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78.夫人の子供
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「……まさか、あなた達と再び顔を合わせることになるなんて思っていませんでした」
「ええ、それは私もです、ランカーソン伯爵夫人」
ギルドルア様との話を終えた私達は、王城のとある一室に来ていた。
秘密裏に出産などを行ったため、ランカーソン伯爵夫人は牢屋ではなくある程度整備された部屋にいる。一時ではあるが、彼女は自由を手に入れているのだ。
私が知っている夫人なら、そういう時にはもっと余裕な態度をする。ただ今の彼女からは、自由を謳歌しているといった感じは全くない。
「ランカーソン伯爵夫人、俺達は兄上に言われてここまで来ました……その子が、あなたの子供ですか?」
「ええ」
「……可愛いですね。女の子ですか?」
「そうです」
クルレイド様と私からの質問に、ランカーソン伯爵夫人は素直に答えてくれた。
彼女は、かなり警戒している様子だ。ベビーベッドで眠る小さな命が、彼女にそうさせているのだろう。
その様に、私は自分の心配が杞憂であったことを理解する。彼女は間違いなく、自分の子供を愛しているのだ。それだけは間違いない。
「……それで、お二人はこの子をどうされるおつもりなのですか?」
「それに関しては、あなたの話を聞かないと判断することはできませんね。兄上から話は聞きましたが、あなたの口から話を聞くべきだと俺は思っています」
「クルレイド殿下、あなたがそう望んでいるというなら、私はいくらでも話しましょう。ただ最初に言っておきたいことがあります」
ランカーソン伯爵夫人は、とても真剣な顔をしていた。
彼女のそのような顔を見るのは、初めてかもしれない。それだけ夫人の子供に対する愛は、深いということなのだろう。
「私はこの子のためなら、この命だって捧げることができます。あなた達に対して、不躾なお願いであるということは理解しています。しかしそれでも、どうかこの子のことだけは……この子の幸せだけは、保証していただきたいのです」
「ランカーソン伯爵夫人……」
ベッドの上で、ランカーソン伯爵夫人は正座した。
それから彼女は、ゆっくりと頭を下げる。あのプライドの高かった彼女が、ベッドとはいえ地に頭をつけているのだ。それは驚くべきことである。
彼女の覚悟は、しっかりと伝わってきた。それを無下にするつもりは、私にもクルレイド様にもない。
「ランカーソン伯爵夫人、頭を上げてください。生まれた子に罪はありません。俺達もその子のことは守りたいと思っています」
「……ありがとうございます」
クルレイド様の言葉に、ランカーソン伯爵夫人の警戒が少しだけ解けたような気がした。
こういう言い方は変かもしれないが、彼女も私達に少しだけ心を開いてくれたということだろう。
「ええ、それは私もです、ランカーソン伯爵夫人」
ギルドルア様との話を終えた私達は、王城のとある一室に来ていた。
秘密裏に出産などを行ったため、ランカーソン伯爵夫人は牢屋ではなくある程度整備された部屋にいる。一時ではあるが、彼女は自由を手に入れているのだ。
私が知っている夫人なら、そういう時にはもっと余裕な態度をする。ただ今の彼女からは、自由を謳歌しているといった感じは全くない。
「ランカーソン伯爵夫人、俺達は兄上に言われてここまで来ました……その子が、あなたの子供ですか?」
「ええ」
「……可愛いですね。女の子ですか?」
「そうです」
クルレイド様と私からの質問に、ランカーソン伯爵夫人は素直に答えてくれた。
彼女は、かなり警戒している様子だ。ベビーベッドで眠る小さな命が、彼女にそうさせているのだろう。
その様に、私は自分の心配が杞憂であったことを理解する。彼女は間違いなく、自分の子供を愛しているのだ。それだけは間違いない。
「……それで、お二人はこの子をどうされるおつもりなのですか?」
「それに関しては、あなたの話を聞かないと判断することはできませんね。兄上から話は聞きましたが、あなたの口から話を聞くべきだと俺は思っています」
「クルレイド殿下、あなたがそう望んでいるというなら、私はいくらでも話しましょう。ただ最初に言っておきたいことがあります」
ランカーソン伯爵夫人は、とても真剣な顔をしていた。
彼女のそのような顔を見るのは、初めてかもしれない。それだけ夫人の子供に対する愛は、深いということなのだろう。
「私はこの子のためなら、この命だって捧げることができます。あなた達に対して、不躾なお願いであるということは理解しています。しかしそれでも、どうかこの子のことだけは……この子の幸せだけは、保証していただきたいのです」
「ランカーソン伯爵夫人……」
ベッドの上で、ランカーソン伯爵夫人は正座した。
それから彼女は、ゆっくりと頭を下げる。あのプライドの高かった彼女が、ベッドとはいえ地に頭をつけているのだ。それは驚くべきことである。
彼女の覚悟は、しっかりと伝わってきた。それを無下にするつもりは、私にもクルレイド様にもない。
「ランカーソン伯爵夫人、頭を上げてください。生まれた子に罪はありません。俺達もその子のことは守りたいと思っています」
「……ありがとうございます」
クルレイド様の言葉に、ランカーソン伯爵夫人の警戒が少しだけ解けたような気がした。
こういう言い方は変かもしれないが、彼女も私達に少しだけ心を開いてくれたということだろう。
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