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52.野望の終わり
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「弟の言う通りですよ、ランカーソン伯爵。あなたは本当に愚かな人だ」
「……な、何っ?」
クルレイド様の言葉を静かに聞いていたギルドルア様は、少し笑みを浮かべながら言葉を発した。
第二王子の気迫に怯んでいた伯爵は、ギルドルア様の言葉にも体を大きく反応させている。神経が張り詰めているのだろう。その表情は固い。
「私はね、夫人に対してはある程度の敬意を抱いていました。彼女のその身一つで、貴族の世界に混乱をもたらした。その手腕と度胸には、一定の敬意を支払うべきだと思っています。彼女は強敵だったといえるでしょう」
ギルドルア様は、ゆっくりとそう呟いた。
彼の言葉は、恐らく本心なのだろう。その表情が物語っている。
確かに夫人は強かな女性であったといえるだろう。たった一人で、社交界を揺るがした。是非はともかくとして、それはすごいことではある。
「一方であなたは、取るに足らない存在だった。欲に塗れた一介の伯爵、それがあなただ。夫人を貴族にしたり、昔はもう少し知恵があったようだが、今のあなたに対しては微塵も敬意を感じない」
ギルドルア様は、とても冷たい口調だった。
それを聞いて私は理解する。夫人に対しては、まだ温情があったということを。
「もっとも、夫人を貴族の世界に引き入れたことはあなたが犯した重罪の一つだ。これに関して、僕はいささか怒りを覚えている。夫人が増長していったのは、元を辿ればあなたのせいだ。その罪も含めて、あなたには償ってもらう」
「な、なんだと……」
夫人個人にも問題はあったとはいえ、彼女一人であったら問題はここまで大きくはならなかっただろう。
伯爵の過ぎたる欲望によって、貴族の世界は混乱し、夫人の人生も狂ったのだ。その罪は重い。
「ふざけるな! この私がっ……」
「強い言葉を使っても、結果は何も変わらない。あなたの野望もここまでだ」
ギルドルア様は、そこでゆっくりと手を上げた。
するとランカーソン伯爵の周囲に、兵士が現れた。彼を取り押さえようということだろう。
伯爵は、周囲を見渡して驚いている。既に追い詰められていることには、まったく気付いていなかったようだ。
「わ、私を拘束するつもりか? 何の権利があって……」
「連れて行ってくれ」
「はっ!」
ランカーソン伯爵の抗議も聞かずに、兵士達は彼を連れて行く。
彼はこれから、その数々の罪を償うことになるだろう。伯爵の罪は、夫人よりも重い。与えられる罰も当然重くなる。
しかしこれも、彼の自業自得だ。過ぎたる欲望が、ランカーソン伯爵の身を滅ぼしたのである。
「……な、何っ?」
クルレイド様の言葉を静かに聞いていたギルドルア様は、少し笑みを浮かべながら言葉を発した。
第二王子の気迫に怯んでいた伯爵は、ギルドルア様の言葉にも体を大きく反応させている。神経が張り詰めているのだろう。その表情は固い。
「私はね、夫人に対してはある程度の敬意を抱いていました。彼女のその身一つで、貴族の世界に混乱をもたらした。その手腕と度胸には、一定の敬意を支払うべきだと思っています。彼女は強敵だったといえるでしょう」
ギルドルア様は、ゆっくりとそう呟いた。
彼の言葉は、恐らく本心なのだろう。その表情が物語っている。
確かに夫人は強かな女性であったといえるだろう。たった一人で、社交界を揺るがした。是非はともかくとして、それはすごいことではある。
「一方であなたは、取るに足らない存在だった。欲に塗れた一介の伯爵、それがあなただ。夫人を貴族にしたり、昔はもう少し知恵があったようだが、今のあなたに対しては微塵も敬意を感じない」
ギルドルア様は、とても冷たい口調だった。
それを聞いて私は理解する。夫人に対しては、まだ温情があったということを。
「もっとも、夫人を貴族の世界に引き入れたことはあなたが犯した重罪の一つだ。これに関して、僕はいささか怒りを覚えている。夫人が増長していったのは、元を辿ればあなたのせいだ。その罪も含めて、あなたには償ってもらう」
「な、なんだと……」
夫人個人にも問題はあったとはいえ、彼女一人であったら問題はここまで大きくはならなかっただろう。
伯爵の過ぎたる欲望によって、貴族の世界は混乱し、夫人の人生も狂ったのだ。その罪は重い。
「ふざけるな! この私がっ……」
「強い言葉を使っても、結果は何も変わらない。あなたの野望もここまでだ」
ギルドルア様は、そこでゆっくりと手を上げた。
するとランカーソン伯爵の周囲に、兵士が現れた。彼を取り押さえようということだろう。
伯爵は、周囲を見渡して驚いている。既に追い詰められていることには、まったく気付いていなかったようだ。
「わ、私を拘束するつもりか? 何の権利があって……」
「連れて行ってくれ」
「はっ!」
ランカーソン伯爵の抗議も聞かずに、兵士達は彼を連れて行く。
彼はこれから、その数々の罪を償うことになるだろう。伯爵の罪は、夫人よりも重い。与えられる罰も当然重くなる。
しかしこれも、彼の自業自得だ。過ぎたる欲望が、ランカーソン伯爵の身を滅ぼしたのである。
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