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第70話 村への同行者
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私は、馬車に乗ってアモルの村に向かっていた。
今回は、聖女の才能を持っている少女に会いに行くことになっている。
これは、聖女としての仕事の一環だ。だが、この馬車の中には聖女の仕事とあまり関係がない人も乗っている。
「本当に、僕がここにいてもいいのでしょうか……」
「大丈夫です。安心してください」
この馬車には、ロクス様も乗っていた。
色々な事情から、ロクス様も同行してもらうことになったのだ。
「ロクス様に同行してもらっているのには、正当な理由があります」
「正当な理由ですか……」
今回は、ロクス様に同行してもらうために、きちんとした理由があった。
それは、今回の村にいる少女が受けている扱いに関することだ。
「今回の村では、一人の少女がひどい扱いを受けています。そんなことになっているというなら、その地域を管理している貴族の管理不届きだとは思いませんか? 村ぐるみでの迫害ですよ? それを把握していない訳がありません。それで見てみぬ振りをしているのは、許されることではないはずです」
「管理不届きですか……確かに、そういう見方ができない訳ではないと思いますが」
「そこで、一貴族の意見が欲しいと思い、ロクス様にその村の様子を評価してもらいたいのです」
ロクス様に同行してもらっているのは、そのような理由だった。
恐らく、今から行く村は色々と歪んでしまっている。そういう歪みを正すのは、その地を管理する貴族の役目だ。
しかし、聞いた所、村を領地としている貴族は何もしていないらしい。調査員が行って気づくようなことを、貴族が気づかない訳がないだろう。つまり、見てみぬ振りをしているのだ。
そういう貴族を正すのも、今回の役目としている。そのために、貴族の一人であるロクス様を呼んだのだ。
「でも、どうして僕を?」
「私が一番信頼できる貴族だからです」
「そういうのは、職権乱用とは言わないのでしょうか?」
「こんなことで職権乱用と言われたら、やっていられませんよ」
ロクス様は、少し気まずそうにしている。
それは当然だ。私が呼び出した時点で、そこには個人的な意思が宿っている。誠実なロクス様がそれを気まずく思うのは、当たり前のことだ。
だが、そんなことは気にしていられない。他の貴族だと聖女の仕事の邪魔になることもあるので、信頼できるロクス様に来てもらうのが一番だったのである。
「前々から思っていましたが、セレンティナ様はそういう所は本当にしたたかですね」
「そうですか? そうかもしれませんね」
ロクス様は、私の考え方に少し呆れているようだった。
誠実なロクス様にとって、こういう考え方はできないのだろう。そういう所も、ロクス様の魅力的な所かもしれない。
今回は、聖女の才能を持っている少女に会いに行くことになっている。
これは、聖女としての仕事の一環だ。だが、この馬車の中には聖女の仕事とあまり関係がない人も乗っている。
「本当に、僕がここにいてもいいのでしょうか……」
「大丈夫です。安心してください」
この馬車には、ロクス様も乗っていた。
色々な事情から、ロクス様も同行してもらうことになったのだ。
「ロクス様に同行してもらっているのには、正当な理由があります」
「正当な理由ですか……」
今回は、ロクス様に同行してもらうために、きちんとした理由があった。
それは、今回の村にいる少女が受けている扱いに関することだ。
「今回の村では、一人の少女がひどい扱いを受けています。そんなことになっているというなら、その地域を管理している貴族の管理不届きだとは思いませんか? 村ぐるみでの迫害ですよ? それを把握していない訳がありません。それで見てみぬ振りをしているのは、許されることではないはずです」
「管理不届きですか……確かに、そういう見方ができない訳ではないと思いますが」
「そこで、一貴族の意見が欲しいと思い、ロクス様にその村の様子を評価してもらいたいのです」
ロクス様に同行してもらっているのは、そのような理由だった。
恐らく、今から行く村は色々と歪んでしまっている。そういう歪みを正すのは、その地を管理する貴族の役目だ。
しかし、聞いた所、村を領地としている貴族は何もしていないらしい。調査員が行って気づくようなことを、貴族が気づかない訳がないだろう。つまり、見てみぬ振りをしているのだ。
そういう貴族を正すのも、今回の役目としている。そのために、貴族の一人であるロクス様を呼んだのだ。
「でも、どうして僕を?」
「私が一番信頼できる貴族だからです」
「そういうのは、職権乱用とは言わないのでしょうか?」
「こんなことで職権乱用と言われたら、やっていられませんよ」
ロクス様は、少し気まずそうにしている。
それは当然だ。私が呼び出した時点で、そこには個人的な意思が宿っている。誠実なロクス様がそれを気まずく思うのは、当たり前のことだ。
だが、そんなことは気にしていられない。他の貴族だと聖女の仕事の邪魔になることもあるので、信頼できるロクス様に来てもらうのが一番だったのである。
「前々から思っていましたが、セレンティナ様はそういう所は本当にしたたかですね」
「そうですか? そうかもしれませんね」
ロクス様は、私の考え方に少し呆れているようだった。
誠実なロクス様にとって、こういう考え方はできないのだろう。そういう所も、ロクス様の魅力的な所かもしれない。
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