37 / 38
37.確かめるべきこと
しおりを挟む
父が亡くなり、妹が実子ではないことが判明したことによってカルロム伯爵家は私の夫が継ぐことが決まった。
それは、当然の成り行きではある。しかしながら一つ問題があった。それは私とマグナスとの間にある契約である。
それについて、私は確かめなければならなかった。それはある種のけじめでもある。
「その話か……」
「ええ、あなたがどう思っているのかを聞きたいの……」
私の問いかけに、マグナスはゆっくりとため息をついた。
それは何かを言うために、決意を固めているように見える。
故に私は、彼の言葉を待った。きっと彼は、私が望んでいる言葉を返してくれるだろう。
「……アラティア、こんなことを言うのは勝手かもしれないが、俺は君と離婚したくないと思っている。できることなら、君とこのまま夫婦でいたい」
「それは、どうして?」
「それは俺が、君のことを愛しているからだ。俺は君を手放したくない。今度は本当に、俺の妻になってくれ」
「ええ、もちろん……私は、あなたの妻になりたいと思っているわ」
マグナスの言葉に、私は彼の胸に飛び込んでいた。そんな私を、彼はしっかりと受け止めてくれる。
本当はずっと以前から、そうしたいと思っていた。もしかしたら、彼もそうかもしれない。
私達は、お互いの想いを打ち明けようとしなかった。それは怖かったからだ。その想いを打ち明けて、関係が壊れることが。
だけど、そんなはずはないことなんて、とっくにわかっていた。
私も彼も、想いは同じであることはわかっていたはずだ。
しかしそれでも、踏み込めなかった。それは、私達が弱かったからなのだろう。
「随分と待たせてしまったな……」
「それはお互い様よ」
「そうか……だが、君から言わせてしまった」
「そんなの気にしないで。ただ私の方が事実を確認する必要があったというだけだから。それに、好きだと言ってくれたのはマグナスの方じゃない」
「それは……」
「ああ、言ってなかったわね。私も、あなたのことが好きよ?」
どちらが言い出したとか、そんなことはそれ程重要なことではない。
今重要なのは、私達が本当の夫婦になったということだ。それ以外のことなんて、些細なことでしかないのである。
「マグナス、これから改めてよろしく、ね?」
「……ああ、必ず君を幸せにすると約束しよう」
「ありがとう。あなたなら、絶対にその約束を果たしてくれると信じているわ」
私とマグナスは、ゆっくりと口づけを交わした。
こうして私達は、真の夫婦としてこれからの未来を歩んでいくことになったのだった。
それは、当然の成り行きではある。しかしながら一つ問題があった。それは私とマグナスとの間にある契約である。
それについて、私は確かめなければならなかった。それはある種のけじめでもある。
「その話か……」
「ええ、あなたがどう思っているのかを聞きたいの……」
私の問いかけに、マグナスはゆっくりとため息をついた。
それは何かを言うために、決意を固めているように見える。
故に私は、彼の言葉を待った。きっと彼は、私が望んでいる言葉を返してくれるだろう。
「……アラティア、こんなことを言うのは勝手かもしれないが、俺は君と離婚したくないと思っている。できることなら、君とこのまま夫婦でいたい」
「それは、どうして?」
「それは俺が、君のことを愛しているからだ。俺は君を手放したくない。今度は本当に、俺の妻になってくれ」
「ええ、もちろん……私は、あなたの妻になりたいと思っているわ」
マグナスの言葉に、私は彼の胸に飛び込んでいた。そんな私を、彼はしっかりと受け止めてくれる。
本当はずっと以前から、そうしたいと思っていた。もしかしたら、彼もそうかもしれない。
私達は、お互いの想いを打ち明けようとしなかった。それは怖かったからだ。その想いを打ち明けて、関係が壊れることが。
だけど、そんなはずはないことなんて、とっくにわかっていた。
私も彼も、想いは同じであることはわかっていたはずだ。
しかしそれでも、踏み込めなかった。それは、私達が弱かったからなのだろう。
「随分と待たせてしまったな……」
「それはお互い様よ」
「そうか……だが、君から言わせてしまった」
「そんなの気にしないで。ただ私の方が事実を確認する必要があったというだけだから。それに、好きだと言ってくれたのはマグナスの方じゃない」
「それは……」
「ああ、言ってなかったわね。私も、あなたのことが好きよ?」
どちらが言い出したとか、そんなことはそれ程重要なことではない。
今重要なのは、私達が本当の夫婦になったということだ。それ以外のことなんて、些細なことでしかないのである。
「マグナス、これから改めてよろしく、ね?」
「……ああ、必ず君を幸せにすると約束しよう」
「ありがとう。あなたなら、絶対にその約束を果たしてくれると信じているわ」
私とマグナスは、ゆっくりと口づけを交わした。
こうして私達は、真の夫婦としてこれからの未来を歩んでいくことになったのだった。
21
お気に入りに追加
1,360
あなたにおすすめの小説

今日結婚した夫から2年経ったら出ていけと言われました
四折 柊
恋愛
子爵令嬢であるコーデリアは高位貴族である公爵家から是非にと望まれ結婚した。美しくもなく身分の低い自分が何故? 理由は分からないが自分にひどい扱いをする実家を出て幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱く。ところがそこには思惑があり……。公爵は本当に愛する女性を妻にするためにコーデリアを利用したのだ。夫となった男は言った。「お前と本当の夫婦になるつもりはない。2年後には公爵邸から国外へ出ていってもらう。そして二度と戻ってくるな」と。(いいんですか? それは私にとって……ご褒美です!)

婚約者からの断罪が終わったので北の修道院へバカンスに行ってきます。
四折 柊
恋愛
嫌いな婚約者から冤罪により婚約破棄をされたアンジェリカは北の修道院に送られることになった。その企みは知っていたのでそれを利用することにした。先に手を打って快適に過ごせるように修道院を改修して準備万端にしてバカンスに行く。そこで大好きな人と楽しく過ごすことにしたアンジェリカのお話。
(断罪シーンはありません)前編:アンジェリカ(公爵令嬢) 後編:ラフェエル(従者)となります。※8/6に後日談2を追加しました。

謹んで婚約者候補を辞退いたします
四折 柊
恋愛
公爵令嬢ブリジットは王太子ヴィンセントの婚約者候補の三人いるうちの一人だ。すでに他の二人はお試し期間を経て婚約者候補を辞退している。ヴィンセントは完璧主義で頭が古いタイプなので一緒になれば気苦労が多そうで将来を考えられないからだそうだ。ブリジットは彼と親しくなるための努力をしたが報われず婚約者候補を辞退した。ところがその後ヴィンセントが声をかけて来るようになって……。(えっ?今になって?)傲慢不遜な王太子と実は心の中では口の悪い公爵令嬢のくっつかないお話。全3話。暇つぶしに流し読んで頂ければ幸いです。

冤罪から逃れるために全てを捨てた。
四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)

あなたへの想いを終わりにします
四折 柊
恋愛
シエナは王太子アドリアンの婚約者として体の弱い彼を支えてきた。だがある日彼は視察先で倒れそこで男爵令嬢に看病される。彼女の献身的な看病で医者に見放されていた病が治りアドリアンは健康を手に入れた。男爵令嬢は殿下を治癒した聖女と呼ばれ王城に招かれることになった。いつしかアドリアンは男爵令嬢に夢中になり彼女を正妃に迎えたいと言い出す。男爵令嬢では妃としての能力に問題がある。だからシエナには側室として彼女を支えてほしいと言われた。シエナは今までの献身と恋心を踏み躙られた絶望で彼らの目の前で自身の胸を短剣で刺した…………。(全13話)

【完結】身を引いたつもりが逆効果でした
風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。
一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。
平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません!
というか、婚約者にされそうです!

完結 女性に興味が無い侯爵様 私は自由に生きます。
ヴァンドール
恋愛
私は絵を描いて暮らせるならそれだけで幸せ!
そんな私に好都合な相手が。
女性に興味が無く仕事一筋で冷徹と噂の侯爵様との縁談が。 ただ面倒くさい従妹という令嬢がもれなく
付いてきました。
どうして別れるのかと聞かれても。お気の毒な旦那さま、まさかとは思いますが、あなたのようなクズが女性に愛されると信じていらっしゃるのですか?
石河 翠
恋愛
主人公のモニカは、既婚者にばかり声をかけるはしたない女性として有名だ。愛人稼業をしているだとか、天然の毒婦だとか、聞こえてくるのは下品な噂ばかり。社交界での評判も地に落ちている。
ある日モニカは、溺愛のあまり茶会や夜会に妻を一切参加させないことで有名な愛妻家の男性に声をかける。おしどり夫婦の愛の巣に押しかけたモニカは、そこで虐げられている女性を発見する。
彼女が愛妻家として評判の男性の奥方だと気がついたモニカは、彼女を毎日お茶に誘うようになり……。
八方塞がりな状況で抵抗する力を失っていた孤独なヒロインと、彼女に手を差し伸べ広い世界に連れ出したしたたかな年下ヒーローのお話。
ハッピーエンドです。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID24694748)をお借りしています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる