ?」

 私は、ジャザーンの質問の意図がよくわかっていなかった。
 もちろん、私が国の運命を握っているという状況には恐怖を感じている。だが、そうだとしてもなんだというのだろうか。恐怖を感じていたとしても、彼らに何の関係があるというのだろうか。

「なるほど……強い精神力を持っているようですね。それに押し潰されていない……私の言葉に揺さぶられていないということなのでしょうね……」
「何?」
「もし、あなたがそこに恐怖を感じて押し潰されていたなら、転生竜に影響が出るはずです。それが出ないということはそういうことなのでしょう」
「なっ……」

 ジャザーンのさらなる言葉に、私は彼の意図を理解した。
 恐らく、彼は私を揺さぶって、リルフを悪い方向へと導こうとしているのだ。彼らの目的は、終末である。それを実行するために、私を通してリルフを変化させようとしているのだ。
 どうやら、私は心を強く持っていなければならないようである。この男に何を言われようとも、揺さぶられてはならないのだ。
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