悪役令嬢と攻略対象(推し)の娘に転生しました。~前世の記憶で夫婦円満に導きたいと思います~

木山楽斗

文字の大きさ
上 下
25 / 38

25.目覚めた時には

しおりを挟む
「……ファルミルお嬢様、もしかして起きていますか?」
「……あ、わかりましたか?」

 お父様がベッドから抜け出して、ベランダに行ってお母様と帰って来て、メイドのクローシャさんが来て二人が部屋から出て行くという過程を私は知っていた。
 お父様がベッドから出た辺りで目が覚めたのだが、雰囲気的になんとなく眠っておいた方がいいと思い、狸寝入りしていたのだが、クローシャさんに見抜かれてしまったらしい。

「クローシャさん、お父様とお母様はどうされましたか?」
「それは、私にもよくわかりません。ファルクス様の部屋で、二人でお話をするそうです。でも、なんだかいい雰囲気でしたよ」
「いい雰囲気?」
「恋人同士みたいだったというべきでしょうか」
「あ、そうなんですね……」

 私が体を起こすと、クローシャさんが明かりをつけてくれた。
 時間的にはまだまだ夜であるが、正直まったく眠る気にはなれない。

「寝る前から、いい雰囲気ではあったんですよね。というか、この部屋に来た時から、いい感じでした」
「そうなんですね……なんだか意外です。お二人は、お互いに興味がないと思っていたので……あ、すみません。ファルミルお嬢様の前でこんなことを言うべきではありませんよね」
「いえ、大丈夫です。多分、誰が見てもそう感じることですから。私も、少し前まではそう思っていました」
「そうなんですか?」
「はい。でも、どうやら違ったみたいです。お互いに複雑な思いを抱いていたみたいです」

 私の言葉に、クローシャさんは驚いたような顔をしていた。
 それに苦笑いを浮かべながら、私は考える。お父様とお母様は、一体何の話をしているのだろうか。
 可能性として考えらえるのは、愛の告白などだ。今日の雰囲気から考えると、その可能性は高いような気がする。

「クローシャさん、お願いを聞いてもらっていいですか?」
「お願い? はい、私に叶えられることなら」
「お父様の部屋の前まで連れて行ってもらえませんか?」
「え? それは、どういうことですか?」
「気になるんです。お父様とお母様のことが」
「まあ、お気持ちはわかりますが」

 私のお願いに、クローシャさんは微妙な顔をした。
 確かに、盗み聞きはよくないかもしれない。だが、少なくとも私にはそれを聞く権利くらいはあると思うのだ。

「お父様とお母様の仲が拗れていたせいで、私はたくさん辛い思いをしてきました。盗み聞きはよくないことかもしれませんが、娘である私には知る権利があると思います」
「まあ、確かにお嬢様は辛い思いをされていましたよね……その主張には、一理あると思います」
「ですから、連れて行ってくれませんか? ……あ、連れて行ってください。と私が命令したということにすれば、問題ありませんよね」
「……仕方ありませんね。それでは、行きましょうか」

 クローシャさんは、私の言葉に頷いてから近くにあったコップを手に取った。
 話が分かる人で良かったとは思うのだが、どうしてコップを手に取ったのだろうか。それがわからない。

「クローシャさん、喉でも乾いたんですか?」
「いえ、これをドアにつけてですね」
「え? ああ、なるほど……結構ノリノリですね」
「乗りかかると決めた以上は、最大限に協力しますよ。あ、でも、先に私に中の様子をお聞かせください。聞いてはいけない会話である可能性もありますので」
「あーあ、もしもそうだったら帰ってきましょう。その場合は、何もなかったということにしてくださいね」
「もちろんです」

 私は、クローシャさんの手を取ってベッドから下りる。
 こうして私達は、お父様の部屋の前まで向かったのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄をいたしましょう。

見丘ユタ
恋愛
悪役令嬢である侯爵令嬢、コーデリアに転生したと気づいた主人公は、卒業パーティーの婚約破棄を回避するために奔走する。 しかし無慈悲にも卒業パーティーの最中、婚約者の王太子、テリーに呼び出されてしまうのだった。

悪役令嬢に転生したら手遅れだったけど悪くない

おこめ
恋愛
アイリーン・バルケスは断罪の場で記憶を取り戻した。 どうせならもっと早く思い出せたら良かったのに! あれ、でも意外と悪くないかも! 断罪され婚約破棄された令嬢のその後の日常。 ※うりぼう名義の「悪役令嬢婚約破棄諸々」に掲載していたものと同じものです。

悪役令嬢の居場所。

葉叶
恋愛
私だけの居場所。 他の誰かの代わりとかじゃなく 私だけの場所 私はそんな居場所が欲しい。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ※誤字脱字等あれば遠慮なく言ってください。 ※感想はしっかりニヤニヤしながら読ませて頂いています。 ※こんな話が見たいよ!等のリクエストも歓迎してます。 ※完結しました!番外編執筆中です。

転生悪役令嬢は冒険者になればいいと気が付いた

よーこ
恋愛
物心ついた頃から前世の記憶持ちの悪役令嬢ベルティーア。 国の第一王子との婚約式の時、ここが乙女ゲームの世界だと気が付いた。 自分はメイン攻略対象にくっつく悪役令嬢キャラだった。 はい、詰んだ。 将来は貴族籍を剥奪されて国外追放決定です。 よし、だったら魔法があるこのファンタジーな世界を満喫しよう。 国外に追放されたら冒険者になって生きるぞヒャッホー!

転生侍女は完全無欠のばあやを目指す

ロゼーナ
恋愛
十歳のターニャは、前の「私」の記憶を思い出した。そして自分が乙女ゲーム『月と太陽のリリー』に登場する、ヒロインでも悪役令嬢でもなく、サポートキャラであることに気付く。侍女として生涯仕えることになるヒロインにも、ゲームでは悪役令嬢となってしまう少女にも、この世界では不幸になってほしくない。ゲームには存在しなかった大団円エンドを目指しつつ、自分の夢である「完全無欠のばあやになること」だって、絶対に叶えてみせる! *三十話前後で完結予定、最終話まで毎日二話ずつ更新します。 (本作は『小説家になろう』『カクヨム』にも投稿しています)

立派な王太子妃~妃の幸せは誰が考えるのか~

矢野りと
恋愛
ある日王太子妃は夫である王太子の不貞の現場を目撃してしまう。愛している夫の裏切りに傷つきながらも、やり直したいと周りに助言を求めるが‥‥。 隠れて不貞を続ける夫を見続けていくうちに壊れていく妻。 周りが気づいた時は何もかも手遅れだった…。 ※設定はゆるいです。

困りました。縦ロールにさよならしたら、逆ハーになりそうです。《改訂版》

新 星緒
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢アニエス(悪質ストーカー)に転生したと気づいたけれど、心配ないよね。だってフラグ折りまくってハピエンが定番だもの。 趣味の悪い縦ロールはやめて性格改善して、ストーカーしなければ楽勝楽勝! ……って、あれ? 楽勝ではあるけれど、なんだか思っていたのとは違うような。 想定外の逆ハーレムを解消するため、イケメンモブの大公令息リュシアンと協力関係を結んでみた。だけどリュシアンは、「惚れた」と言ったり「からかっただけ」と言ったり、意地悪ばかり。嫌なヤツ! でも実はリュシアンは訳ありらしく……

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

処理中です...