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48.良き未来へと
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「ルナーラ様、それは一体どういうことですか?」
「言葉通りの意味ですよ、お兄様」
ラベルグ様の質問に、ルナーラ様は涼しい顔で答えていた。
彼女の提案は、とんでもないものだ。それなのに本人は呆気からんとしている。それに私もラベルグ様も、正直困惑中だ。
「こ、婚約なんて、どうしてそのようなことになるのですか?」
「フェルーナ、あなたは私がこの国で家族以外で信用できる唯一の人間です。そんなあなたを私は身内に引き入れておきたい」
「でも、身分が違います……」
「聖女というものは、特権階級ですから問題はありません。あなたの優秀な血を貴族の発展のために入れるということに文句は出させませんよ。そもそも、貴族というものはかつてそういった面で成り上っていた訳ですからね」
ルナーラ様は、私の顔を見て真剣な顔でそう伝えてきた。
どうやらこれには、結構深い訳があるようだ。いやそれは当たり前だろうか。理由もないのに、私とラベルグ様を婚約させる訳がないのだから。
「二人としても別に問題はないでしょう? この際だから言わせてもらいますが、両想いである訳ですし」
「え?」
「な、何を……」
「村でも仲良く二人で出掛けていたみたいですね。名目もできたのですから、さっさと結ばれてください」
政治的な理由だけかと思っていたが、それ以外の理由もあったようである。
それについては、なんとなく察していたことである。まさか、それをルナーラ様に言われるとは思っていなかったが。
「……わかりました。覚悟を決めましょう」
「ラベルグ様?」
「フェルーナ、俺は君のことを愛している。ともに過ごす内にいつしか惹かれるようになっていた。それは紛れもない事実だ」
「それは……」
「できれば俺の妻になって欲しいと思っている。政治的な意味だけではない。それが今の俺の素直な気持ちだ」
ルナーラ様の言葉を受けて、ラベルグ様は自分の思いを口にした。
それに私は怯んだ。それがあまりにも早い決断だったからである。
ただよく考えてみれば、今の彼はドルメア公爵家を背負っている。その素早い判断は、家を背負う覚悟の表れなのかもしれない。
それなら私も、その覚悟に応えるべきなのだろう。迷う必要などはない。元より気持ちは決まっているのだから。
「ラベルグ様、私も気持ちは同じです。ラベルグ様のことをいつから好きになりました。私をあなたの妻にしてください」
「ああ、これからもよろしく頼む、フェルーナ」
「ええ……!」
私とラベルグ様は、そう言って笑い合った。
薄々察していたことではあるが、こうやって思いが通じ合うのはやはり嬉しいものだ。
これから私達は、婚約者引いては夫婦として生きていくことになる。それは決して楽な道ではないだろう。だが私達なら乗り越えられるはずだ。
「……せっかくですから、口づけの一つでもしたらどうですか?」
「ルナーラ様、何を言っているのですか……」
「あはは、それは流石に……」
ルナーラ様の言葉に私は苦笑いして、ラベルグ様は呆れたような顔をした。
何はともあれ、彼女という心強い味方もいる。それは嬉しいことだ。
「そういことは二人きりの時という訳ですか」
「ルナーラ様、女王になられたのですから、もう少し気品というものを身に着けていただきたい」
「お兄様は、細かいことを気にし過ぎです。フェルーナ、あなたもそう思いませんか?」
「どうでしょうかね?」
こうしてディオート王国は、一つの変革を迎えることになった。
これからこの国がどう変わっていくかはわからない。未来は不明慮なことでいっぱいだ。
だが、私達の手で必ず良いものにしてみせる。私はそう決意するのだった。
END
「言葉通りの意味ですよ、お兄様」
ラベルグ様の質問に、ルナーラ様は涼しい顔で答えていた。
彼女の提案は、とんでもないものだ。それなのに本人は呆気からんとしている。それに私もラベルグ様も、正直困惑中だ。
「こ、婚約なんて、どうしてそのようなことになるのですか?」
「フェルーナ、あなたは私がこの国で家族以外で信用できる唯一の人間です。そんなあなたを私は身内に引き入れておきたい」
「でも、身分が違います……」
「聖女というものは、特権階級ですから問題はありません。あなたの優秀な血を貴族の発展のために入れるということに文句は出させませんよ。そもそも、貴族というものはかつてそういった面で成り上っていた訳ですからね」
ルナーラ様は、私の顔を見て真剣な顔でそう伝えてきた。
どうやらこれには、結構深い訳があるようだ。いやそれは当たり前だろうか。理由もないのに、私とラベルグ様を婚約させる訳がないのだから。
「二人としても別に問題はないでしょう? この際だから言わせてもらいますが、両想いである訳ですし」
「え?」
「な、何を……」
「村でも仲良く二人で出掛けていたみたいですね。名目もできたのですから、さっさと結ばれてください」
政治的な理由だけかと思っていたが、それ以外の理由もあったようである。
それについては、なんとなく察していたことである。まさか、それをルナーラ様に言われるとは思っていなかったが。
「……わかりました。覚悟を決めましょう」
「ラベルグ様?」
「フェルーナ、俺は君のことを愛している。ともに過ごす内にいつしか惹かれるようになっていた。それは紛れもない事実だ」
「それは……」
「できれば俺の妻になって欲しいと思っている。政治的な意味だけではない。それが今の俺の素直な気持ちだ」
ルナーラ様の言葉を受けて、ラベルグ様は自分の思いを口にした。
それに私は怯んだ。それがあまりにも早い決断だったからである。
ただよく考えてみれば、今の彼はドルメア公爵家を背負っている。その素早い判断は、家を背負う覚悟の表れなのかもしれない。
それなら私も、その覚悟に応えるべきなのだろう。迷う必要などはない。元より気持ちは決まっているのだから。
「ラベルグ様、私も気持ちは同じです。ラベルグ様のことをいつから好きになりました。私をあなたの妻にしてください」
「ああ、これからもよろしく頼む、フェルーナ」
「ええ……!」
私とラベルグ様は、そう言って笑い合った。
薄々察していたことではあるが、こうやって思いが通じ合うのはやはり嬉しいものだ。
これから私達は、婚約者引いては夫婦として生きていくことになる。それは決して楽な道ではないだろう。だが私達なら乗り越えられるはずだ。
「……せっかくですから、口づけの一つでもしたらどうですか?」
「ルナーラ様、何を言っているのですか……」
「あはは、それは流石に……」
ルナーラ様の言葉に私は苦笑いして、ラベルグ様は呆れたような顔をした。
何はともあれ、彼女という心強い味方もいる。それは嬉しいことだ。
「そういことは二人きりの時という訳ですか」
「ルナーラ様、女王になられたのですから、もう少し気品というものを身に着けていただきたい」
「お兄様は、細かいことを気にし過ぎです。フェルーナ、あなたもそう思いませんか?」
「どうでしょうかね?」
こうしてディオート王国は、一つの変革を迎えることになった。
これからこの国がどう変わっていくかはわからない。未来は不明慮なことでいっぱいだ。
だが、私達の手で必ず良いものにしてみせる。私はそう決意するのだった。
END
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