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 私は、ラルーグ様とともに円卓を囲んでいた。
 周りには、初老の男女が座っている。彼らは、この国の貴族であるらしい。
 その視線は、ほとんどが私に向いている。レパイア王国の裏切り者である私に、興味を抱いているようだ。

「さて、これより我々エルグレンド王国は、レパイア王国へと進軍します」

 ラルーグ様はゆっくりと立ち上がり、そのように呟いた。
 結界が崩壊してもしなくても、エルグレンド王国はレパイア王国へと進軍をするつもりのようだ。二つの国の争いは、本当に避けられないものだったらしい。

「こちらのイルアナさんから、エルグレンド王国の情報を得ています。本日、あの王国を守っている結界が消失するようです。本来なら、新たな結界が張られるようですが、今の聖女はそれを失敗する可能性が高いそうです」
「……それは、どこまで信頼できることなのでしょうか?」
「レパイア王国の聖女補佐ということですが、彼女が本当に国を売ったとは限らないでしょう。ラルーグ殿下は、彼女を信頼するに値すると思っているのですか?」

 ラルーグ様の言葉に、貴族の何名かが反発してきた。私のことを本当に信じていいのか、疑問視している人がいるらしい。
 それは、当然のことだろう。私を信頼するというのは、この国の人々にとって難しいことであるはずだ。

「エルッガー侯爵、ウォーへイン伯爵、あなた達はまだそのようなことを言っているのですか?」
「何?」
「既に、戦いを始めることは決まっていますわ。今更、彼女を信頼しないという議論をする必要などないでしょう」
「ぬぐっ……」

 そんな貴族達に、一人の女性が反論した。
 よく考えてみれば、戦いを始める決断が下されている時点で、私のことを議論する必要はないのだ。
 どの道、戦いは始まる。未だに私のことを疑問視しているのは、一歩遅れているということなのだろう。

「彼女の言う通りです。その議論は、既に終わっていること。今更、議論するつもりはありません。我々は、彼女の情報を元に作戦を立てました。もちろん、それが虚偽であってもどうにかなるように考えてあります」
「しかし……」
「仮に、彼女の言葉が偽りだったとしたら、彼女は処分します。作戦は、第二のものにする。ただ、それだけです」

 ラルーグ様は、とても冷たい視線で言葉を放っていた。
 その表情は、弟のことを心配していた時とはまったく違う。
 この冷静で、見る人が見れば非情ともいえる判断力が、彼のすごい所なのだろう。ラルーグ様は、王子として、とても頼りになる人である。
 こうして、私はしばらく作戦会議に参加するのだった。
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