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53.これからのこと
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私とクルレイド様は、ギルドルア様と向き合って座っていた。
ランカーソン伯爵夫人に関する事件は、大方片付いたといえるだろう。そんな中、私達は二人で彼に呼び出されたのである。
「さて、まずはあの二人がどうなるかを話しておくべきだろうか」
「ランカーソン伯爵と夫人のことですか、大方の予想はついています。伯爵は極刑、夫人は終身刑でしょう?」
ギルドルア様の言葉に対して、クルレイド様はそのような回答を返した。
その意見には、私も同意である。状況的に考えて、二人はそのような罰を与えられるようになるだろう。
「クルレイド、君はまだまだ見通しが甘いようだね。もう少し考えてみたまえ」
「違うのですか?」
「ああ、今回は違う結果になるだろう」
しかしギルドルア様は、クルレイド様の意見を切り捨てた。
それに対して、私達は顔を見合わせる。違う結果など、まったく考えていなかったからだ。
「まさか、何かしらの司法取引を働くという訳でしょうか? それは感心できませんよ、兄上」
「そういう訳ではないさ。ただ、これから何が起こるかを一度冷静になって考えてみてくれ」
「そう言われましても……」
ギルドルア様は、またも他人の重大な事柄をクイズにしていた。
それはあまり褒められたことではないだろう。ただ、私達としてはできればこのクイズに正解しておきたい所だ。
「重要なのは、我々のことだ、クルレイド。今回の件で、父上はミスを犯した。その責任を取らなければならないだろう」
「……父上は王位を退くということですか? なるほど、少々早すぎるような気もしますが、仕方ありませんか。夫人に良いようにされていた訳ですし」
「そうすると何が起こる」
ギルドルア様は、笑みを浮かべている。
そこで私は理解した。彼が何を考えているかということを。
「ギルドルア様は、恩赦が与えられると考えているのですね?」
「ああ、恐らくはそうなるだろう。ランカーソン伯爵の処刑が実施される可能性は低い。父上はあれで人情を重んじるからな。伯爵の処刑は、回避するだろう」
ギルドルア様も、ランカーソン伯爵の処刑の実施をそこまで望んでいる訳ではないのだろう。それは表情から伝わってくる。
彼は体の芯まで冷たい人間という訳ではないようだ。できることなら、命を奪うようなことはしたくないのだろう。
「まあそれでも、ランカーソン伯爵は終身刑だ。夫人の減刑がなされるとしても、どの道彼女も出て来られない。その結末は僕にとって不満はないものだ」
「そうですね。二人が自由にできないのなら、特に問題はありませんか……」
ギルドルア様とクルレイド様は、向き合ってそんな会話を交わしていた。
そうやって頷き合っている姿は、よく似ている。やはり二人は、兄弟ということなのだろう。
ランカーソン伯爵夫人に関する事件は、大方片付いたといえるだろう。そんな中、私達は二人で彼に呼び出されたのである。
「さて、まずはあの二人がどうなるかを話しておくべきだろうか」
「ランカーソン伯爵と夫人のことですか、大方の予想はついています。伯爵は極刑、夫人は終身刑でしょう?」
ギルドルア様の言葉に対して、クルレイド様はそのような回答を返した。
その意見には、私も同意である。状況的に考えて、二人はそのような罰を与えられるようになるだろう。
「クルレイド、君はまだまだ見通しが甘いようだね。もう少し考えてみたまえ」
「違うのですか?」
「ああ、今回は違う結果になるだろう」
しかしギルドルア様は、クルレイド様の意見を切り捨てた。
それに対して、私達は顔を見合わせる。違う結果など、まったく考えていなかったからだ。
「まさか、何かしらの司法取引を働くという訳でしょうか? それは感心できませんよ、兄上」
「そういう訳ではないさ。ただ、これから何が起こるかを一度冷静になって考えてみてくれ」
「そう言われましても……」
ギルドルア様は、またも他人の重大な事柄をクイズにしていた。
それはあまり褒められたことではないだろう。ただ、私達としてはできればこのクイズに正解しておきたい所だ。
「重要なのは、我々のことだ、クルレイド。今回の件で、父上はミスを犯した。その責任を取らなければならないだろう」
「……父上は王位を退くということですか? なるほど、少々早すぎるような気もしますが、仕方ありませんか。夫人に良いようにされていた訳ですし」
「そうすると何が起こる」
ギルドルア様は、笑みを浮かべている。
そこで私は理解した。彼が何を考えているかということを。
「ギルドルア様は、恩赦が与えられると考えているのですね?」
「ああ、恐らくはそうなるだろう。ランカーソン伯爵の処刑が実施される可能性は低い。父上はあれで人情を重んじるからな。伯爵の処刑は、回避するだろう」
ギルドルア様も、ランカーソン伯爵の処刑の実施をそこまで望んでいる訳ではないのだろう。それは表情から伝わってくる。
彼は体の芯まで冷たい人間という訳ではないようだ。できることなら、命を奪うようなことはしたくないのだろう。
「まあそれでも、ランカーソン伯爵は終身刑だ。夫人の減刑がなされるとしても、どの道彼女も出て来られない。その結末は僕にとって不満はないものだ」
「そうですね。二人が自由にできないのなら、特に問題はありませんか……」
ギルドルア様とクルレイド様は、向き合ってそんな会話を交わしていた。
そうやって頷き合っている姿は、よく似ている。やはり二人は、兄弟ということなのだろう。
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