80 / 84
第80話 認めない者達に
しおりを挟む
私とロクス様は、ラプレノス家の屋敷で二人の人間と対峙していた。
現当主ボルガム様とその長男にオーガイム様。今回の件の元凶達である。
「それで、ムルルがあなた達の血族ということに間違いはありませんか?」
「そのような事実は、一切ございません。そうだろう? オーガイム?」
「ええ、もちろんです。セレンティナ様、ロクス様、そのような事実はありません。一村娘の戯言に過ぎないということです」
私の質問に対して、二人はそのようにはぐらかしてきた。
ここに来て、話を始めても、二人はそのような態度を崩さなかった。あくまでも、そのような事実はないということで突き通すつもりらしい。
「それでは、質問を変えましょうか? ムルルという少女が、村人から差別を受けているという事実はご存知でしたか?」
「それも、私達の耳には入っていませんね。村人達が上手く隠していたということでしょう」
私は、質問を変えてみることにした。
ムルルが、ラプレノス家の隠し子でなかったとしても、彼女を放っておいたことは問題である。
だが、ボルガム様はその事実すら知らないと言った。どうやら、本当に何も知らなかったで通すつもりらしい。
どうやら、彼等は一つ勘違いをしているようだ。まだ、なんとかなる。そのような甘え考え方をしているようだ。
「一つ言っておきます」
「は、はい?」
そんな彼等に色々と言おうと思った私だったが、先にロクス様が口を開いていた。
その静かな声に、ボルガム様とオーガイム様は怯んでいた。ロクス様の声は、それ程までに恐ろしいものだったのである。
「叩き潰す」
ロクス様は、一言だけそう呟いた。
無駄な説明は、一切ない。簡潔に、これから起こる事実を伝えたのだ。
何も知らないと惚ける貴族に対して、ロクス様はそのような結論を出したのである。
公爵家からの宣戦布告。それは、子爵家の二人にとって、中々絶望的なものだろう。
「セレンティナ様、これ以上の話は無駄なようです。彼等は、事実を知らなかった。そういう主張のようですからね」
「ロクス様……」
「また改めて伺うとしましょう。物的証拠がある訳ではありませんし、これ以上は水掛け論になりそうです」
私に対して、ロクス様はそのように言ってきた。
確かに、このまま話しても時間の無駄である。改めて出直してもいいのかもしれない。
それにしても、ロクス様は相当怒っているようだ。もちろん、頑なに事実を認めなかった彼等に対して、そのような怒りを覚えることは理解できる。
しかし、あくまで冷静にして欲しいと言ったのに、それが守れていない。そこは、ロクス様にしては珍しいことである。
最も、私も結構すっきりしたので、別にいい気がしてきた。別に、あの言葉一つくらいなら、大事にもならないだろう。そもそも、ロクス様はヴァンデイン家の人間なので、聖女の業務的にはそこまで関係ない。恐らく、大事にはならないだろう。
こうして、私達はラプレノス家の屋敷を後にするのだった。
現当主ボルガム様とその長男にオーガイム様。今回の件の元凶達である。
「それで、ムルルがあなた達の血族ということに間違いはありませんか?」
「そのような事実は、一切ございません。そうだろう? オーガイム?」
「ええ、もちろんです。セレンティナ様、ロクス様、そのような事実はありません。一村娘の戯言に過ぎないということです」
私の質問に対して、二人はそのようにはぐらかしてきた。
ここに来て、話を始めても、二人はそのような態度を崩さなかった。あくまでも、そのような事実はないということで突き通すつもりらしい。
「それでは、質問を変えましょうか? ムルルという少女が、村人から差別を受けているという事実はご存知でしたか?」
「それも、私達の耳には入っていませんね。村人達が上手く隠していたということでしょう」
私は、質問を変えてみることにした。
ムルルが、ラプレノス家の隠し子でなかったとしても、彼女を放っておいたことは問題である。
だが、ボルガム様はその事実すら知らないと言った。どうやら、本当に何も知らなかったで通すつもりらしい。
どうやら、彼等は一つ勘違いをしているようだ。まだ、なんとかなる。そのような甘え考え方をしているようだ。
「一つ言っておきます」
「は、はい?」
そんな彼等に色々と言おうと思った私だったが、先にロクス様が口を開いていた。
その静かな声に、ボルガム様とオーガイム様は怯んでいた。ロクス様の声は、それ程までに恐ろしいものだったのである。
「叩き潰す」
ロクス様は、一言だけそう呟いた。
無駄な説明は、一切ない。簡潔に、これから起こる事実を伝えたのだ。
何も知らないと惚ける貴族に対して、ロクス様はそのような結論を出したのである。
公爵家からの宣戦布告。それは、子爵家の二人にとって、中々絶望的なものだろう。
「セレンティナ様、これ以上の話は無駄なようです。彼等は、事実を知らなかった。そういう主張のようですからね」
「ロクス様……」
「また改めて伺うとしましょう。物的証拠がある訳ではありませんし、これ以上は水掛け論になりそうです」
私に対して、ロクス様はそのように言ってきた。
確かに、このまま話しても時間の無駄である。改めて出直してもいいのかもしれない。
それにしても、ロクス様は相当怒っているようだ。もちろん、頑なに事実を認めなかった彼等に対して、そのような怒りを覚えることは理解できる。
しかし、あくまで冷静にして欲しいと言ったのに、それが守れていない。そこは、ロクス様にしては珍しいことである。
最も、私も結構すっきりしたので、別にいい気がしてきた。別に、あの言葉一つくらいなら、大事にもならないだろう。そもそも、ロクス様はヴァンデイン家の人間なので、聖女の業務的にはそこまで関係ない。恐らく、大事にはならないだろう。
こうして、私達はラプレノス家の屋敷を後にするのだった。
1
お気に入りに追加
3,067
あなたにおすすめの小説
聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~
白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。
王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。
彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。
#表紙絵は、もふ様に描いていただきました。
#エブリスタにて連載しました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
婚約破棄、果てにはパーティー追放まで!? 事故死を望まれた私は、第2王子に『聖女』の力を見出され性悪女にざまぁします
アトハ
恋愛
「マリアンヌ公爵令嬢! これ以上貴様の悪行を見過ごすことはできん! 我が剣と誇りにかけて、貴様を断罪する!」
王子から突如突き付けられたのは、身に覚えのない罪状、そして婚約破棄。
更にはモンスターの蔓延る危険な森の中で、私ことマリアンヌはパーティーメンバーを追放されることとなりました。
このまま私がモンスターに襲われて"事故死"すれば、想い人と一緒になれる……という、何とも身勝手かつ非常識な理由で。
パーティーメンバーを追放された私は、森の中で鍋をかき混ぜるマイペースな変人と出会います。
どうにも彼は、私と殿下の様子に詳しいようで。
というかまさか第二王子じゃないですか?
なんでこんなところで、パーティーも組まずにのんびり鍋を食べてるんですかね!?
そして私は、聖女の力なんて持っていないですから。人違いですから!
※ 他の小説サイト様にも投稿しています
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
《完結》国を追放された【聖女】は、隣国で天才【錬金術師】として暮らしていくようです
黄舞
恋愛
精霊に愛された少女は聖女として崇められる。私の住む国で古くからある習わしだ。
驚いたことに私も聖女だと、村の皆の期待を背に王都マーベラに迎えられた。
それなのに……。
「この者が聖女なはずはない! 穢らわしい!」
私よりも何年も前から聖女として称えられているローザ様の一言で、私は国を追放されることになってしまった。
「もし良かったら同行してくれないか?」
隣国に向かう途中で命を救ったやり手の商人アベルに色々と助けてもらうことに。
その隣国では精霊の力を利用する技術を使う者は【錬金術師】と呼ばれていて……。
第五元素エーテルの精霊に愛された私は、生まれた国を追放されたけれど、隣国で天才錬金術師として暮らしていくようです!!
この物語は、国を追放された聖女と、助けたやり手商人との恋愛話です。
追放ものなので、最初の方で3話毎にざまぁ描写があります。
薬の効果を示すためにたまに人が怪我をしますがグロ描写はありません。
作者が化学好きなので、少し趣味が出ますがファンタジー風味を壊すことは無いように気を使っています。
他サイトでも投稿しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
二周目聖女は恋愛小説家! ~探されてますが、前世で断罪されたのでもう名乗り出ません~
今川幸乃
恋愛
下級貴族令嬢のイリスは聖女として国のために祈りを捧げていたが、陰謀により婚約者でもあった王子アレクセイに偽聖女であると断罪されて死んだ。
こんなことなら聖女に名乗り出なければ良かった、と思ったイリスは突如、聖女に名乗り出る直前に巻き戻ってしまう。
「絶対に名乗り出ない」と思うイリスは部屋に籠り、怪しまれないよう恋愛小説を書いているという嘘をついてしまう。
が、嘘をごまかすために仕方なく書き始めた恋愛小説はなぜかどんどん人気になっていく。
「恥ずかしいからむしろ誰にも読まれないで欲しいんだけど……」
一方そのころ、本物の聖女が現れないため王子アレクセイらは必死で聖女を探していた。
※序盤の断罪以外はギャグ寄り。だいぶ前に書いたもののリメイク版です
【完結】無能な聖女はいらないと婚約破棄され、追放されたので自由に生きようと思います
黒幸
恋愛
辺境伯令嬢レイチェルは学園の卒業パーティーでイラリオ王子から、婚約破棄を告げられ、国外追放を言い渡されてしまう。
レイチェルは一言も言い返さないまま、パーティー会場から姿を消した。
邪魔者がいなくなったと我が世の春を謳歌するイラリオと新たな婚約者ヒメナ。
しかし、レイチェルが国からいなくなり、不可解な事態が起き始めるのだった。
章を分けるとかえって、ややこしいとの御指摘を受け、章分けを基に戻しました。
どうやら、作者がメダパニ状態だったようです。
表紙イラストはイラストAC様から、お借りしています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
「僕より強い奴は気に入らない」と殿下に言われて力を抑えていたら婚約破棄されました。そろそろ本気出してもよろしいですよね?
今川幸乃
恋愛
ライツ王国の聖女イレーネは「もっといい聖女を見つけた」と言われ、王太子のボルグに聖女を解任されて婚約も破棄されてしまう。
しかしイレーネの力が弱かったのは依然王子が「僕より強い奴は気に入らない」と言ったせいで力を抑えていたせいであった。
その後賊に襲われたイレーネは辺境伯の嫡子オーウェンに助けられ、辺境伯の館に迎えられて伯爵一族並みの厚遇を受ける。
一方ボルグは当初は新しく迎えた聖女レイシャとしばらくは楽しく過ごすが、イレーネの加護を失った王国には綻びが出始め、隣国オーランド帝国の影が忍び寄るのであった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】恋を忘れた伯爵は、恋を知らない灰かぶり令嬢を拾う
白雨 音
恋愛
男爵令嬢ロザリーンは、母を失って以降、愛を感じた事が無い。
父は人が変わったかの様に冷たくなり、何の前置きも無く再婚してしまった上に、
再婚相手とその娘たちは底意地が悪く、ロザリーンを召使として扱った。
義姉には縁談の打診が来たが、自分はデビュタントさえして貰えない…
疎外感や孤独に苛まれ、何の希望も見出せずにいた。
義姉の婚約パーティの日、ロザリーンは侍女として同行したが、家族の不興を買い、帰路にて置き去りにされてしまう。
パーティで知り合った少年ミゲルの父に助けられ、男爵家に送ると言われるが、
家族を恐れるロザリーンは、自分を彼の館で雇って欲しいと願い出た___
異世界恋愛:短めの長編(全24話) ※魔法要素無し。
《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆
偽聖女の汚名を着せられ婚約破棄された元聖女ですが、『結界魔法』がことのほか便利なので魔獣の森でもふもふスローライフ始めます!
南田 此仁
恋愛
「システィーナ、今この場をもっておまえとの婚約を破棄する!」
パーティー会場で高らかに上がった声は、数瞬前まで婚約者だった王太子のもの。
王太子は続けて言う。
システィーナの妹こそが本物の聖女であり、システィーナは聖女を騙った罪人であると。
突然婚約者と聖女の肩書きを失ったシスティーナは、国外追放を言い渡されて故郷をも失うこととなった。
馬車も従者もなく、ただ一人自分を信じてついてきてくれた護衛騎士のダーナンとともに馬に乗って城を出る。
目指すは西の隣国。
八日間の旅を経て、国境の門を出た。しかし国外に出てもなお、見届け人たちは後をついてくる。
魔獣の森を迂回しようと進路を変えた瞬間。ついに彼らは剣を手に、こちらへと向かってきた。
「まずいな、このままじゃ追いつかれる……!」
多勢に無勢。
窮地のシスティーナは叫ぶ。
「魔獣の森に入って! 私の考えが正しければ、たぶん大丈夫だから!」
■この三連休で完結します。14000文字程度の短編です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる