上 下
27 / 46

27.半分の繋がり

しおりを挟む
「ご迷惑をかけてしまい、申し訳ありません」
「いえ、お気になさらないでください。夫人に無理をさせる方が、私としても辛かったですから……」
「お気遣いありがとうございます。お噂通り、あなたは素晴らしい方であるようですね」

 ホルーグ様は、私にゆっくりと頭を下げてきた。
 貴族として凛としているが、彼はまだまだ少年といえる年齢だ。幼さの残るその顔を見ていると、少し前のソルダスを思い出す。

「さて、改めて自己紹介させていただきます。僕は、ホルーグ・ラーゼムです。知っての通り、バルギード兄上の弟です。とはいえ、血は半分しか繋がっていませんが」

 ホルーグ様は、バルギード様の方を見ながらそう言った。
 その顔は少し不安そうだ。腹違いの弟であること、それは二人にとって、それなりに難しい問題であるのだろう。

「セリティア嬢、前提として言っておきますが、私はホルーグのことを弟だとしか思っていません。それは、母上に関しても同様です。血が半分しか繋がっていなくとも、血が繋がっていなくとも、私は二人のことを家族であるとしか思っていません。それ以上でも、それ以下でもないのです」
「そうですか……」

 バルギード様の言葉にゆっくりと頷きながら、私はホルーグ様の様子を窺ってみる。
 彼は、安心したような表情をしていた。きっと、バルギード様の言葉が嬉しかったのだろう。なんだか、少し微笑ましい。
 なんというか、本人が言っていたよりもホルーグ様との仲は良好に見える。本当に二人の間にわだかまりなどあるのだろうか。

「まあ僕も、概ね兄上と同じ考えです。その辺りに関しては、既に決着がついた話なのです。昔は、色々とありましたが……」
「そうですか……」

 ホルーグ様の言葉に、私は少しだけ考えを改めることになった。
 今彼はその辺りに関しては、と言った。ということは、他に決着がついていないことがあるということなのだろう。もっとも、言葉の綾という可能性もあるが。
 とはいえ、もしも何かあるとすれば、バルギード様が言っていた通りなのだろう。最近の兄の振る舞いに、思う所があったということだ。

「しかし、なるほど、そういうことですか……ふふ、僕もなんとなく理解できました。兄上の行動がどういう意味を持っていたのかを」
「む?」
「兄上本人も仰っていましたが、彼女以上の婚約者はいないでしょう。兄上にとって最良の相手が見つかったのですね」
「……まあ、そういうことだ」

 私が色々と思った直後、ホルーグ様はバルギード様にそう言った。
 意外なことに、二人の間にあったわだかまりは今ある程度解けたのかもしれない。私本人とあったことによって。
 もしもそうであったなら、嬉しく思う。私が自惚れ過ぎているというだけなのかもしれないが。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

再婚約ですか? 王子殿下がいるのでお断りしますね

マルローネ
恋愛
伯爵令嬢のレミュラは、公爵閣下と婚約関係にあったが、より位の高い令嬢と婚約しレミュラとは婚約破棄をした。 その事実を知ったヤンデレ気味の姉は、悲しみの渦中にあるレミュラに、クラレンス王子殿下を紹介する。それを可能にしているのは、ヤンデレ姉が大公殿下の婚約者だったからだ。 レミュラとクラレンス……二人の仲は徐々にだが、確実に前に進んでいくのだった。 ところでレミュラに対して婚約破棄をした公爵閣下は、新たな侯爵令嬢のわがままに耐えられなくなり、再びレミュラのところに戻って来るが……。

念願の婚約破棄を受けました!

新野乃花(大舟)
恋愛
オレフィス第二王子はある日、一方的に婚約者エレーナに対して婚約破棄を告げた。その瞬間エレーナは飛び上がって喜んだが、オレフィスはそれを見て彼女は壊れてしまったのだと勘違いをし、なぜ彼女が喜んだのかを考えもしなかった…。 ※カクヨムにも投稿しています!

あの素晴らしい愛をもう一度

仏白目
恋愛
伯爵夫人セレス・クリスティアーノは 33歳、愛する夫ジャレッド・クリスティアーノ伯爵との間には、可愛い子供が2人いる。 家同士のつながりで婚約した2人だが 婚約期間にはお互いに惹かれあい 好きだ!  私も大好き〜! 僕はもっと大好きだ! 私だって〜! と人前でいちゃつく姿は有名であった そんな情熱をもち結婚した2人は子宝にもめぐまれ爵位も継承し順風満帆であった はず・・・ このお話は、作者の自分勝手な世界観でのフィクションです。 あしからず!

婚約破棄ですか? 優しい幼馴染がいるので構いませんよ

マルローネ
恋愛
伯爵令嬢のアリスは婚約者のグリンデル侯爵から婚約破棄を言い渡された。 悲しみに暮れるはずの彼女だったが問題はないようだ。 アリスには優しい幼馴染である、大公殿下がいたのだから。

【完結】出逢ったのはいつですか? えっ? それは幼馴染とは言いません。

との
恋愛
「リリアーナさーん、読み終わりましたぁ?」 今日も元気良く教室に駆け込んでくるお花畑ヒロインに溜息を吐く仲良し四人組。 ただの婚約破棄騒動かと思いきや・・。 「リリアーナ、だからごめんってば」 「マカロンとアップルパイで手を打ちますわ」 ーーーーーー ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。 完結迄予約投稿済みです。 R15は念の為・・

私達、政略結婚ですから。

恋愛
オルヒデーエは、来月ザイデルバスト王子との結婚を控えていた。しかし2年前に王宮に来て以来、王子とはろくに会わず話もしない。一方で1年前現れたレディ・トゥルペは、王子に指輪を贈られ、二人きりで会ってもいる。王子に自分達の関係性を問いただすも「政略結婚だが」と知らん顔、レディ・トゥルペも、オルヒデーエに向かって「政略結婚ですから」としたり顔。半年前からは、レディ・トゥルペに数々の嫌がらせをしたという噂まで流れていた。 それが罪状として読み上げられる中、オルヒデーエは王子との数少ない思い出を振り返り、その処断を待つ。

王宮で虐げられた令嬢は追放され、真実の愛を知る~あなた方はもう家族ではありません~

葵 すみれ
恋愛
「お姉さま、ずるい! どうしてお姉さまばっかり!」 男爵家の庶子であるセシールは、王女付きの侍女として選ばれる。 ところが、実際には王女や他の侍女たちに虐げられ、庭園の片隅で泣く毎日。 それでも家族のためだと耐えていたのに、何故か太り出して醜くなり、豚と罵られるように。 とうとう侍女の座を妹に奪われ、嘲笑われながら城を追い出されてしまう。 あんなに尽くした家族からも捨てられ、セシールは街をさまよう。 力尽きそうになったセシールの前に現れたのは、かつて一度だけ会った生意気な少年の成長した姿だった。 そして健康と美しさを取り戻したセシールのもとに、かつての家族の変わり果てた姿が…… ※小説家になろうにも掲載しています

不貞の濡れ衣を着せられて婚約破棄されましたがお陰で素敵な恋人ができました

ゆうゆう
恋愛
「お前みたいなふしだらな女とは婚約破棄だ」と婚約者に言われて一方的に婚約破棄をされて全てを奪われ追い出されました。 でもそのお陰でとても素敵な人に出会う事ができました。

処理中です...