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第56話 動揺する関係性
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私は、ロクス様と話し合っていた。
婚約者がいたため、ロクス様は私への思いを捨てていた。
だが、私が公爵家の人間になったため、色々と事情が動き出したのである。
「あなたがヴァンデイン家の人間と聞いて、最初は混乱しました。自身が好きになったのは、いとこであるという事実は、結構心に来るものがありました」
「そうなのですね……」
「ええ、別に法的にも問題はないのですが、やはり色々と悩みましたね……」
ロクス様は、私がいとこだったという事実にかなり動揺したようだ。
それも当然だろう。近しい人との恋愛は、色々と難しいものである。そのような問題を、ロクス様は色々と思ったのだろう。
「ただ、気持ちの整理はすぐにつきました。あなたが身内であろうとも、結局僕と婚約者になったりすることはないと思ったからです。父上は、とりあえずドルバル様とは婚約破棄してもらうと結論を出しましたが、それでも他の人と婚約するだけ。そのように思っていました」
「なるほど……」
しかし、気持ちの整理はすぐについたようである。
確かに、私が身内と判明して、婚約破棄するからといって、ロクス様が婚約者になれる訳ではない。どこか他の貴族と婚約させられるだけである。
そういう意味で、ロクス様は立場が変わらないのだ。だから、今まで変わらないと思ったのだろう。
「ただ、あなたが婚約破棄していて、ドルバル様がそれを認めなかったことで、また状況は変わりました」
「ええ、そうですよね……」
だが、ここでまた状況を変える出来事があった。
ドルバル様が、先に婚約破棄しており、それを取り消すように言い出したのである。
そのことは、既に色々な人に知れ渡っていたが、ドルバル様は頑なに認めなかった。どうしても公爵家と結びつきたかったようなのである。
「公爵家の力を使い、ドルバル様を叩き潰すのは容易でした。ですが、ドルバル様だけでなく、セレンティナ様はたくさんの貴族からそのような話をされることは明白でした。そのような状況は、僕も父上も回避するべきだと感じたのです」
「ええ……」
「そこで、僕はセレンティナ様の婚約者になると決めました。そうすれば、あなたを守れると思ったからです。ただ、そこに下心があったかもしれません。なぜなら、僕はあなたのことが好きだったのですから、そういうものがなかったと言い切ることはできないのです」
ロクス様は、私を守るために婚約者になることを選んだ。
下心はあったのかもしれないが、それは問題ないだろう。ロクス様なら、きっと私に好意を抱いていなくてもそうしたはずである。
今までの付き合いで、私はそれを理解していた。ロクス様は、それ程に優しく誠実な人なのである。
婚約者がいたため、ロクス様は私への思いを捨てていた。
だが、私が公爵家の人間になったため、色々と事情が動き出したのである。
「あなたがヴァンデイン家の人間と聞いて、最初は混乱しました。自身が好きになったのは、いとこであるという事実は、結構心に来るものがありました」
「そうなのですね……」
「ええ、別に法的にも問題はないのですが、やはり色々と悩みましたね……」
ロクス様は、私がいとこだったという事実にかなり動揺したようだ。
それも当然だろう。近しい人との恋愛は、色々と難しいものである。そのような問題を、ロクス様は色々と思ったのだろう。
「ただ、気持ちの整理はすぐにつきました。あなたが身内であろうとも、結局僕と婚約者になったりすることはないと思ったからです。父上は、とりあえずドルバル様とは婚約破棄してもらうと結論を出しましたが、それでも他の人と婚約するだけ。そのように思っていました」
「なるほど……」
しかし、気持ちの整理はすぐについたようである。
確かに、私が身内と判明して、婚約破棄するからといって、ロクス様が婚約者になれる訳ではない。どこか他の貴族と婚約させられるだけである。
そういう意味で、ロクス様は立場が変わらないのだ。だから、今まで変わらないと思ったのだろう。
「ただ、あなたが婚約破棄していて、ドルバル様がそれを認めなかったことで、また状況は変わりました」
「ええ、そうですよね……」
だが、ここでまた状況を変える出来事があった。
ドルバル様が、先に婚約破棄しており、それを取り消すように言い出したのである。
そのことは、既に色々な人に知れ渡っていたが、ドルバル様は頑なに認めなかった。どうしても公爵家と結びつきたかったようなのである。
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「ええ……」
「そこで、僕はセレンティナ様の婚約者になると決めました。そうすれば、あなたを守れると思ったからです。ただ、そこに下心があったかもしれません。なぜなら、僕はあなたのことが好きだったのですから、そういうものがなかったと言い切ることはできないのです」
ロクス様は、私を守るために婚約者になることを選んだ。
下心はあったのかもしれないが、それは問題ないだろう。ロクス様なら、きっと私に好意を抱いていなくてもそうしたはずである。
今までの付き合いで、私はそれを理解していた。ロクス様は、それ程に優しく誠実な人なのである。
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