上 下
19 / 20

19

しおりを挟む
 私とお姉様は、フェルムーナ・エルキアードとかいう変な人と一緒に、ある人と対面しています。
 第三王子であるウェルクード様は、快く私の要請を受け入れてくれました。本当に、すぐに話し合いの場を設けてくれたので、少し怖いくらいです。

「という訳で、聖女の仕事はおかしいと思うんです」
「なるほど、わかりました。僕が父に掛け合ってみましょう」
「いいんですか? わざわざ?」
「ええ、言うだけならただですから」

 ウェルクード様は、すごく話がわかる人でした。
 話がわかり過ぎて、怖いです。なんで、こんなにすぐに受け入れてくれるのでしょうか?
 もしかして、裏があるんですかね。まあ、どうでもいいことですか。掛け合ってくれるなら、話も終わりますし、私にとってはそれでいいです。

「さて、そちらの話は終わりましたか? もし終わったなら、僕の話をさせてもらっていいでしょうか?」
「え? 何か話があるんですか?」
「ええ、少し大事な話をしたいのです」
「む?」

 なんだか、嫌な予感がしてきました。
 まさか、また聖女に戻るように言うつもりなのでしょうか? その話は、面倒ですね。
 というか、現聖女が隣にいるんですよ? そんな中でそんな話をするなんて、普通に失礼じゃないですか?

「シャルリナ様……僕の婚約者になってくれませんか?」
「……ぱ?」
「率直に言わせてもらいます。僕は、あなたのことが好きなんです。だから、あなたに、婚約者になってもらいたいのです」
「びょ?」

 ウェルクード様の言葉に、私は震えあがりました。
 この人、何を言っているのでしょうか? やばい人です、絶対に。

「冗談ですか?」
「冗談ではありません」
「正気ですか?」
「正気です」
「ええっ……? あなた、私のことが好きなんですか? 趣味が悪いですよ?」
「おや、おや……」

 私の言葉に、ウェルクード様は笑っていた。
 この人、滅茶苦茶趣味が悪いです。普通の神経をしていたら、私を好きになんて、絶対になりませんよ。
 まあ、猫を被っていましたから、その外面に惚れたというのはわからない訳ではありません。だとしても、人を見える目はありませんね。

「シャルリナ、そんなことないよ。シャルリナは素敵な人だよ」
「お姉様、論点はそこではありません」
「そうですよ。王子に思われているなんて、素敵なことではありませんか」
「あなたは黙っていてください」

 お姉様は優しいので、私を褒めてくれました。
 でも、私は自分でわかっています。私の本質を知っていて好きになる人がまともではないと。
 この王子も、絶対にまともな人間ではありません。多分、猫を被っているんでしょうね。

「僕は、あなたのような人が好きですよ? 一緒にいて、楽しそうですから」
「……やっぱり、あなたやばい人ですね?」
「さて、どうでしょうか?」

 私の問いかけに対して笑っている第三王子を見て、私は確信しました。
 この人は、絶対にやばい人です。人がいいように見えますが、性格が悪いはずです。
 これは、まずい。非常にまずい。まさか、聖女のことを交換条件に、婚約を迫ったりしてきませんよね?

「ああ、ご安心ください。これは、今回の件には関係ありません。ただ、婚約のことについては、ラーファン家に掛け合わせてもらいますね」
「はあっ? 何を言っているんですか?」
「まあ、その辺りは家同士が決めることでもあります。返事については、また今度お願いしましょうか」

 ラーファン家に掛け合われたら、滅茶苦茶やばいですね。
 王族との婚約なんて提案されたら、頷きかねませんよ。でも、どうすることもできないんですよね。どうしましょう? もう詰んでいるんですかね?
 なんで、私がこんな目に合うのでしょうか? 何かしましたかね? 日頃の行いはいいはずなんですけど。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

妹と寝たんですか?エセ聖女ですよ?~妃の座を奪われかけた令嬢の反撃~

岡暁舟
恋愛
100年に一度の確率で、令嬢に宿るとされる、聖なる魂。これを授かった令嬢は聖女と認定され、無条件で時の皇帝と婚約することになる。そして、その魂を引き当てたのが、この私、エミリー・バレットである。 本来ならば、私が皇帝と婚約することになるのだが、どういうわけだか、偽物の聖女を名乗る不届き者がいるようだ。その名はジューン・バレット。私の妹である。 別にどうしても皇帝と婚約したかったわけではない。でも、妹に裏切られたと思うと、少し癪だった。そして、既に二人は一夜を過ごしてしまったそう!ジューンの笑顔と言ったら……ああ、憎たらしい! そんなこんなで、いよいよ私に名誉挽回のチャンスが回ってきた。ここで私が聖女であることを証明すれば……。

お姉様に押し付けられて代わりに聖女の仕事をする事になりました

花見 有
恋愛
聖女である姉へレーナは毎日祈りを捧げる聖女の仕事に飽きて失踪してしまった。置き手紙には妹のアメリアが代わりに祈るように書いてある。アメリアは仕方なく聖女の仕事をする事になった。

聖女解任ですか?畏まりました(はい、喜んでっ!)

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私はマリア、職業は大聖女。ダグラス王国の聖女のトップだ。そんな私にある日災難(婚約者)が災難(難癖を付け)を呼び、聖女を解任された。やった〜っ!悩み事が全て無くなったから、2度と聖女の職には戻らないわよっ!? 元聖女がやっと手に入れた自由を満喫するお話しです。

虐げられていた姉はひと月後には幸せになります~全てを奪ってきた妹やそんな妹を溺愛する両親や元婚約者には負けませんが何か?~

***あかしえ
恋愛
「どうしてお姉様はそんなひどいことを仰るの?!」 妹ベディは今日も、大きなまるい瞳に涙をためて私に喧嘩を売ってきます。 「そうだぞ、リュドミラ!君は、なぜそんな冷たいことをこんなかわいいベディに言えるんだ!」 元婚約者や家族がそうやって妹を甘やかしてきたからです。 両親は反省してくれたようですが、妹の更生には至っていません! あとひと月でこの地をはなれ結婚する私には時間がありません。 他人に迷惑をかける前に、この妹をなんとかしなくては! 「結婚!?どういうことだ!」って・・・元婚約者がうるさいのですがなにが「どういうこと」なのですか? あなたにはもう関係のない話ですが? 妹は公爵令嬢の婚約者にまで手を出している様子!ああもうっ本当に面倒ばかり!! ですが公爵令嬢様、あなたの所業もちょぉっと問題ありそうですね? 私、いろいろ調べさせていただいたんですよ? あと、人の婚約者に色目を使うのやめてもらっていいですか? ・・・××しますよ?

やり直し令嬢は何もしない

黒姫
恋愛
逆行転生した令嬢が何もしない事で自分と妹を死の運命から救う話

【完結】逆行した聖女

ウミ
恋愛
 1度目の生で、取り巻き達の罪まで着せられ処刑された公爵令嬢が、逆行してやり直す。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初めて書いた作品で、色々矛盾があります。どうか寛大な心でお読みいただけるととても嬉しいですm(_ _)m

偽物と断罪された令嬢が精霊に溺愛されていたら

影茸
恋愛
 公爵令嬢マレシアは偽聖女として、一方的に断罪された。  あらゆる罪を着せられ、一切の弁明も許されずに。  けれど、断罪したもの達は知らない。  彼女は偽物であれ、無力ではなく。  ──彼女こそ真の聖女と、多くのものが認めていたことを。 (書きたいネタが出てきてしまったゆえの、衝動的短編です) (少しだけタイトル変えました)

聖水を作り続ける聖女 〜 婚約破棄しておきながら、今さら欲しいと言われても困ります!〜

手嶋ゆき
恋愛
 「ユリエ!! お前との婚約は破棄だ! 今すぐこの国から出て行け!」  バッド王太子殿下に突然婚約破棄されたユリエ。  さらにユリエの妹が、追い打ちをかける。  窮地に立たされるユリエだったが、彼女を救おうと抱きかかえる者がいた——。 ※一万文字以内の短編です。 ※小説家になろう様など他サイトにも投稿しています。

処理中です...