17 / 20
17
しおりを挟む
私は、今日もごろごろして過ごすつもりでした。
部屋のドアが壊れて、別の部屋に移っても、私の生活に特に変化はない。そう思っていました。
しかし、私の平和な日常を乱す存在が現れました。現聖女であるフェルムーナ・エルキアードが、私を訪ねて来たのです。
「で、何の用なんですか?」
「実は、あなたに相談がありまして……」
「相談……残念ながら、私はそういうのは苦手なんです。帰ってもらっていいですか?」
「シャルリナ、そう言わずに聞いてあげて」
「はあ、まあ、お姉様がそういうなら聞いてあげるだけはいいですけど……」
フェルムーナ・エルキアードとの話し合いには、お姉様も参加してもらっています。
というか、お姉様から同席させて欲しいと言ってきたのです。きっと、私をフォローしようとか、そういうことを考えているのでしょう。
お姉様は、とても優しい人ですね。そういう所が、私は好きです。
でも、今回に限って、その優しさは引っ込めておいて欲しかったですね。フェルムーナ・エルキアードは絶対に面倒なことを言ってきますよ。
「おほん。それでは、言わせてもらいますけど、聖女の仕事って、大変過ぎではありませんか?」
「え?」
「私、もう耐えられませんわ。いくら理想があったからといって、あんな大変な仕事はできません」
彼女の言葉に、私は少し驚きました。
意外と、根を上げるのが早いんですねこの人。あれだけなりたいとか言っていたんですから、もう少しくらい頑張るかと思っていたんですけど。
まったく、私でももう少し頑張ったというのに、根気がない人ですね。あんなに鬱陶しい絡み方をしておいて、すぐにこれなんて信じられませんよ。
まあ、でも、少しすっきりしました。現実を知って、いい気味って感じです。やっぱり、理想ばかりでは、駄目なんですよ。
「……まあ、あなたに耐えられなかったというなら仕方ありませんね。やめればいいんじゃないですか?」
「やめる……確かに、それも一つの選択ですけど、私は別の手段に頼るべきだと思っています」
「別の手段?」
「聖女の待遇の改善を求めるべきだと思うのです。あなたの力を貸していただけませんか? 一緒に、聖女の職務を正しい方向に導きましょう」
「うわあっ……」
そこで、フェルムーナ・エルキアードは立ち上がりました。
また、甘っちょろい理想論を振りかざそうということですか。ああ、面倒くさい。
少し言うくらいで改善するなら、誰も苦労しませんよ。こういうのは凝り固まっていて、ちょっとやそっとじゃ変わらないものなんです。
それをどうにかしようなんて、面倒じゃないですか。何より、どうして私がそんなことをしなければならないのでしょう。
苦労して、もし聖女の待遇が改善しても、私には利益がないじゃないですか。得するのは、この人やこれから聖女になる人達です。
なんか、それってむかつきます。私も苦労したんですから、先の人達も苦労してくださいよ。不公平じゃないですか。
「残念ですけど、私はそんなことはしたくありません」
「え?」
「あなたが勝手にやってください。私、もう聖女とかそういうことには関わらないと決めているので」
私は、きっぱりと断ることにしました。
早く帰ってくれませんかね、この人。
ああ、でも、ここからさらに食い下がってくるんでしょうね。聖女だった時も、勝負しなければどうとか変なこと言ってきましたから。
「何を言っているんですか! この国の未来がかかっているのですよ!?」
「未来とか、正直どうでもいいんですよね。それって、私には関係ないじゃないですか」
「人々の未来のために、働きかけようとは思いませんの?」
「ちょっと、最近、体調が悪くてですね……」
説得は無理そうですね。ここは、体調不良でやり過ごすしかありません。
こういう理想ばかり掲げる人って、嫌ですね。対応が、面倒くさ過ぎます。
自分が正しいとか思っているから、説得のしようがありません。こういう時に無難にやり過ごすには、どうしたらいいんでしょうか。
「あの……少しいいかな?」
「え?」
「あら?」
そこで、お姉様はゆっくりと口を開きました。
どうやら、何か言いたいことがあるようですね。
部屋のドアが壊れて、別の部屋に移っても、私の生活に特に変化はない。そう思っていました。
しかし、私の平和な日常を乱す存在が現れました。現聖女であるフェルムーナ・エルキアードが、私を訪ねて来たのです。
「で、何の用なんですか?」
「実は、あなたに相談がありまして……」
「相談……残念ながら、私はそういうのは苦手なんです。帰ってもらっていいですか?」
「シャルリナ、そう言わずに聞いてあげて」
「はあ、まあ、お姉様がそういうなら聞いてあげるだけはいいですけど……」
フェルムーナ・エルキアードとの話し合いには、お姉様も参加してもらっています。
というか、お姉様から同席させて欲しいと言ってきたのです。きっと、私をフォローしようとか、そういうことを考えているのでしょう。
お姉様は、とても優しい人ですね。そういう所が、私は好きです。
でも、今回に限って、その優しさは引っ込めておいて欲しかったですね。フェルムーナ・エルキアードは絶対に面倒なことを言ってきますよ。
「おほん。それでは、言わせてもらいますけど、聖女の仕事って、大変過ぎではありませんか?」
「え?」
「私、もう耐えられませんわ。いくら理想があったからといって、あんな大変な仕事はできません」
彼女の言葉に、私は少し驚きました。
意外と、根を上げるのが早いんですねこの人。あれだけなりたいとか言っていたんですから、もう少しくらい頑張るかと思っていたんですけど。
まったく、私でももう少し頑張ったというのに、根気がない人ですね。あんなに鬱陶しい絡み方をしておいて、すぐにこれなんて信じられませんよ。
まあ、でも、少しすっきりしました。現実を知って、いい気味って感じです。やっぱり、理想ばかりでは、駄目なんですよ。
「……まあ、あなたに耐えられなかったというなら仕方ありませんね。やめればいいんじゃないですか?」
「やめる……確かに、それも一つの選択ですけど、私は別の手段に頼るべきだと思っています」
「別の手段?」
「聖女の待遇の改善を求めるべきだと思うのです。あなたの力を貸していただけませんか? 一緒に、聖女の職務を正しい方向に導きましょう」
「うわあっ……」
そこで、フェルムーナ・エルキアードは立ち上がりました。
また、甘っちょろい理想論を振りかざそうということですか。ああ、面倒くさい。
少し言うくらいで改善するなら、誰も苦労しませんよ。こういうのは凝り固まっていて、ちょっとやそっとじゃ変わらないものなんです。
それをどうにかしようなんて、面倒じゃないですか。何より、どうして私がそんなことをしなければならないのでしょう。
苦労して、もし聖女の待遇が改善しても、私には利益がないじゃないですか。得するのは、この人やこれから聖女になる人達です。
なんか、それってむかつきます。私も苦労したんですから、先の人達も苦労してくださいよ。不公平じゃないですか。
「残念ですけど、私はそんなことはしたくありません」
「え?」
「あなたが勝手にやってください。私、もう聖女とかそういうことには関わらないと決めているので」
私は、きっぱりと断ることにしました。
早く帰ってくれませんかね、この人。
ああ、でも、ここからさらに食い下がってくるんでしょうね。聖女だった時も、勝負しなければどうとか変なこと言ってきましたから。
「何を言っているんですか! この国の未来がかかっているのですよ!?」
「未来とか、正直どうでもいいんですよね。それって、私には関係ないじゃないですか」
「人々の未来のために、働きかけようとは思いませんの?」
「ちょっと、最近、体調が悪くてですね……」
説得は無理そうですね。ここは、体調不良でやり過ごすしかありません。
こういう理想ばかり掲げる人って、嫌ですね。対応が、面倒くさ過ぎます。
自分が正しいとか思っているから、説得のしようがありません。こういう時に無難にやり過ごすには、どうしたらいいんでしょうか。
「あの……少しいいかな?」
「え?」
「あら?」
そこで、お姉様はゆっくりと口を開きました。
どうやら、何か言いたいことがあるようですね。
0
お気に入りに追加
769
あなたにおすすめの小説
妹と寝たんですか?エセ聖女ですよ?~妃の座を奪われかけた令嬢の反撃~
岡暁舟
恋愛
100年に一度の確率で、令嬢に宿るとされる、聖なる魂。これを授かった令嬢は聖女と認定され、無条件で時の皇帝と婚約することになる。そして、その魂を引き当てたのが、この私、エミリー・バレットである。
本来ならば、私が皇帝と婚約することになるのだが、どういうわけだか、偽物の聖女を名乗る不届き者がいるようだ。その名はジューン・バレット。私の妹である。
別にどうしても皇帝と婚約したかったわけではない。でも、妹に裏切られたと思うと、少し癪だった。そして、既に二人は一夜を過ごしてしまったそう!ジューンの笑顔と言ったら……ああ、憎たらしい!
そんなこんなで、いよいよ私に名誉挽回のチャンスが回ってきた。ここで私が聖女であることを証明すれば……。
お姉様に押し付けられて代わりに聖女の仕事をする事になりました
花見 有
恋愛
聖女である姉へレーナは毎日祈りを捧げる聖女の仕事に飽きて失踪してしまった。置き手紙には妹のアメリアが代わりに祈るように書いてある。アメリアは仕方なく聖女の仕事をする事になった。
聖女解任ですか?畏まりました(はい、喜んでっ!)
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私はマリア、職業は大聖女。ダグラス王国の聖女のトップだ。そんな私にある日災難(婚約者)が災難(難癖を付け)を呼び、聖女を解任された。やった〜っ!悩み事が全て無くなったから、2度と聖女の職には戻らないわよっ!?
元聖女がやっと手に入れた自由を満喫するお話しです。
虐げられていた姉はひと月後には幸せになります~全てを奪ってきた妹やそんな妹を溺愛する両親や元婚約者には負けませんが何か?~
***あかしえ
恋愛
「どうしてお姉様はそんなひどいことを仰るの?!」
妹ベディは今日も、大きなまるい瞳に涙をためて私に喧嘩を売ってきます。
「そうだぞ、リュドミラ!君は、なぜそんな冷たいことをこんなかわいいベディに言えるんだ!」
元婚約者や家族がそうやって妹を甘やかしてきたからです。
両親は反省してくれたようですが、妹の更生には至っていません!
あとひと月でこの地をはなれ結婚する私には時間がありません。
他人に迷惑をかける前に、この妹をなんとかしなくては!
「結婚!?どういうことだ!」って・・・元婚約者がうるさいのですがなにが「どういうこと」なのですか?
あなたにはもう関係のない話ですが?
妹は公爵令嬢の婚約者にまで手を出している様子!ああもうっ本当に面倒ばかり!!
ですが公爵令嬢様、あなたの所業もちょぉっと問題ありそうですね?
私、いろいろ調べさせていただいたんですよ?
あと、人の婚約者に色目を使うのやめてもらっていいですか?
・・・××しますよ?
【完結】逆行した聖女
ウミ
恋愛
1度目の生で、取り巻き達の罪まで着せられ処刑された公爵令嬢が、逆行してやり直す。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初めて書いた作品で、色々矛盾があります。どうか寛大な心でお読みいただけるととても嬉しいですm(_ _)m
偽物と断罪された令嬢が精霊に溺愛されていたら
影茸
恋愛
公爵令嬢マレシアは偽聖女として、一方的に断罪された。
あらゆる罪を着せられ、一切の弁明も許されずに。
けれど、断罪したもの達は知らない。
彼女は偽物であれ、無力ではなく。
──彼女こそ真の聖女と、多くのものが認めていたことを。
(書きたいネタが出てきてしまったゆえの、衝動的短編です)
(少しだけタイトル変えました)
なんで私だけ我慢しなくちゃならないわけ?
ワールド
恋愛
私、フォン・クラインハートは、由緒正しき家柄に生まれ、常に家族の期待に応えるべく振る舞ってまいりましたわ。恋愛、趣味、さらには私の将来に至るまで、すべては家名と伝統のため。しかし、これ以上、我慢するのは終わりにしようと決意いたしましたわ。
だってなんで私だけ我慢しなくちゃいけないと思ったんですもの。
これからは好き勝手やらせてもらいますわ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる