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12.王都の名物
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アルペリオ兄様に関する新事実がわかったが、私達は旅行を続けることにした。
兄様のことは気になるが、私達と彼はもう関わりがない。そんな人のことを気にしても無駄だというのが、ロンダーの意見だ。
その意見には、私も納得している。いつまでもあの人に憧れるのはやめよう。そう思って、私は心機一転旅行を楽しむことにしたのだ。
「ここが、ポルック商会が運営している市です。王都の中でも名物と言って差し支えないものだと思います」
「なるほど、ここが例の市ですか……」
そんな訳で、私達は引き続きクルレイド様に王都を案内してもらっている。
王都の名物と名高い市には、一度是非行ってみたいと思っていた。具体的に買いたいものなどは決まっていないが、色々と見て回ってみるとしよう。
「流石名物だけあって、多くの人達が来ているわね……」
「ああ、各地の貴族も、この市を目的に王都に来るくらいだからね」
周囲を見渡しみると、ちらほら身なりがいい人達がいる。ロンダーも言っている通り、貴族が訪れているのだろう。
その事実も、この市がすごいものであることを表している。プライドが高い貴族がこぞって訪れるということは、それだけ品質がいいものが揃っているということだ。
「おっと……」
「クルレイドさん? どうかしたんですか?」
「いや、見知った顔がいたのさ……あそこを見てみろ」
そこでクルレイド様は、とある方向を指差した。
その先には、一人の女性がいる。背の高い美しい女性だ。
クルレイド様は、その女性を見て表情を歪めている。なんとうか、会いたくなかったという気持ちが伝わってくる。
「クルレイド様、彼女は一体何者なんですか?」
「……レミアナ嬢、あの女性は先程我々が話題にしていた女性です」
「まさか……」
「ええ、ランカーソン伯爵夫人です」
クルレイド様の言葉に、私は驚いていた。
件のランカーソン伯爵夫人が、こんな所にいるなんて思っていなかった。
私は、ゆっくりと息を呑む。突然のことに、思考が追いついて来ない。どうして寄りにもよって、このタイミングで彼女も市を訪れているのだろうか。
「姉上、落ち着いてください。別に気にする必要はありませんよ。あちらはこちらのことを知らないんですから」
「……あら?」
ロンダーの言葉の直後、ランカーソン伯爵夫人がこちらを向いた。
彼女は、笑顔を浮かべながらこちらに近づいてくる。どうやらロンダーの予想に反して、彼女はこちらのことを知っているらしい。
兄様のことは気になるが、私達と彼はもう関わりがない。そんな人のことを気にしても無駄だというのが、ロンダーの意見だ。
その意見には、私も納得している。いつまでもあの人に憧れるのはやめよう。そう思って、私は心機一転旅行を楽しむことにしたのだ。
「ここが、ポルック商会が運営している市です。王都の中でも名物と言って差し支えないものだと思います」
「なるほど、ここが例の市ですか……」
そんな訳で、私達は引き続きクルレイド様に王都を案内してもらっている。
王都の名物と名高い市には、一度是非行ってみたいと思っていた。具体的に買いたいものなどは決まっていないが、色々と見て回ってみるとしよう。
「流石名物だけあって、多くの人達が来ているわね……」
「ああ、各地の貴族も、この市を目的に王都に来るくらいだからね」
周囲を見渡しみると、ちらほら身なりがいい人達がいる。ロンダーも言っている通り、貴族が訪れているのだろう。
その事実も、この市がすごいものであることを表している。プライドが高い貴族がこぞって訪れるということは、それだけ品質がいいものが揃っているということだ。
「おっと……」
「クルレイドさん? どうかしたんですか?」
「いや、見知った顔がいたのさ……あそこを見てみろ」
そこでクルレイド様は、とある方向を指差した。
その先には、一人の女性がいる。背の高い美しい女性だ。
クルレイド様は、その女性を見て表情を歪めている。なんとうか、会いたくなかったという気持ちが伝わってくる。
「クルレイド様、彼女は一体何者なんですか?」
「……レミアナ嬢、あの女性は先程我々が話題にしていた女性です」
「まさか……」
「ええ、ランカーソン伯爵夫人です」
クルレイド様の言葉に、私は驚いていた。
件のランカーソン伯爵夫人が、こんな所にいるなんて思っていなかった。
私は、ゆっくりと息を呑む。突然のことに、思考が追いついて来ない。どうして寄りにもよって、このタイミングで彼女も市を訪れているのだろうか。
「姉上、落ち着いてください。別に気にする必要はありませんよ。あちらはこちらのことを知らないんですから」
「……あら?」
ロンダーの言葉の直後、ランカーソン伯爵夫人がこちらを向いた。
彼女は、笑顔を浮かべながらこちらに近づいてくる。どうやらロンダーの予想に反して、彼女はこちらのことを知っているらしい。
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