悪役令嬢と攻略対象(推し)の娘に転生しました。~前世の記憶で夫婦円満に導きたいと思います~

木山楽斗

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27.この誓いを

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「……いやあ、なんというか話がまとまって良かったです」
「む?」
「あら?」

 私とお父様とお母様は、三人でしばらく抱き合っていた。
 私が泣き止んでお父様とお母様が体を離した時、クローシャさんの声が聞こえてきて、私達はそれぞれ顔を見合わせる。

「ご、ごめんなさい、クローシャさん」
「すみません。あなたのことを放っておいて……」
「あ、いえ、お構いなく。私は、使用人の身ですので」

 クローシャさんは、ずっと静かにしてくれていた。
 多分、大分気まずかっただろう。どうしていいか、わからなかったはずだ。
 それでも待ってくれた彼女には、感謝と申し訳なさでいっぱいである。

「クローシャさん、ごめんなさい。でも、もう一つだけお願いさせてください」
「はい、奥様。なんでしょうか?」
「実は、私と夫は誓いを立てようと思っていたんですけど、なんだか気恥ずかしくて……ですから、ここは形式に沿ってやりたいんです」
「なるほど……そういうことでしたら、僭越ながら私が」
「話が早くて助かります」

 クローシャさんは、一礼してからお父様とお母様の間に立った。
 意図が理解できたのか、お父様はお母様の方を向く。私も意図はわかったので、静かに成り行きを見守ることにする。

「ええ、それではファルクス様、あなたはアルティリア様を妻として愛することを誓いますか?」
「……はい、誓います」
「それではアルティリア様、あなたはファルクス様を夫として愛することを誓いますか?」
「はい、誓います」

 クローシャさんの言葉に、お父様もお母様も力強く頷いた。
 二人がお互いに愛し合っている。その事実に私はまた涙を流しそうになった。
 でも、今は泣いている場合ではない。きちんと、二人の誓いを見届けなければならない。

「それでは、誓いのキスを……」
「はい……」
「……んっ」

 お父様とお母様の唇が、ゆっくりと重なった。
 私は、拍手をする。この誓いを知っているのは、クローシャさんと私だけだ。クローシャさんは、ああいう立場なので、招待客は私だけだといえるだろう。
 私は絶対にこの日のことを忘れない。お父様とお母様が、本当に夫婦となったこの日を私は絶対に忘れてはならないのだ。私は二人の娘なのだから。

「よし……それでは、ファルミルの部屋に帰ろうか」
「ええ、そうですね。クローシャさん、ありがとうございました」
「お役に立てたなら幸いです」
「ファルミル、行こうか?」
「はい!」

 私は、お父様とお母様とそれぞれ手を繋ぐ。
 こうして、私達は私の部屋へと戻るのだった。
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