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 私は、ケルド様から自身の顔に刻まれている痣が、聖痕と呼ばれるものであるという事実を知らされた。
 忌々しかったこの痣が、聖なる者の証だったという話は、未だに完全に受け入れらていない。だが、ケルド様が見つけた資料の情報は、私のこの痣と一致している。なので、この痣はまず聖痕で間違いないのだろう。

「あら……」
「うっ……」
「あっ……」

 そんなことを考えながら廊下を歩いている私は、とある人達と顔を合わせた。
 イルシャナお姉様とウェリリアお姉様、私を虐めてくるお姉様達だ。この二人と会うと、ろくなことがない。大抵の場合、何かしらの罵倒をされるのだ。

「……」
「……」

 しかし、二人は私に何も言ってこない。何故か、私の顔を見つめて、微妙な顔をしているのだ。
 その意図が、よくわからなかった。私をどのように罵倒するべきか、考えてくるということなのだろうか。

「……あ、あなたのことを今まで少し勘違いしていたようね」
「え、ええ、少々、私達は変なことを言ってしまったかもしれないわ」
「えっ……?」

 二人の言葉に、私は困惑していた。
 彼女達は、一体何を言っているのだろうか。急にこんなことを言ってくる意味が、まったくわからない。
 どういう風の吹き回しなのだろうか。彼女達が、このように態度を変えるなど、絶対におかしいことである。

「……まさか」

 そこで、私はあることを思いついた。
 もしかして、彼女達は私とケルド様の話を聞いていたのではないだろうか。あの話を盗み聞きしていたとしたら、この態度も頷ける。私が選ばれし者だったから、態度を改めなければならない。そう思ったのではないだろうか。

「聞いていたのですか? 私とケルド様の話を?」
「……」
「……」
「だから、態度を改めなければならない。そう思ったということなのでしょうか?」
「……」
「……」

 私の質問に、二人は答えなかった。答えなかったということは、これが図星だったと判断してもいいということだろう。
 なんという人達なのだろうか。盗み聞きしていたことも、そもそもどうかとは思うが、その話を聞いて、私に対する態度を一変させるなど信じられない。

 まさか、それで許されると思っているのだろうか。今まで、あれだけひどいことをしてきたのに。
 そもそも、二人は曖昧な態度で、謝罪の言葉一つ口にしていない。それも、私が嫌な気分になっている理由の一端である。

 私は、拳を握りしめていた。二人に対する怒りが、私にそうさせたのだろう。
 私は、この怒りの感情をどうすればいいのだろうか。
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