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33.かつての友人
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「クルレイド様は、ザルバス子爵令息とご友人だったのですか?」
「ええ、友達でした。僕がランカーソン伯爵夫人のことを詳しく知ることになったのも、その件を調べていたからです」
「なるほど、そういうことでしたか……」
クルレイド様の言葉に、私は今までのことを思い出していた。
彼は、ランカーソン伯爵夫人のことをよく知っており、彼女に激しい怒りをぶつけていた。それは既に友人が被害者だったからなのだろう。
それも彼の場合は、恐らく最も悲惨な被害者だ。クルレイド様のランカーソン伯爵夫人を許せないという気持ちは、きっと私達よりも大きなものだろう。
「彼女のことは悪辣だと思っていましたが……まさか、そのような形で被害が出ているなんて」
「……もちろん、ザルバスに悪い所がなかったという訳ではありません。不倫だとわかっていて、夫人の誘いに乗ったことがそもそもの間違いです。彼は愚かだった。しかしそれでも、俺にとっては友人です。その友人をそこまで追いつめた夫人がさらに愚かな行いを続けるというなら、それを止めたい」
クルレイド様にとって、夫人を止めることは弔いでもあるのかもしれない。
その話を聞いて、私の気持ちも少し強くなった。これ以上夫人の被害者を増やさないためにも、一刻も早く対処をしなければならない。
「現状、僕が心から協力してくれると断言できるのは、そのバルガラス子爵だけです。彼も弱みを握られてはいますが、それでも息子の復讐よりは優先しません。ただ、彼を矢面に立たせるのは少々心苦しいですが……」
「……ザルバス子爵令息の名誉が、傷つけられる訳ですからね」
「だが、子爵の協力はとても大きい。こういう考え方は好きではありませんが、同情を誘うことができる」
クルレイド様は、少し苦しそうな顔をしながらそう言った。
かつての友人の死を利用することに、罪悪感を覚えているのだろう。
ただそれでも彼は決意したのだ。それは彼に、王族としての責務があるからなのかもしれない。
「……そういえば、ギルドルア様に今回の件で協力を仰ぐことはできないのでしょうか?」
「兄上、ですか?」
「ええ、彼もランカーソン伯爵夫人のことは忌み嫌っていたようですし、可能性はゼロではないのではありませんか?」
「そうですね……少し声をかけてみましょうか」
そこで私は、もう一人の王族の存在を思い出した。
ギルドルア様、ランカーソン伯爵夫人のことにも詳しかった彼が味方になってくれれば、とても心強い。できれば、こちら側に引き込んでおきたいものである。
「ええ、友達でした。僕がランカーソン伯爵夫人のことを詳しく知ることになったのも、その件を調べていたからです」
「なるほど、そういうことでしたか……」
クルレイド様の言葉に、私は今までのことを思い出していた。
彼は、ランカーソン伯爵夫人のことをよく知っており、彼女に激しい怒りをぶつけていた。それは既に友人が被害者だったからなのだろう。
それも彼の場合は、恐らく最も悲惨な被害者だ。クルレイド様のランカーソン伯爵夫人を許せないという気持ちは、きっと私達よりも大きなものだろう。
「彼女のことは悪辣だと思っていましたが……まさか、そのような形で被害が出ているなんて」
「……もちろん、ザルバスに悪い所がなかったという訳ではありません。不倫だとわかっていて、夫人の誘いに乗ったことがそもそもの間違いです。彼は愚かだった。しかしそれでも、俺にとっては友人です。その友人をそこまで追いつめた夫人がさらに愚かな行いを続けるというなら、それを止めたい」
クルレイド様にとって、夫人を止めることは弔いでもあるのかもしれない。
その話を聞いて、私の気持ちも少し強くなった。これ以上夫人の被害者を増やさないためにも、一刻も早く対処をしなければならない。
「現状、僕が心から協力してくれると断言できるのは、そのバルガラス子爵だけです。彼も弱みを握られてはいますが、それでも息子の復讐よりは優先しません。ただ、彼を矢面に立たせるのは少々心苦しいですが……」
「……ザルバス子爵令息の名誉が、傷つけられる訳ですからね」
「だが、子爵の協力はとても大きい。こういう考え方は好きではありませんが、同情を誘うことができる」
クルレイド様は、少し苦しそうな顔をしながらそう言った。
かつての友人の死を利用することに、罪悪感を覚えているのだろう。
ただそれでも彼は決意したのだ。それは彼に、王族としての責務があるからなのかもしれない。
「……そういえば、ギルドルア様に今回の件で協力を仰ぐことはできないのでしょうか?」
「兄上、ですか?」
「ええ、彼もランカーソン伯爵夫人のことは忌み嫌っていたようですし、可能性はゼロではないのではありませんか?」
「そうですね……少し声をかけてみましょうか」
そこで私は、もう一人の王族の存在を思い出した。
ギルドルア様、ランカーソン伯爵夫人のことにも詳しかった彼が味方になってくれれば、とても心強い。できれば、こちら側に引き込んでおきたいものである。
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