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64.王都にて⑥
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「お、お母さん……」
「お主には、酷なことかもしれない。だが、それは紛れもない事実なのだ。お主は、この国の運命を決める権利を持っている」
私に対して、国王様は真っ直ぐに視線を向けてきた。その目には、私を憐れむようなものが感じられる。
その瞳を見て、私は思った。国王様は、本当にこの国の運命を私に託しているのだ。そうでなければ、こんな目で見つめてくるはずはない。
「……国王様は、リルフに危害を加えようとは思わないのですか?」
「む? それは、どういうことだ?」
「……この子が、国の運命を決めらないように危害を加えたりするつもりは、ないのでしょうか?」
押し潰されそうになる気持ちを抑えて、私は国王様に質問することにした。
私の心に少しだけ残っていた強い思いが、その質問をさせてくれたのだ。私がここに来た目的は、リルフを守りたいと思ったからである。その目的のためにも、この質問は必要不可欠なものなのだ。
「竜の力は強大だ……それに立ち向かうということは、愚かなことだ。敵うはずはない……というのも理由の一つだが、わしは思うのだよ」
「一体……何を?」
「この国は竜によって繁栄した。その繁栄をもたらしてくれた竜が、この国を破滅させようというなら、それは仕方のないことであるだろう」
「国王様……」
国王様は、どこか達観したような目をしていた。それはきっと、彼の覚悟なのだろう。
竜によって繁栄したことに、彼は恩義を感じている。その恩義に報いるためにも、その運命を受け入れるつもりなのだ。
「さて、実の所、話にはまだ続きがある」
「え? 続きですか?」
「転生竜の説明は、既に終わっている。次は、現状のことについて、話したいのだ」
「現状のこと?」
「お主達を襲った者達のことだ」
「あっ……」
国王様の言葉に、私は思い出した。リルフを狙っていた者達。どうして、彼らがこの子を狙っていたのか、その理由はもしかして今までの話が関係しているのだろうか。
「騎士団の調査によって、そ奴らが何者かはわかった。終末を望む会、それが奴らの名だ」
「終末を望む会?」
「前々から活動していた怪しい団体だそうだ。なんでも、この世界は終わるべきだという思想を持つ者達の集まりであるらしい。そんな者達が転生竜であるリルフを狙った。どこから知ったかはわからんが、恐らく転生竜の性質を知っているのだろう」
「……まさか、あいつらはリルフによって、この国……いや、世界を滅亡させようとしているということですか?」
「恐らくは、そういうことになるだろう」
終末を望む会というよくわからない団体は、自分達の思想を実現させるためにリルフを利用するつもりのようだ。
なんて迷惑な連中なのだろう。その思想そのものもそうだが、それにリルフを利用しようなんて、勝手にも程がある。
「そこで、わしは騎士団に命じることにした。終末を望む会の壊滅とお主達との護衛をだ」
「騎士団に?」
「さて、ここからはこの者に話を任せるとしよう……ローディス、出てこい!」
「えっ……?」
国王様の合図に、一人の男が現れた。
漆黒の鎧を纏い、長い赤髪を携えたその男は、私達を鋭い視線でしっかりと捉えていた。
只者ではない。すぐにそれがわかった。
そして、それが誰なのかもすぐに理解した。私を迎えに来た男が副団長。それ以下の地位の者が、この場に呼ばれるとは考えにくい。
「私の名前は、ローディス……オーファニス王国騎士団の団長だ」
私の予想通り、男は王国騎士団の団長だった。騎士団を取りまとめている男が、私達の前に現れたのである。
「お主には、酷なことかもしれない。だが、それは紛れもない事実なのだ。お主は、この国の運命を決める権利を持っている」
私に対して、国王様は真っ直ぐに視線を向けてきた。その目には、私を憐れむようなものが感じられる。
その瞳を見て、私は思った。国王様は、本当にこの国の運命を私に託しているのだ。そうでなければ、こんな目で見つめてくるはずはない。
「……国王様は、リルフに危害を加えようとは思わないのですか?」
「む? それは、どういうことだ?」
「……この子が、国の運命を決めらないように危害を加えたりするつもりは、ないのでしょうか?」
押し潰されそうになる気持ちを抑えて、私は国王様に質問することにした。
私の心に少しだけ残っていた強い思いが、その質問をさせてくれたのだ。私がここに来た目的は、リルフを守りたいと思ったからである。その目的のためにも、この質問は必要不可欠なものなのだ。
「竜の力は強大だ……それに立ち向かうということは、愚かなことだ。敵うはずはない……というのも理由の一つだが、わしは思うのだよ」
「一体……何を?」
「この国は竜によって繁栄した。その繁栄をもたらしてくれた竜が、この国を破滅させようというなら、それは仕方のないことであるだろう」
「国王様……」
国王様は、どこか達観したような目をしていた。それはきっと、彼の覚悟なのだろう。
竜によって繁栄したことに、彼は恩義を感じている。その恩義に報いるためにも、その運命を受け入れるつもりなのだ。
「さて、実の所、話にはまだ続きがある」
「え? 続きですか?」
「転生竜の説明は、既に終わっている。次は、現状のことについて、話したいのだ」
「現状のこと?」
「お主達を襲った者達のことだ」
「あっ……」
国王様の言葉に、私は思い出した。リルフを狙っていた者達。どうして、彼らがこの子を狙っていたのか、その理由はもしかして今までの話が関係しているのだろうか。
「騎士団の調査によって、そ奴らが何者かはわかった。終末を望む会、それが奴らの名だ」
「終末を望む会?」
「前々から活動していた怪しい団体だそうだ。なんでも、この世界は終わるべきだという思想を持つ者達の集まりであるらしい。そんな者達が転生竜であるリルフを狙った。どこから知ったかはわからんが、恐らく転生竜の性質を知っているのだろう」
「……まさか、あいつらはリルフによって、この国……いや、世界を滅亡させようとしているということですか?」
「恐らくは、そういうことになるだろう」
終末を望む会というよくわからない団体は、自分達の思想を実現させるためにリルフを利用するつもりのようだ。
なんて迷惑な連中なのだろう。その思想そのものもそうだが、それにリルフを利用しようなんて、勝手にも程がある。
「そこで、わしは騎士団に命じることにした。終末を望む会の壊滅とお主達との護衛をだ」
「騎士団に?」
「さて、ここからはこの者に話を任せるとしよう……ローディス、出てこい!」
「えっ……?」
国王様の合図に、一人の男が現れた。
漆黒の鎧を纏い、長い赤髪を携えたその男は、私達を鋭い視線でしっかりと捉えていた。
只者ではない。すぐにそれがわかった。
そして、それが誰なのかもすぐに理解した。私を迎えに来た男が副団長。それ以下の地位の者が、この場に呼ばれるとは考えにくい。
「私の名前は、ローディス……オーファニス王国騎士団の団長だ」
私の予想通り、男は王国騎士団の団長だった。騎士団を取りまとめている男が、私達の前に現れたのである。
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