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7.試すような質問

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 客室に通された私の正面には、バルギード様が座っている。
 彼の体は、とても大きい。鍛え上げているのが目に見えてわかる。
 威圧感がある見た目だ。目つきも鋭いし、睨まれた怖そうである。

「さて、まず前提として聞きたいのですが、あなたは私のことをどう聞いていますか?」

 バルギード様は、私にそんな質問を投げかけてきた。
 これは正直に答えて質問なのだろうか。それを考えて、私は少し逡巡する。

「……正直に申し上げますが、気難しい方だと伺っています」
「ほう?」

 私の言葉に、バルギード様は鋭い視線を向けてきた。
 結論として正直に話すことに決めたが、それは間違っていただろうか。だが、隠しても仕方ないことなので、この際全て打ち明ける方がいいはずだ。

「より正確に言えば、何人もの令嬢との婚約を破談になさったと聞いています」
「なるほど……」

 バルギード様は頷きながら笑みを浮かべた。
 この話で、どうして笑うのだろうか。やはり彼は本当に性格に難がある人物ということなのだろうか。

「試すような質問をして申し訳ありません。ですが、これは私にとって聞いておかなければならないことだったのです」
「あら? そうなんですか?」
「ええ、あなたが正直に言ってくれて本当によかったと思っています。今まであった女性は皆、私のことを褒めるだけでしたからね」
「ああ……」

 意図がわかったため、私は一先ず安心することができた。
 恐らく、彼には何かこだわりがあるのだろう。そのこだわりが、今までの縁談を破談にした。だから、気難しい人物と噂されるようになった。そういうことなのだろう。

「まあ、確かにそう言うべきかは考えましたね。相手の機嫌を損ねるのはできれば避けたいですから」
「ふふ、そうでしたか……ですが、それならどうして正直に?」
「隠しても仕方ないことだと思ったのです。私はあなたをそういう人だと思っていますから、いずれボロが出るはずです」
「なるほど、そうでしたか……」

 バルギード様は、なんだかとても楽しそうだ。
 最初は怖い人だと思っていたが、案外明るい人物だったらしい。いや、今までは敢えて威圧するような態度をしていたのだろうか。

「今までの人は、正直に言わずにボロを出さなかったのですか?」
「まあ、そういった方々は態度に出ますね。なんというか、いたたまれない雰囲気を漂わせているのです。そのような方と婚約を結んでも、あまりいいことはないでしょう?」
「それは、そうかもしれませんね……」

 彼が婚約を破談にしてきたのには、そういった背景があったらしい。
 確かにそういった女性と婚約して上手くいくかは微妙な所である。なんというか、あまりいい関係にはなれそうにない。歪な関係にしかならないような気がする。
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