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38.幸せな未来
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気が付くと、マグナスと結婚してから三年の月日が経っていた。
最初に一年後に離婚すると言われたが、未だその気配はない。恐らく、その機会はもう一生訪れないだろう。私とマグナスは、仲が良い夫婦である。離婚なんてあり得ない。
「まあそれは、少々自信過剰といえるかもしれないけれど……」
「む? どうかしたのか?」
「ああいいえ、なんでもないわ」
私とマグナスは、とある教会を訪れていた。ここには、私達がよく知る人達がいるのだ。
その二人は今、腕の中にある小さな命に夢中だ。そんな二人に、私はそっと声をかける。
「イレーヌ、それにミレイナ、二人にその子を紹介できて嬉しいわ」
「お姉様……ええ、私もとても嬉しく思っています」
「私もです。まあ、私はイレーヌのついでなのでしょうけれど」
「そんなことないわ。あなただって、私の大切な友人だもの」
教会にいるのは、私の妹のイレーヌと例の薬屋の店主ミレイナだ。
色々と事情を考慮されて、ミレイナは執行猶予の身になった。そんな彼女は縁あって、こちらの教会に身を寄せたのだ。
「いやはや、数年の間にここも賑やかになりましたよ」
「神父、色々とありがとうございます。彼女達のことを取り計らってくれて……」
「いえいえ、教会はそういう場所ですからね。それにハワード様にもあなた方にもお世話になっています。その恩を返すのは当然のこと……」
二人はこの教会にて、シスターとして活動している。真面目で勤勉だと、評判であるそうだ。
この二人がここに落ち着いてくれて、本当に良かったと思っている。色々とあったが、ここはいい着地点だったといえるだろう。
「それにしても、本当に可愛いですね。マルティアちゃんは……」
「ええ、私達に抱っこされても、ちっとも泣かないんですね? アラティア様とマグナス様、どちらに似たのでしょうか?」
「人懐っこい所は、間違いなくアラティアに似だ」
「そ、そうなのかしら?」
私達の娘マルティアは、イレーヌの腕の中で笑顔を浮かべている。
彼女は、本当に誰に抱かれてもそんな感じだ。ただその人懐っこさが私由来というのは、本当なのだろうか。私はそんなに、人懐っこい訳ではないと思うのだが。
「この子は将来、どんな子になるのでしょうね……」
「ふふ、それは私達にとって一番の楽しみよ」
「ああ、この子の未来は俺達の希望だ」
彼女は、幸せの象徴のような存在だ。その笑顔を失わせてはならない。その笑顔を守ることこそが、私達の使命なのだ。
そこで私は、マグナスと顔を見合わせた。彼も同じ気持ちであるだろう。
私はこれからも彼とともに歩んでいく。この小さな命を二人で守っていくのだ。その先に待っているのは、きっと幸せな未来であるだろう。
最初に一年後に離婚すると言われたが、未だその気配はない。恐らく、その機会はもう一生訪れないだろう。私とマグナスは、仲が良い夫婦である。離婚なんてあり得ない。
「まあそれは、少々自信過剰といえるかもしれないけれど……」
「む? どうかしたのか?」
「ああいいえ、なんでもないわ」
私とマグナスは、とある教会を訪れていた。ここには、私達がよく知る人達がいるのだ。
その二人は今、腕の中にある小さな命に夢中だ。そんな二人に、私はそっと声をかける。
「イレーヌ、それにミレイナ、二人にその子を紹介できて嬉しいわ」
「お姉様……ええ、私もとても嬉しく思っています」
「私もです。まあ、私はイレーヌのついでなのでしょうけれど」
「そんなことないわ。あなただって、私の大切な友人だもの」
教会にいるのは、私の妹のイレーヌと例の薬屋の店主ミレイナだ。
色々と事情を考慮されて、ミレイナは執行猶予の身になった。そんな彼女は縁あって、こちらの教会に身を寄せたのだ。
「いやはや、数年の間にここも賑やかになりましたよ」
「神父、色々とありがとうございます。彼女達のことを取り計らってくれて……」
「いえいえ、教会はそういう場所ですからね。それにハワード様にもあなた方にもお世話になっています。その恩を返すのは当然のこと……」
二人はこの教会にて、シスターとして活動している。真面目で勤勉だと、評判であるそうだ。
この二人がここに落ち着いてくれて、本当に良かったと思っている。色々とあったが、ここはいい着地点だったといえるだろう。
「それにしても、本当に可愛いですね。マルティアちゃんは……」
「ええ、私達に抱っこされても、ちっとも泣かないんですね? アラティア様とマグナス様、どちらに似たのでしょうか?」
「人懐っこい所は、間違いなくアラティアに似だ」
「そ、そうなのかしら?」
私達の娘マルティアは、イレーヌの腕の中で笑顔を浮かべている。
彼女は、本当に誰に抱かれてもそんな感じだ。ただその人懐っこさが私由来というのは、本当なのだろうか。私はそんなに、人懐っこい訳ではないと思うのだが。
「この子は将来、どんな子になるのでしょうね……」
「ふふ、それは私達にとって一番の楽しみよ」
「ああ、この子の未来は俺達の希望だ」
彼女は、幸せの象徴のような存在だ。その笑顔を失わせてはならない。その笑顔を守ることこそが、私達の使命なのだ。
そこで私は、マグナスと顔を見合わせた。彼も同じ気持ちであるだろう。
私はこれからも彼とともに歩んでいく。この小さな命を二人で守っていくのだ。その先に待っているのは、きっと幸せな未来であるだろう。
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