「平民が聖女になれただけでも感謝しろ」とやりがい搾取されたのでやめることにします。

木山楽斗

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44.もう一つの変化

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「……」

 村の皆は、何も言わないロロアナ嬢達を受け入れた。
 この村の人達は、皆優しい人達ばかりである。彼女達が私を襲った魔法使いであっても、困っていたら見過ごせないのだ。
 ロロアナ嬢達は、それに困惑しているようだった。自分達がやったことがどういうことか、自覚がない訳ではないらしい。

「ロロアナ、村長さんが私達の寝床を用意してくれるようです。あ、狭いとか文句を言ったらいけませんよ。用意してくれただけでも、ありがたいのですから」
「……」
「所で、もうフェルーナ様には謝ったのかしら? ちゃんと言葉にしないと駄目よ。謝ってもいないのに助けてもらうなんて、虫が良すぎるもの」

 かつての相方を、リネアラ嬢は諭していた。
 それはまるで、子供に言い聞かせているかのようだ。
 ここで私は、少し口を挟んでおくことにした。ロロアナ嬢には、改心してもらわなければならない。そのためには、私の方からも優しさを見せておく必要がある。

「リネアラ嬢、私は気にしていませんよ。もちろん、かつては敵対していた訳ですが、困っているなら手を差し出します。それがこの村ですからね」
「まあ、なんと素晴らしいことでしょうか……」

 私の言葉に、リネアラ嬢は恍惚とした笑みを浮かべていた。
 それに私は、苦笑いを浮かべる。その対応には、未だに慣れていないからだ。
 とはいえ、私はまだ優しい人の振りを続けなければならない。この対応によって、リネアラ嬢による自浄作用がなくなる可能性だってある。気を抜いてはいけないのだ。

「ロロアナ嬢、あなたは結果的にニルーア様と敵対することになりましたね。その原因である私が言うのも何ですが、一緒に彼女と戦いましょう。私が付いていますから、安心することはできるはずです。あなたなら特にそれがわかっていることでしょう」
「……」

 私は、ロロアナ嬢にゆっくりと手を伸ばした。
 これは彼女にとって、虫が良い条件であるつもりだ。あれだけ侮蔑していた私が、守ろうとしている。そのことがロロアナ嬢の胸に響いてくれるといいのだが。

「……フェルーナ、お姉様」
「………………うん?」

 ロロアナ嬢は、私に対してゆっくりと口を開いた。
 彼女の顔は、こちらに向いている。その表情は、何かがおかしい。今までのロロアナ嬢からは考えられないような表情だ。

「ああ、こんな私にここまで慈悲の心を持ってくださるなんて……なんて、素晴らしいお方」
「あれ?」

 私の額からは、嫌な汗が湧き出してきていた。
 一体どうして、彼女はこんな反応をしているのだろうか。私が思っていたものとは違う。もしかして、私はどこかで選択を間違えてしまったのだろうか。
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