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3.婚約破棄を告げられて

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 悪い予感というものに限って当たるものである。アルペリオ兄様に話があると呼び出された私は、そんなことを思っていた。
 目の前にいるアルペリオ兄様は、浮かない顔をしている。それは明らかに、話したくないことを話そうとしているといった感じだ。

「レミアナ、今日君を呼び出したのは他でもない。君との婚約について、話があるんだ」
「アルペリオ兄様、もしかして……」
「ふふ、やはり君にはお見通しか……」

 アルペリオ兄様は、ゆっくりとため息をついた。
 彼が何を言おうとしているのか、私は既に察している。長年の付き合いによって、アルペリオ兄様の考えは大体わかる。

「僕は君との婚約を破棄したいと思っている」

 その言葉を、アルペリオ兄様はすぐに口にした。
 心の準備はしていたものの、いざそう言われると動揺してしまう。
 しかし、私は彼と話をしなければならない。なぜなら、この婚約は二人だけの問題であるという訳ではないからだ。

「アルペリオ兄様……どうして、そんなことを?」
「……君のことは妹としか思えない。そんな君と結婚するなんて無理だ」
「……そうですか」

 アルペリオ兄様の心情は、正にロンダーが懸念していたようなものなのだろう。
 妹と婚約することができない。そういう気持ちは、わからなくもない。
 ただ、だからといって婚約破棄するというのは無茶苦茶だ。結論を出すのが早すぎる。もっと考えるべきことがあるはずだ。

「アルペリオ兄様の気持ちは、わからない訳ではありません。しかしながら、この婚約はアムライド侯爵家とランペシー侯爵家の婚約です。兄様の気持ちだけで、その婚約を破棄していいはずがないでしょう」
「もちろん、それはわかっている。しかしながら、それでも僕はこの婚約を認められない」
「なっ……!」

 私は、強情なアルペリオ兄様に少しだけ驚いていた。
 いくら妹のように思っているからといって、ここまで頑なに婚約破棄するだろうか。
 もちろん、衝動的にそう言ってしまう可能性はある。ただ、ここまで説明しても拒否するのは、いつものアルペリオ兄様らしくはない。

「アルペリオ兄様、どうされたのですか? いつもの兄様なら、もっと理知的なはずです」
「……それは買い被りだ。僕はそんなに強い人間ではない」
「な、何を言っているんですか?」

 私は、アルペリオ兄様に少しだけ失望していた。
 まさか、兄様がここまでわからず屋だとは思っていなかった。しばらく会わない内に、変わってしまったのだろうか。
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