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私は、ゆっくりと目を覚ました。
どれくらい眠っていたのだろうか。窓から入って来る日の光から考えると、そこまで長い時間は眠っていないはずである。
「あれ?」
その流れで窓の外を見てみると、よくわからない光景が目に入ってきた。
国王様が複数の女性と話しているのだ。獅子の獣人の女性に囲まれている国王様は、先程とそこまで変わらない表情をしている。だが、その関係性がよくわからない。
見た所、女性達は国王様と同じくらいの年齢だ。この国の貴族の夫人達なのだろうか。
しかし、夫人がこんなに集まって国王様と話すというのもおかしな話である。一体、なんの集会なのだろうか。
「うーん……」
別にそこまで気にする必要がないとかもしれないが、私は何故か妙に引っかかっていた。
あの親しそうに話す獣人達と国王様の関係が、とても気になるのだ。
「えっと……誰か、いますか?」
「……いる」
とりあえず、私は使用人の部屋に繋がる戸を叩いて、呼びかけてみた。
すると、聞いたことがある女性の声が返ってきた。これは、リルビィさんの声だ。どうやら、彼女が待機してくれているらしい。
確か、彼女は護衛だったはずである。何故、ここにいるのだろうか。
「とりあえず、入ってください」
「わかった」
私が許可すると、使用人の待機部屋からリルビィさんがやって来た。
彼女の服は、以前とは違いメイド服である。どうやら、彼女はメイドも兼ねているようだ。
「えっと、リルビィさんが私についてくれているのですか?」
「メイド兼護衛」
「なるほど、両方とも兼ねているのですね」
リルビィさんは、私の護衛も兼ねているらしい。
一人で両方をこなせる彼女は、かなり優秀な人材であるようだ。
二つとも兼ねているなら、とても頼りになる。いざという時、すぐに守ってもらえるのだから、とても心強い。
「基本的には、私がついている」
「そうなのですね。それなら、これからよろしくお願いします」
「任せて……」
リルビィさんがついてくれていることは、個人的にも嬉しいことだった。
彼女は、メーリアの考えを変えてくれた一人だ。そんな人だから、私は彼女に対していい印象を持っている。そんな彼女だから、とても嬉しいのだ。
「えっと、私、喋るの苦手……あまり、丁寧な口調が、できない」
「そうなのですか?」
「兎、声帯なかった。獣人になっても、喋るのが苦手」
「そういうことだったのですね……」
そこで、リルビィさんはその特徴的な喋り方の説明をしてきた。
彼女は途切れ途切れに喋っていたが、それには動物の時の性質が関係していたらしい。
別にそこまで気にしていなかったが、そういう事情があるなら猶更仕方ないことである。
「別に、大丈夫ですよ。気にしないでください」
「ありがとう……」
私の言葉に、リルビィさんは笑顔を見せてくれた。
その笑顔も、とても可愛らしいものである。
どうやら、私は獣人の笑顔に結構弱いようだ。元々動物は嫌いではなかったため、そのように思えるのだろうか。
どれくらい眠っていたのだろうか。窓から入って来る日の光から考えると、そこまで長い時間は眠っていないはずである。
「あれ?」
その流れで窓の外を見てみると、よくわからない光景が目に入ってきた。
国王様が複数の女性と話しているのだ。獅子の獣人の女性に囲まれている国王様は、先程とそこまで変わらない表情をしている。だが、その関係性がよくわからない。
見た所、女性達は国王様と同じくらいの年齢だ。この国の貴族の夫人達なのだろうか。
しかし、夫人がこんなに集まって国王様と話すというのもおかしな話である。一体、なんの集会なのだろうか。
「うーん……」
別にそこまで気にする必要がないとかもしれないが、私は何故か妙に引っかかっていた。
あの親しそうに話す獣人達と国王様の関係が、とても気になるのだ。
「えっと……誰か、いますか?」
「……いる」
とりあえず、私は使用人の部屋に繋がる戸を叩いて、呼びかけてみた。
すると、聞いたことがある女性の声が返ってきた。これは、リルビィさんの声だ。どうやら、彼女が待機してくれているらしい。
確か、彼女は護衛だったはずである。何故、ここにいるのだろうか。
「とりあえず、入ってください」
「わかった」
私が許可すると、使用人の待機部屋からリルビィさんがやって来た。
彼女の服は、以前とは違いメイド服である。どうやら、彼女はメイドも兼ねているようだ。
「えっと、リルビィさんが私についてくれているのですか?」
「メイド兼護衛」
「なるほど、両方とも兼ねているのですね」
リルビィさんは、私の護衛も兼ねているらしい。
一人で両方をこなせる彼女は、かなり優秀な人材であるようだ。
二つとも兼ねているなら、とても頼りになる。いざという時、すぐに守ってもらえるのだから、とても心強い。
「基本的には、私がついている」
「そうなのですね。それなら、これからよろしくお願いします」
「任せて……」
リルビィさんがついてくれていることは、個人的にも嬉しいことだった。
彼女は、メーリアの考えを変えてくれた一人だ。そんな人だから、私は彼女に対していい印象を持っている。そんな彼女だから、とても嬉しいのだ。
「えっと、私、喋るの苦手……あまり、丁寧な口調が、できない」
「そうなのですか?」
「兎、声帯なかった。獣人になっても、喋るのが苦手」
「そういうことだったのですね……」
そこで、リルビィさんはその特徴的な喋り方の説明をしてきた。
彼女は途切れ途切れに喋っていたが、それには動物の時の性質が関係していたらしい。
別にそこまで気にしていなかったが、そういう事情があるなら猶更仕方ないことである。
「別に、大丈夫ですよ。気にしないでください」
「ありがとう……」
私の言葉に、リルビィさんは笑顔を見せてくれた。
その笑顔も、とても可愛らしいものである。
どうやら、私は獣人の笑顔に結構弱いようだ。元々動物は嫌いではなかったため、そのように思えるのだろうか。
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