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54.次の王は

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「さて、ランカーソン伯爵夫妻に関しては、もういいだろう。次は我々の問題について話し合わなければならない」
「我々……それはつまり、俺と兄上ということでしょうか?」
「そういうことになる。先程も言ったが、父上は今回の件で責任を取り退位するだろう。その場合、当然僕か君のどちらかが王位を継がなければならない」

 ギルドルア様は、先程までとは打って変わって真剣な顔をしていた。
 それは当然だろう。次の王、それはランカーソン伯爵夫妻の今後よりも、重要な話だ。
 ただ、それを話す場に私がいるというのは変な話である。正直な所、とても場違いだ。

「いつかそうなるとは思っていましたが、兄上が王位を継ぐ訳ですか……」
「クルレイド、僕と君のどちらが王位を継ぐかは、正確には決まっていない事柄だが?」
「明言されているという訳ではないかもしれませんが、俺達も含めて全員わかっているはずですよ。王位を継ぐのは兄上だと」

 クルレイド様の言葉に、私は少しだけ頷いた。
 この国では、基本的に長男が家を継ぐ。それは王位にも適用されるものだ。
 ギルドルア様の素行なども特に問題視はされていないし、何もなければ彼が王位を継ぐはずである。それは国民も、わかっていることだ。

「僕としては、君に王位を継いでもらいたいとも思っているのだがね」
「え?」
「兄上、なんですって?」

 そんな私は、ギルドルア様の意見に思わず声を出してしまった。
 クルレイド様に王位、それはまったく考えていなかった可能性である。もちろん王位を継ぐ資格はあるが、驚くべき選択だ。

「王としての素質は、君の方があると思っている。僕という人間は、中々に汚れているからね」
「汚れている?」
「クルレイド、君は清廉潔白だ。どこまでも真っ直ぐな君こそが、王には相応しいだろう。君ならば、真に民のために動くことができる」

 ギルドルア様は、そこで少し悲しそうな表情をしていた。
 そして彼はゆっくりと目を瞑り、その後に首を振る。

「だが、そういう者が王になることを今の世の中は許容してくれないこともまた事実だ」
「兄上?」
「やはり僕が、王になるしかないのだろうね。クルレイド、君は王位を継ぐには清廉潔白過ぎる。悲しいことだがね……」
「兄上、それは……」

 ギルドルア様は、意見を一気に反転させた。
 いや、そういう訳ではないのかもしれない。彼が先程まで語っていたのは、願望であると考えることもできる。
 できることなら、クルレイド様に王位を継いでもらいたい。しかし、今の国の現状がそうさせてくれない。それをギルドルア様は、嘆いていたのだろうか。


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※誤字脱字などのご指摘ありがとうございます。大変助かっています。
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