没落寸前でしたが、先祖の遺産が見つかったおかげで持ち直すことができました。私を見捨てた皆さん、今更手のひらを返しても遅いのです。

１５

　地下室で見つかった金塊のおかげで、子爵家の借金や退職金、さらには慰謝料まで解決することができた。
　ただ、退職金については一部払っていない。あの時、あの場に残ってくれた人達には、再雇用することにしたからである。

「どうか、俺達も雇ってくれませんかね？」
「あの時は、どうかしていたんです」
「申し訳ありませんが、あなた達をまた雇うつもりはありません」

　しかし、困ったことがあった。
　それは、あの時私を罵倒してきた者達が、再度雇ってもらいたいと言ってきたことだ。
　今回の件は、アルファンド子爵家の不手際によるものである。そのため、本来なら彼らも再雇用するべきなのかもしれない。
　だが、あれだけ言っておいて、今更手のひらを返されるというのは、とても腹が立つことだ。故に、私は彼らを再雇用したくないと思っている。

「お願いしますよ、どうか……」
「あなた達には、こちらで仕事を斡旋して差し上げます。ですから、どうかお引き取りください」
「いや、子爵家での仕事に勝るものは……」
「……」

　ただ、彼らはとても食い下がってきた。その理由はわかっている。環境的にも給料的にも、貴族の屋敷に勝る仕事など中々ないからだ。
　しかし、いくら私でもこの人達を子爵家の敷地にもう一度入れたいとは思わない。

「お言葉ですが、あなた達は私に何を言ったか覚えていますか？」
「い、いや、それは……」
「散々罵倒しておいて、今更帰ってこようなんて、随分虫がよろしいのですね？　あまり言いたくありませんが、こちらとしてはあなた達が言ったことを広めることもできるのですよ？　平民のあなた達が貴族の私にあんなことを言った。それが知らされると、どうなると思います？」
「そ、そんな、ひどい……」

　私は思わず怒っていた。
　これが、あまりいいことではないことはわかっている。だが、流石に我慢の限界だったのだ。
　根本的なことではあるが、私は彼らよりも身分が上である。そんな私が今まで下手に出ていたのは、彼らに悪いと思う気持ちがあったからだ。
　しかし、そんな彼らは私のことを金づるくらいにしか思っていない。あの時のことを謝りもせず、また雇ってくれなんて、虫が良すぎる。それは私の素直な気持ちだ。

「言っておきますが、私はこれでも譲歩しています。次の仕事を斡旋しようとまで言っているのですよ？　それすらも受けたくないというなら、話は別ですが………そうでないなら、どうぞお引き取りください」
「……くそっ」

　私を罵倒していた者達は、不機嫌そうに私の前から去っていった。
　どうして、この期に及んで不機嫌になられなければならないのだろうか。正直、まったく意味がわからない。
　こうして、私は使用人だった人達との話をつけるのだった。