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41.招かれた女性

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「マルセア女史、こちらです」
「……ギルドルア殿下、私のような者を王城まで呼び寄せるなんて、あなたも中々に大胆な方ですね」

 初老の女性は、ギルドルア様の前にゆっくりと立った。
 その所作は、どこか艶めかしい。そういう部分は、ランカーソン伯爵夫人と似ているような気もする。
 ただ彼女からは、夫人のように他者を見下すような雰囲気が読み取れない。そういう意味で、二人の間には決定的な違いがある。

「あなたはその道では名の知れた方だ。王城にお呼びするに相応しい方だと、僕などは思ってしまうが」
「まあ、その辺はいいでしょう。ところで、そちらのお二方は? お一人は第二王子クルレイド殿下とお見受けしますが」
「ああ、弟のクルレイドとエルライド侯爵家のレミアナ嬢です」
「これはどうも。私はマルセアと申します。以後、お見知りおきを」

 マルセアと名乗る女性は、私達に対して深々と頭を下げてきた。
 彼女が何者であるのか、未だによくわからない。そのため、私もクルレイド様も困惑してしまう。

「……」

 そこで私は、牢屋の中にいるランカーソン伯爵夫人が固まっていると気付いた。
 彼女はその目を丸くして、マルセアさんを見ている。それは明らかに、知り合いを見る目だ。
 それも二人が、かなり深い関係でなければできない目をしている。それが親しい関係か憎み合っているかはわからないが。

「……なんだい、その顔は? かつての上司に対して、その顔はないだろう」
「マルセア、さん……どうして、あなたがここに……?」
「聞こえてなかったのかい、ギルドルア殿下に呼ばれたんだよ」

 マルセアさんは、懐から煙管を取り出した。
 それを咥えた所で、彼女は私達の方に目を向ける。そしてその煙管を再び懐に戻す。

「失礼しました。つい昔の癖で……私もまだまだ未熟ですね」
「いいえ、お気になさらないでください。それよりも、あなたは一体何者なのですか?」
「……まあ、お二人もそれなりの年ですから、お伝えしてもよろしいでしょうか。私は娼婦でございます」
「娼婦……?」

 マルセアさんの言葉に、私とクルレイド様は顔を見合わせた。
 彼女の言った職業に、疑問を覚えていたからだ。
 その職種が、どういうものであるかは理解している。だが、その職業とランカーソン伯爵夫人が結びつかないのだ。

「兄上、正直言って理解できません。マルセアさんと夫人にはどのような関わりがあるのです」
「簡単なことだ。夫人はかつて、彼女の元で働いていた。元々彼女は、娼婦だったのだ」
「……なんですって?」

 私とクルレイド様は、ギルドルア様の言葉に再び顔を見合わせることになった。
 ますます訳がわからない。一体夫人の過去に、何があったというのだろうか。
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