上 下
19 / 84

第19話 過去の話

しおりを挟む
 私は、ロクス様とともに、とある部屋に来ていた。
 今回は、誰かと会う訳ではない。私の父やその兄弟達に、何があったのかを教えてもらうのだ。

「まず、我々の父上に起こっていたある出来事について、お教えします」
「ある出来事?」
「ええ、我々の前の代、ヴァンデイン家では後継者争いをしていたのです」
「後継者争い……」

 どうやら、私達の父は、後継者争いをしていたようだ。
 公爵家といった大きな家には、そういう争いが起こることは珍しいことではない。平和に見えるヴァンデイン家も、かつてはそのような争いをしていたのだろう。
 その争いの話をする時点で、私の父が何故亡くなったのかもわかった。恐らく、父は後継者争いの中で、亡くなったのだ。

「それで、私の父は亡くなったのですか?」
「……ええ、そういうことです。そして、その原因を作ったのが……アウターノの父上であるレグド様なのです」
「レグド様が……」

 私の予想通り、父は後継者争いによって亡くなったらしい。
 そして、その原因を作ったのが、先程会ったアウターノの様の父であるレグド様のようだ。

「僕も、詳しい事情までは知らないのですが、レグド様がラグド様を亡き者にしたということは事実のようなのです。それにより、僕の父上はひどく激昂して、レグド様に裁きを与えたらしいのです」
「裁き……」

 そんなレグド様に対して、ログド様は裁きを与えたらしい。
 それが、どのような裁きだったのかは、聞くまでもないだろう。

「そのことがあったため、アウターノは僕の父上やその子供達を恨んでいるのです。自分の父上を奪った一族として、ずっと憎しみを向けてくるのです」
「そうなのですね……」

 先程のアウターノ様の態度は、そのようなことが原因だったようだ。
 私に対して恨みがないと言っていたのは、自分の父が私の父を奪ったからなのだろう。

「なんだか、理解できてきました……私の母が、どうしてヴァンデイン家を頼らなかったのか」
「……そうですね」

 今の話を聞いて、私は理解できてきた。
 母は、そういうことに私が巻き込まれることを危惧して、ヴァンデイン家を頼らなかったのだ。
 他に理由があったのかもしれないが、一番はそれだろう。父が亡くなった原因を作った家を、頼ろうとは思わないはずである。

「もしかしたら、僕達は余計なことをしたのかもしれませんね」
「余計なこと?」
「あなたの母上が、我々を頼ろうとしなかった時点で、あなたのことは放っておいた方がよかったのかもしれません。少なくとも、あなたの母上は、それを望んでいたのですから……」

 ロクス様の言葉に、私は何も言えなかった。
 その言葉に返すべき言葉が何も思いつかなかったのだ。
しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~

白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。 王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。 彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。 #表紙絵は、もふ様に描いていただきました。 #エブリスタにて連載しました。

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました

結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
<2人の仲を応援するので、どうか私を嫌わないでください> 私には子供のころから決められた許嫁がいた。ある日、久しぶりに再会した親友を紹介した私は次第に2人がお互いを好きになっていく様子に気が付いた。どちらも私にとっては大切な存在。2人から邪魔者と思われ、嫌われたくはないので、私は全力で許嫁と親友の仲を取り持つ事を心に決めた。すると彼の評判が悪くなっていき、それまで冷たかった彼の態度が軟化してきて話は意外な展開に・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

似非聖女呼ばわりされたのでスローライフ満喫しながら引き篭もります

秋月乃衣
恋愛
侯爵令嬢オリヴィアは聖女として今まで16年間生きてきたのにも関わらず、婚約者である王子から「お前は聖女ではない」と言われた挙句、婚約破棄をされてしまった。 そして、その瞬間オリヴィアの背中には何故か純白の羽が出現し、オリヴィアは泣き叫んだ。 「私、仰向け派なのに!これからどうやって寝たらいいの!?」 聖女じゃないみたいだし、婚約破棄されたし、何より羽が邪魔なので王都の外れでスローライフ始めます。

国外追放を受けた聖女ですが、戻ってくるよう懇願されるけどイケメンの国王陛下に愛されてるので拒否します!!

真時ぴえこ
恋愛
「ルーミア、そなたとの婚約は破棄する!出ていけっ今すぐにだ!」  皇太子アレン殿下はそうおっしゃられました。  ならよいでしょう、聖女を捨てるというなら「どうなっても」知りませんからね??  国外追放を受けた聖女の私、ルーミアはイケメンでちょっとツンデレな国王陛下に愛されちゃう・・・♡

公爵令嬢の辿る道

ヤマナ
恋愛
公爵令嬢エリーナ・ラナ・ユースクリフは、迎えた5度目の生に絶望した。 家族にも、付き合いのあるお友達にも、慕っていた使用人にも、思い人にも、誰からも愛されなかったエリーナは罪を犯して投獄されて凍死した。 それから生を繰り返して、その度に自業自得で凄惨な末路を迎え続けたエリーナは、やがて自分を取り巻いていたもの全てからの愛を諦めた。 これは、愛されず、しかし愛を求めて果てた少女の、その先の話。 ※暇な時にちょこちょこ書いている程度なので、内容はともかく出来についてはご了承ください。 追記  六十五話以降、タイトルの頭に『※』が付いているお話は、流血表現やグロ表現がございますので、閲覧の際はお気を付けください。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

石塔に幽閉って、私、石の聖女ですけど

ハツカ
恋愛
私はある日、王子から役立たずだからと、石塔に閉じ込められた。 でも私は石の聖女。 石でできた塔に閉じ込められても何も困らない。 幼馴染の従者も一緒だし。

処理中です...