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59.意外な訪問者

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「さて、レミアナ嬢はエルライド侯爵家に戻られますよね?」
「ええ、そのつもりです。ランカーソン伯爵夫人に関する事件も終わりましたから」
「思えば、レミアナ嬢とロンダーがこちらに来てから、長い事件でしたね……」
「ええ、本当に……」

 クルレイド様の言葉に、私はゆっくりと頷いた。
 ランカーソン伯爵夫人を打倒するために王城を訪ねてから、ギルドルア様が計画を進めて、思えば長い期間ここで過ごしたものである。

「長い間、お世話になってしまいましたね……ありがとうございました」
「いいえ、お気になさらないでください。こちらの都合で呼び止めたという面もありますし……おや?」
「あら……?」

 私とクルレイド様は、部屋の戸を叩く音に少し驚いた。
 しかしすぐに私は思い出す。そういえば、婚約の話のためにギルドルア様が席を外していたのだ。

「ギルドルア様でしょうか?」
「ああ、兄上、もう話は終わりましたよ」
「あ、いえ、ギルドルア殿下ではございません」
「おや、使用人の方でしたか? それなら、どうかしましたか?」

 部屋の戸を叩いたのは、ギルドルア様ではなかった。私の予想は、的外れだったようだ。
 だが、そうなると使用人が訪ねてきた理由が気になってくる。この状況で訪ねてくるとなると、余程急ぎの用でなければならないと思うのだが。

「御歓談中申し訳ありません。ただ、アルペリオ侯爵令息が訪ねて来たため、お二人には早急に知らせておいた方がいいと思いまして」
「なんですって?」

 使用人の言葉に、私とクルレイド様は顔を見合わせた。
 アルペリオ侯爵令息の訪問、それは驚くべきことである。
 何故、彼がこのタイミングで王城を訪ねて来ているのだろうか。その意図がまったくわからず、少し混乱してしまう。

「よく知らせてくれましたね、ありがとうございます……レミアナ嬢、これは一体どういうことなのでしょうか?」
「わかりません。でも用があるとしたら、私かランカーソン伯爵夫人だと思います。不本意ですが、とりあえず私が出て行ってみます」
「それなら、俺も行きますよ。アルペリオ侯爵令息は、色々な意味で警戒するべき人ですからね」
「……ええ、よろしくお願いします」

 クルレイド様は、アルペリオ侯爵令息のことをかなり警戒しているようだった。
 私の元婚約者ということもあるのだろうが、その視線がとても鋭くなっている。
 そんな彼が、私にとってはとても頼もしかった。訳がわからないアルペリオ侯爵令息の訪問に対する不安も、少し薄れたような気がする。
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