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29.起こった問題

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「あ、姉さん、お帰りなさい」
「え、ええ、ただいま、ソルダス」

 オンラルト侯爵家に帰って来た私は、屋敷の雰囲気が少しおかしいことに気付いた。
 明らかに正常な状態ではない。何かあったという感じがする。
 迎え入れてくれたソルダスも、冷静であるとは言い難い。少しそわそわしているような気がする。

「何かあったのかしら?」
「ああ、あった。少々厄介なことになっているんだ」
「厄介なこと?」
「ランドラさんのことだよ」
「ランドラ様……」

 ソルダスの言葉に、私はある程度納得することができた。
 最近のランドラ様からは、あまりいい噂を聞いていない。いつ何かが起こっても、おかしくはなかった。その何かが起こってしまったのだろう。

「……話を聞かせてもらえるかしら?」
「ああ、とりあえず中庭でいいかな?」
「ええ、行きましょう」

 私はソルダスとともに中庭に向かった。私が帰って来たというのにお母様の姿もお父様の姿も見えないことから、もしかしたら二人は話し合っているのかもしれない。

「さて、姉さん。早速本題から入らせてもらうけれど、ランドラさんから手紙が届いたんだ」
「手紙、その内容が問題だったのね」
「ああ、それはオンラルト侯爵家に対する懇願だったんだ」
「懇願?」

 中庭に着いてすぐに、私達は話を始めた。
 ランドラ様が、オンラルト侯爵家に懇願をする。それは、少し意外なことだった。流石の彼も、婚約破棄した私がいるオンラルト侯爵家に助けを求めるとは思っていなかったのだが。

「端的に言うと、助けて欲しいという願いだったよ」
「助けて欲しい。それは単純ではあるけれど、必死な言葉ね」
「ああ、どうやらかなり窮地に立たされているらしい。もちろん、噂には聞いていたが」
「そうね……」

 ランドラ様がどうなっているか、それは何度か聞いたことがある。
 彼は言っていた通り、平民の農家であるルーフィアと結婚した。アルガール侯爵が亡くなって彼がその地位を継いですぐに結婚したそうだ。
 だが、今までの振る舞いによって、彼は親族や他の貴族達から孤立することになった。未熟者である彼が、たった一人で侯爵としての務めを果たさなければならなくなってしまったのである。

「ついに破綻してしまったのね」
「ああ、そうだろうね。そうでなければ、オンラルト侯爵家にそのような手紙は送ってこないだろう」
「ええ……」

 ランドラ様は、かなり追い詰められているだろう。
 そんな彼に手を差し伸べるかどうか、それはきっとお父様にとってはかなり難しい問題であるはずだ。
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