平民だからと婚約破棄された聖女は、実は公爵家の人間でした。復縁を迫られましたが、お断りします。

木山楽斗

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第24話 会えない日々

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 私が公爵家を訪問してから、しばらく経った。
 いつも通り、私は聖女の仕事をしている。
 公爵家の人間とわかってから、変わったことはそんなにない。貴族などを接していれば、色々と変わるのかもしれないが、王城の人々とは仕事仲間であるため、そこまで変わることがないのだ。

「セレンティナ様、お疲れ様です」
「お疲れ様、ラカニア」

 そんな風に変わらない生活を送っている私に、いつもと変わらずラカニアが話しかけてきた。
 仕事の合間に、ラカニアが話題を振ってくるのは、いつものことなのだ。

「セレンティナ様は、最近公爵家とはどうなのですか?」
「どうとは?」
「いえ、前に一度行ってから、しばらく何もないので、仲良くできているのかと思いまして……」

 ラカニアの質問は、私とヴァンデイン家との関係を聞くものだった。
 その疑問を抱くのは、当然のことである。なぜなら、私はあの訪問以来、ほとんどヴァンデイン家のことを話していないからだ。
 あれだけ衝撃の事実が判明した後、何も言わなくなるというのはおかしなことである。優しいラカニアなら、そのことを心配してくれるのは予想できていたことだ。

「実は、あれから一度も会ってはいなくてね……」
「え?そうなのですか?」
「色々と忙しくてね……」

 私の言葉に、ラカニアは少し驚いた。
 今の所、私はヴァンデイン家を一度訪問しただけだ。忙しいこともあって、中々あちらに行くことができないのである。

「でも、ロクス様と手紙のやり取りはしているから、近況は一応報告し合っているよ」
「そうなのですね。それなら、とりあえずはいい関係ということですね?」
「まあ、それでいいと思う」

 ただ、私はロクス様と手紙のやり取りをしていた。
 その手紙により、お互いに近況は報告しているのだ。
 そのため、関係が悪くなった訳ではない。むしろ、良くなっているといえるだろう。

「でも、流石にそろそろ顔を出しておいた方がいいとは思っているかな……」
「まあ、ずっと会わないというのは、中々まずいことですよね」
「だから、今はお互いに予定を確認している所だよ。それが合えば、また訪問することになると思う」

 だが、手紙のやり取りだけでは、色々と限界がある。流石にそろそろ一度くらいは、ヴァンデイン家を訪問した方がいいだろう。
 そのためには、時間を作らなければならない。しかも、あちらの予定にも合わせなければならないので、色々と大変だ。

「早く予定が合うといいですね」
「うん」

 ラカニアの言葉に、私はゆっくりと頷いた。
 本当に、お互いの予定が合う日が早くできればいいのだが。
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