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2.弟の懸念

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「アルペリオさんが、姉上の婚約相手か……」
「ロンダーにとっても、予想外だったの?」
「いや、そういう訳ではないけどね……」

 私は、自分の婚約について弟のロンダーに話していた。
 ロンダーの反応は、なんというか少し悪い。この歯切れの悪さはなんなのだろうか。

「どうかしたの?」
「いや、なんというのだろうか。僕と姉上は実の姉弟ではないだろう?」
「え? ええ、そうだけれど……」

 ロンダーは、いきなり私達の関係性においてとても重大なことを言ってきた。
 アムライド侯爵家には、私以外子供が生まれなかった。そこで、不幸な事故で両親を失ったロンダーが引き取られたのである。
 つまり、私達は実の姉弟ではない。しかしそれは、事実上の関係だ。

「私は、ロンダーのことを弟だと思っているわよ?」
「ああ、僕もだ。姉上のことは姉だと思っている。それ以上でも、それ以下でもない」
「えっと……」

 ロンダーの言葉に、私は少し混乱していた。
 彼が何を伝えたいのか、いまいちわからない。言葉の真意が、見えてこないのだ。

「だけど、僕と姉上は一応結婚することができない訳ではないだろう。万が一の場合などは、そうなる可能性もある」
「まあ、それはそうね」
「そうなることが、別に嫌という訳ではないけれど、僕はできればそうなって欲しくはないと思っている。姉上は姉上だからね」
「なるほど……」

 ロンダーがさらに説明したことによって、私はある程度意図を理解することができてきた。
 要するに彼は、兄のように思っている人と婚約することにを、どう思っているかを聞きたいということなのだろう。

「まあ、確かに思う所がないという訳ではないけれど、でも何も知らない人と婚約するよりはいいもの」
「その相手が僕でも、そう思えるかい?」
「それは……少し微妙な所ね」

 ロンダーからの質問に、私は思わず首を傾げることになった。
 確かに、相手がロンダーになると少しだけ心情が異なってくる。私は彼のことを弟だと思っている。そんな彼と婚約するのは、なんとも言えない気分だ。

「なるほど、ということは姉上にとってアルペリオさんは単なる兄という訳ではないのかな?」
「そ、そうなのかしら? まあ、でもともに暮らしていて、ずっと姉弟として暮らしているあなたとアルペリオ兄様とでは違うのかもしれないわね」
「そうか。それなら安心したよ。二人が変にぎくしゃくしたりしたら、僕も悲しかったからね」

 私の言葉に、ロンダーは笑顔を浮かべていた。
 ただ、私は少しだけ心配になっていた。婚約が決まった時のアルペリオ兄様の反応、あれはもしかしてそういうことだったのだろうか。そう思ってしまったのだ。
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