一年後に離婚すると言われてから三年が経ちましたが、まだその気配はありません。

木山楽斗

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14.真っ直ぐな性格

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 私が連れてきた三人の使用人には、ラナーシャに関する事情をある程度開示した。
 ゲルトさんとメルテナさんは、大方の事情を察していたためかそれ程驚かなかった。ただ問題は、ランパーである。

「……大丈夫だろうか?」
「それはちょっと私にもわかないわね。かなり衝撃を受けていたみたいだし……」

 話を聞いたランパーは、とてもまずいことをしたというような顔をしていた。
 年が近いこともあって、彼はラナーシャに結構砕けた態度をしていた気がする。事実を知って、それをひどく後悔したといった所だろうか。

「まあ、ゲルトさん辺りがフォローしてくれるとは思うから、仕事に支障が出たりすることはないと思うけれど……」
「聞いていた通り、ランパーはかなり真っ直ぐで真面目な性格であるようだな……」
「ええ、そうだけれど。えっと、どなたからそのことを?」
「ああ、ラナーシャから聞いたのだ」

 マグナス様は、私に笑顔を見せながらそう言ってきた。
 ラナーシャの分析は、的確である。確かにランパーは、そんな性格だ。
 やはり彼女は、ランパーの心根を見抜いていたということだろうか。それはなんというか、私としても嬉しい事柄だ。

「年も近いこともあって、ラナーシャも親近感を抱いているのだろうな。他の使用人よりも、もしかしたら心を開くかもしれない」
「ああ、考えてみれば彼女は年上ばかりの職場で働いているのね」
「そういうことになるな。まあ、兄としては少々複雑な気もするが、それでもあの子が交友を広げることは嬉しく思う」

 当然のことながら、マグナス様はラナーシャに他者と普通に交流して欲しいと思っているのだろう。
 以前の彼女は、今よりもっとひどい状態だったと聞く。そこから改善していっているらしいため、ランパーとの交流も一種の治療であるということだろうか。

「相手として、ランパーは適切だと思うわ。あの子は、ちょっとぶっきら棒な所もあるけれど、善良で裏表がないし」
「立派な男であるようだな? あなたが連れてきただけある」
「そう言ってもらえると私としてもありがたいわね」

 嫁ぐにあたって連れてきた三人のことを、私は信頼している。実の親にさえ見向きもされない私にとって、あの三人は数少ない味方であり、尊敬できる人達なのだ。
 あの三人なら、ラナーシャとも上手くやっていけるだろう。時間はかかるかもしれないが、きっと信頼を得られるはずだ。

「さて、それでは我々は我々の役目を果たすとしよう」
「ええ、そうしましょうか」

 マグナス様の言葉に頷いて、私達は仕事を始める。
 こうして私達は、また新しい一日を始めるのだった。
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