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22.母親としての後悔

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「お母様とお父様は……政略結婚だったのですよね?」
「ええ、恋愛結婚という訳ではなかったわね。でもまあ、彼には出会った時から好感を抱いていたから、それで苦しむことは特になかったわね」

 私の質問に、お母様は楽しそうに笑った。
 政略結婚だったのかもしれないが、お父様もお母様もお互いに愛を抱いているような気がする。
 二人の出会いは、良き巡り合わせ出会ったのだろう。私とバルギード様も、二人のようになれるのだろうか。

「お父様は、昔からあんな感じだったのですか?」
「ええ、気弱な人だったわ。でも、気遣いはしてくれたし、紳士としては及第点といった所かしら」
「お母様も、今と変わらない感じだったのですか?」
「まあ、少しは落ち着いたと自分では思っているから、今よりもやんちゃだったといえるかもしれないわね」
「相性が良かったのですね」
「そうね……そういえるのかしら」

 お父様は、基本的には気弱な性格である。一方、お母様は結構気が強い。そんな二人の性格は上手く嵌り合ったといえるだろう。

「それまあ、私は侯爵夫人になることになったのだけど……その時は、あの人を支えようといった気持ちだったかしら。支えないと折れてしまうという心配があったから」
「それは、お母様らしい考え方ですね……」
「でも、実際の所そんな必要はなかったわね。気弱な性格だけれど、あの人はあれでも結構やる人だったの」
「はい、それはなんとなくわかります」

 お母様は、苦笑いを浮かべていた。でも、なんだか嬉しそうである。
 それだけその時のお父様のことをかっこいいと感じたということだろうか。そう思って、私は少し笑ってしまう。

「それからはまあ、あなた達が生まれたから、母親として頑張ろうとなったわね。ただ、その役割もそこまで果たせなかったと自負しているわ。私は結局、教師になった訳だし」
「いいえ、そんなことはありません。お母様は、私達に良くしてくれました」
「でもね、教師になってから私はあなた達の成長を傍で見られなかった訳だから、それは心残りなのよね……休みに帰って来たら、以前よりも成長している姿を見たら、嬉しさと悲しさが込み上げてきて、なんともいえない気持ちになってしまったわ」

 お母様には、重大な役目があった。
 教師としてのお母様の教えが、この国を良くしたと私は思っている。
 しかし、母親としてそこに後悔はないとは言えないようだ。別の道もあったのではないかと、そう思ってしまうのだろう。
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