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8.やんちゃな部分

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 私とロンダーは、クルレイド様に王都を案内してもらっていた。
 王子に直々に案内してもらえるなんて、すごいことである。第二王子が急に城下を出歩くことになったということで、王城がちょっとした騒ぎになったくらいだ。
 しかし、クルレイド様はそんなことは特に気にしていなかった。そういう少しやんちゃな部分があるのが、この国の第二王子なのだ。

「まあ、普段から時々お忍びで出掛けているからな」
「それは、大丈夫なんですか?」
「大丈夫かどうかは、まあちょっと微妙な所ではあるが……」

 クルレイド様は、少し申し訳なさそうに傍にいる二人の男性を見ていた。
 彼らは第二王子が城下に赴くということになって、一番に駆けつけてきた人達である。恐らく、王子の護衛の責任者なのだろう。
 クルレイド様の言葉に、二人は苦い顔をしている。それはつまり、彼のお忍びでのお出掛けに困っているということなのだろう。

「クルレイド様、正直に言わせていただくと、もう少しお忍びの頻度を下げていただけるとありがたいのですが……」
「いや、民の様子を見るのも王族の務めだろう」
「確かにそれは必要なことですが、あなたが出歩くことがどれだけ危険であるかも理解していただきたい」
「それは、そうなのかもしれないが……」

 若い男性と老齢の男性からそれぞれ攻められて、クルレイド様は二人からゆっくりと目をそらした。一応彼も、申し訳なさなどはあるのだろう。
 ただ、それでも彼はお出掛けを続けている。ということは、彼なりにそれが必要なことだと思っているのだろう。

「まあ、今は細かいことはどうでもいいじゃないか。ロンダーとレミアナ嬢もいるんだし、そういう小言はよしてくれ」
「そうですね。お客様もいることだし、この話は後日致しましょう」
「後日するのか?」
「もちろんですとも」

 若い男性の言葉に、クルレイド様は苦笑いを浮かべていた。
 ただ、二人とも険悪な雰囲気ではない。二人の間には、信頼関係があるのだろう。

「さてと、それじゃあ、まずはここだな」
「ここは、定食屋、ですか?」
「ああ、俺の行きつけの店だ」

 そんなことを話している内に、私達は町の飲食店にやって来ていた。
 そこは明らかに、王族や貴族といった者達が行くような場所ではない。市民の憩いの場といった感じだ。
 こういう所に、私は入ったことがない。そのため、少しわくわくしている。とはいえ、本当に大丈夫なのだろうか。私達のような身分の者達の来訪によって、騒ぎになったりしないといいのだが。
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